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一般財団法人 親学推進協会の公式メールマガジンに投稿した
「図書紹介」を画像付きで掲載します。

2016年07月15日

78号

しなやかにこころを.jpg
 『しなやかに心をつよくする音楽家の27の方法』(2)
 著者:伊東 乾
 発行:晶文社, 2014年

紹介者より------------------------------------------------------------
 先月からご紹介している本です。読み返すたびに気づくことや考えることが多くて、このごろ寝不足ぎみです。今号ではどこを紹介するか、いくつか迷いましたが「失敗することの価値」を気づかせてもらえたところを取り上げることにします。
 翻って、子育てではどうでしょうか。子育てに正解はありそうですか。あるいは、子育てに失敗はあるのでしょうか。学校教育と卒業後の社会とを比べながら考えてみましょう。

本書より:(小見出しは紹介者)----------------------------------------

(1)現実は正解のない世界
「勉強」というと、とたんに目の輝きが失われる傾向は、古くから学校とか受験という制度が作り出した、大いなる錯覚なのでしょう。実際に社会に出れば正解のある問題なんてめったにお目にかからない。仕事でやってくるあらゆる案件には、模範解答など存在しない。その場で解決策を考え、現場を乗り切っていく必要があります。

(2)正解主義が先例主義へ
 学生時代に失敗する経験をしてこなかった人が、特に優等生の中には多く、社会に出たときに「正解」に変わるものを探して「先例」「前例」などの慣習を重視していきます。そうして、創造性がなくなっていくのです。

(3)正解をなぞるな
 そうならないように、学生たちにはこんなことを強調しています。
「あらかじめ約束された正解をなぞること、これくらい非生産的で人生を無駄にすることはない。予定調和は厳密に避けなければ、何一つ意味のあることはできない。」

(4)失敗経験は、教育の王道
 失敗や修羅場の経験ほど人間を確実に大きく成長させるものはない。たくさん転ぶ経験をすれば、それを通じて、転ばぬ先に鮮やかなステップが踏める大人になれる。失敗を重ねて、そこでしたたかな足さばきをみにつければ、少しは気の利いた大人になれるだろう。たぶん、一般の学校では教えていないこんなことが、音楽家の観点からすればタフなミュージシャンを育てる一番の王道
になります。
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2016年06月15日

77号

しなやかにこころを.jpg

『しなやかに心をつよくする音楽家の27の方法』

著者:伊東 乾
発行:晶文社,2014年

< 紹介者より>
 東大家庭教師友の会(2015)によると、東大生の2人に一人はピアノを習っていたのだそうです。そんな話を聞くと「わが子にもピアノを習わせよう(習わせておけばよかった)」と情報に流されてしまいそうですが、その前に本書に目を向けて頂きたいのです。お受験のための学力向上の域を超えて、生き方や職業人としての心構えに話が及んでいます。

 著者は、東大・東大院卒、作曲家・指揮者で東京大学の准教授です。音楽家としては出光賞を取っていて、TV番組「題名のない音楽会」の音楽監督をしていたこともあるそうです。昨年は『聴能力!』(ちくま新書)が話題になっていましたね。

 幼いころから音楽に触れ、東大で博士号をとり、音楽家としても実績をあげている肩書きをみれば世の教育ママたちも納得でしょう。筆者には、どんな世界がみえているのでしょうか。この立場に立たないと言えないようなことをサラリ、チクリと語っていますが、内容は至極真っ当です。

<本書より>

(1)「のため」病を克服する

「どうしていい高校に入りたいの?」

「東大に合格したいから」

こういう人がいたら、私たち東大教官にとっては最も要注意の志願者なんですね。というのも、彼、彼女の「目的」は「東大に<合格>」することで、入ってしまうとその究極目的が達せられてしまって、伸びきったゴムのようになる。これが困るのです。企業に入った直後にコレにかかる人もいるようです。

<ほかのもののため>の「のため」病を克服するにはそれ自体に目的や満足があること、これがポイントではないでしょうか。

(2)「バカのふりをする」

 子供にとっての親は、少しくらい抜けていた方がいいと思うのです。というか、親としては「ここにバカな面があるよ」と小出しに見せていく方が子供は伸びる。「お母さんは何々が苦手だから、私がなんとかしなくっちゃ」と思えるようにする。上がバカにみえないとやる気を削ぐんですね。「お母さんはダメなんだから」くらいに思わせておいて、上手にやる気や主体性を伸ばしてやるのが、親としては正解なのではないかと思うのです。そこそこ抜けたフリをすることで勝手に伸びていく。そういう面が大切だと思っています。

参考:東大家庭教師友の会『頭のいい子が育つ習い事』角川書店(2015)
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2016年05月16日

76号

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『カップルが親になるとき』(2)

 著者:キャロン・コーワン、フリップ・コーワン

 訳者:山田昌弘、開内文乃

 発行:勁草書房, 2007年



<本書より>
1.社会的なサポート

 結婚したカップルが親になっていく過程で、次のような人たちからのサポートを望んでいることがわかった。

1)友人。2)自分たちの家族。3)社会的にサポートしてくれるグループ。4)健康に関する専門家。

 新米の親たちは、「自分に対して良い感情を持つ」ことを支え、「二人で暮らしつづけていかれる」ための「サポート」が必要だという。具体的に社会的なサポートをする人たちに求めていることは、「満足」、「挑戦」、「理解」、ときには「直接的なアドバイスやサポート」であった。それらを通して、特別な問題の解決に役立てたり、親としての自分の責任を心配すぎなくてもよいように援助してほしいという。

2.結婚の「質」と子どもへの影響
 結婚生活における夫婦間の葛藤は、子どもの成長を助けるものではないことがわかった。両親の葛藤は直接的に子供に影響を及ぼすからである。一例をあげると、学校の教室で子供が作業に集中しにくくなる結果がでたのだ。親の幸せやうっ憤は、子育てスタイルや子供の成長に影響している。

 妊娠からはじまる家族の門出の時期を研究することでわかってきたことは、カップルが親になり、家族づくりをはじめる初期段階に教育的な指導が必要だということである。両親の疲弊が子供に影響しないためにも、カップル研究から学べることは多い。
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2016年04月15日

75号

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『カップルが親になるとき』(1)

 著者:キャロン・コーワン、フリップ・コーワン
 訳者:山田昌弘、開内文乃
 発行:勁草書房, 2007年

訳者解説より
 「子どもが生まれたら夫婦関係はどうなるんだろう?」
かつては、日本でもアメリカでもこんな疑問を持つ夫婦はいなかった。
赤ちゃんは、結婚した夫婦が待ち望み、夫婦をさらなる愛情で結びつけるものと考えられていたからだ。
 
 しかし、今では様子が違っている。子どもが生まれるのは、喜びには違いなかろうが、それと同時に夫婦間で解決しなければならない問題も運んでくる。これらの問題は、たんに「お金」や「家事分担」の心配事として処理されるわけではない。夫婦の愛情関係に響いてくるのだ。現代は、子どもが生まれることによって、夫婦関係が試される時代になっている。

 本書は、アメリカの夫婦が直面している選択とそれに伴う問題を長期的なインタビュー調査を通じて見事に描き出している。「妊娠を知ったとき」、「子育てを始めるとき」、「母親が仕事を再開するとき」などで夫婦がどのように感じ、どこに期待や不満を持ち、時間やお金をやり繰りして、かつ夫婦関係を考えながら、子どもを育てていったかを詳細に考察している。

「出産―子育て」は、様々な要因がからんだ一連のプロセスである。どこかを切り離して分析するには不向きである。ある状況に対して、夫婦のそれぞれが意見・期待・欲求を持ち、交渉・取引、時には不満をぶつけ合ってやっと一つの決定にたどり着く。それが何度も繰り返される。トータルな支援が求められる所以である。
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2016年03月15日

74号

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『エピゲノムと生命 DNAだけでない「遺伝」のしくみ』
 著者:太田 邦史
 発行:講談社, 2013年

紹介者より
 今月は、「遺伝」から親学を考えます。選書のきっかけは、ある研究会でした。この飽食の時代に「現代の日本女性は、飢餓を体験している」というのです。それは中高生を中心とした若い女性たちの過剰なダイエットを指していました。最近の遺伝学の研究によると、過剰な食事制限は、本人だけではなく孫の代にまで影響することが明らかになっています。今を健やかに生きることが、即、次世代育成につながることを再確認したいと思います。

本書より<オランダ飢饉の世代を超えた健康への影響>
 
 第二次世界大戦末期におけるドイツによる西オランダ地方への食糧封鎖は、著しい飢饉をもたらしました。1940年の調査によると、当時の成人女性が一日に必要とする標準的な摂取カロリー「2500」キロカロリーに対してわずか「400」キロカロリーしか摂取できませんでした。この時に母親の胎内にいた子が成人して中高年になったとき、統合失調症や肥満、心臓病、糖尿病などのメタボリック症候群、乳がんになりやすいことが明らかになりました。さらに、女性については、孫の世代で出生児の身長が低く、肥満度が高くなるというのです。つまり、「おばあちゃん」が経験した栄養飢餓は孫の世代にまで影響を及ぼすのです。

 親がどのような生活をしたかで、子供の人生に影響が及ぶということが科学的な根拠を持って語られる時代になっています。今をどう生きるかが、人類の将来を決定するかもしれないのです。
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2016年02月15日

73号

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『東工大講義 生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか』
 著者:最相 葉月
 発行:ポプラ社, 2015年

紹介者より
 
 本書は、ノンフィクション・ライターの最相葉月(さいしょう はずき)さんの東工大での講義をまとめたものです。入場を制限するほど学生が集まったこの人気は、皮肉にも、現代の理系重視の風潮に疑問を投げかけることになりました。紹介者なりに理解した筆者のメッセージを二つ紹介したいと思います。
 
 まず、肝心の学生がテーマ選びでつまずいていて、将来の方向性を見定められずにいることです。彼らは、生き方のロールモデルを見いだせずにいます。その迷いや戸惑いが、彼らを教室に向かわせたのではないでしょうか、というものです。

 次に、テーマを選べないことの背景には、巷でいわれるような分野の細分化ばかりが問題なのではなく、結果を重視しすぎる時代の風潮にあるのではないか、というものです。その影響を受けて、テーマを探求するプロセスを「軽」くみることにつながっているといいます。
 
 本書は、12章に分かれていて、半分はゲストとの対談です。「このテーマを選んだワケ」に答えることは、それぞれが自分の歩みに触れることになります。生涯で一つのテーマを貫いた人、途中で道を変えた人、偶然の出会い、異端といわれてきた人など、その分野で一流といわれる人たちの迷い、苦しみ、出会い、決意に至る道を知ることで、きれいごとばかりではない人生の実質が
みえてきます。筆者は、持ち前の取材力で私たちにロールモデルを示そうとしているのです。ちなみに私は星新一の発想法に大変興味を持ちました。ぜひ、ご一読ください。
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2016年01月15日

72号

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『カウンセラーのためのパフォーマンス学―信頼を確立するための基本スキル』(2)

 編著:佐藤綾子
 発行:金子書房, 2015年

<本書より>
 相談の場面で出会うクライエントが、「明るくて」、「楽しい」話をすることはほとんどありません。どちらかというと、ネガティブな感情(腹を立てていること、哀しいこと)を話したい気持ちが強いものです。
 
 しかし、相談を受ける私たちには、その方とのやり取りを終えるまでに少しでもプラスの方向にクライエント自身の自己理解を深めて、勇気づけられるように援助することが求められます。たとえば「自分の今の状況が理解できた」、「自分のやり方でも大丈夫」というようにするには、どうすればいいのでしょうか。

 パフォーマンス学で重視しているのは、「非言語表現」と呼ばれるものです。それは私たちの存在が醸し出す、温かで安心できる「雰囲気」を指します。話やすい雰囲気をどのようにつくるかということは避けられない課題です。

 本書を読んで、まずは知的な理解から始めて、身体が反応できるレベルまでには、相当の訓練が必要になります。このパフォーマンス学は、ただのスキル集ではなく、納得できる根拠と哲学があります。本書の事例にあるような先生を探して、その立ち居振る舞いから、実体験を補強することが私たちに求められている研修のあり方ではないでしょうか。
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2015年12月15日

71号

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『カウンセラーのためのパフォーマンス学―信頼を確立するための基本スキル』(1)

著者:佐藤綾子
発行:金子書房, 2015年

<紹介者より>
 親学アドバイザー活動の一つに親学勉強会(話し合い学習)があります。
ときには初めての方もみえるでしょう。そのようなとき、安全・安心をどのように伝えていますか。そう受け止めてもらえるにはどんな工夫が要るのでしょう。種と仕掛けがあるのです。パフォーマンス学から学びましょう。

<本書より>
 何かのご縁で出会うことになったクライエントとどう信頼関係を築いていけばよいのでしょうか。この人だったら、心の奥底に抱えてきた本音を打ち明けても大丈夫そうだと、受け止めてもらえる秘訣があるのでしょうか。

 心に何か悩みを抱えたクライエントとカウンセラーの対話場面では不思議なことが発生します。クライエントが話はじめる瞬間から数分の間で、目の前にいるカウンセラーが本物か、ただの職業上装っているだけなのかを見抜いてしまうという事実です。しかもその結果、時には本心をまったく語らないということさえ起きてしまいます。

 パフォーマンス心理学では3つの基本ステップがあります。
 「自己発見」→「自己強化」→「自己表現」です。
 カウンセラーが「明るく、楽しく、(自他の)ためになる」自己表現ができたときになって初めてクライエントの語りが過去の呪縛を脱して未来に向かう成長の手がかりになるのです。

 そのためには、「受信者」と「発信者」の二つの方向性で技術習得が欠かせません。それは、自分の心とスキルを育ててレシーバを磨くことと、相手の気持ちに寄り添った表現力を磨くことです。
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2015年11月16日

70号

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『マシュマロ・テスト 成功する子・しない子』(2)

著者:ウォルター・ミシェル
訳者:柴田裕之
発行:早川書房, 2015年

<紹介者より>
 「マシュマロを今すぐ1個もらう? それとも我慢して後で2個もらう?」
 行動科学で有名なこのマシュマロ・テストは、保育園児を対象に行われました。食べることを我慢できた子とできなかった子を半世紀にわたって追跡調査して、自制心と成功の関連について調べたのです。結果は、我慢ができた(自制心がある)子どもは、その後の人生で、多くの場合において成功していることが明らかになりました。
 この結果からすれば、私達が人生で成功するかどうかは、初めから決まっているということになります。果たしてそうなのでしょうか。この実験の考案者で本書の著者であるウォルターは、「そうではない」と次のように説明しています。

<本書より>
 脳の可塑性の発見によって、人間の本質は以前から思われていたよりもずっと柔軟で変化することがわかりました。したがって、先天的に成功するかどうかが決まっているのではなく、自分の意思によって、自分を変える選択権とその責任のもとに、自分でいつベルを鳴らすのかを決めることになります。人生にはマシュマロを「待つ」べき時と「楽しむ」時があるからです。

 そのためには、欲望をコントロールする「クールシステム」、つまり自制心を身につけておかなければなりません。その自制心は教育によって培うことができます。デカルトは「我思う、ゆえに我あり」と述べましたが、これまでの研究を踏まえるならば「我思う、ゆえに我自らを変えうる」ということになります。なぜなら、考え方を変えれば、何を感じ、何をし、何になるかを変えることができるからです。

 最後の問題は、あなたに「その気があるかどうか」ということです。
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2015年10月15日

69号

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『マシュマロ・テスト 成功する子・しない子』(1)

 著者:ウォルター・ミシェル
 訳者:柴田裕之
 発行:早川書房, 2015年

<紹介者より>

 「マシュマロをすぐ1個もらう?それとも我慢してあとで2個もらう?」

 あのマシュマロ・テストです。講座を受講された方でしたら、ご存じかもしれませんね。
 マシュマロを食べるのを我慢できた子とできなかった子を半世紀にわたって追跡調査して、自制心と成功の関係を調べた研究です。人生で成功する子は初めから決まっているのでしょうか。テストの生みの親が解説しています。
 原題には"Mastering Self-Control"とあります。親学流の発達段階では他律から自律への移行期にあたり、それが生涯にどのような影響を与えるかを扱っていると考えられると思います(愛着→他律【→】自律→自立)。

<本書より>

 1960年代にスタンフォード大学のビング保育園で行った単純な実験で、園児に厳しいジレンマを突き付けた。報酬をただちにもらうか、最長20分待ってより多くの報酬をもらうかのどちらかを選ばせたのだ。
 未就学児が待ち続けようとして何をし、欲求を先延ばしするためにどうしたのか。それらは、意外にも彼らの将来について多くのことを予想できることがわかった。4歳か5歳のときに待てる秒数が長いほど大学進学適性試験の点数が良く、青年期の社会的・認知的機能の評価が高かった。また、長く待てた人は27歳から32歳にかけて肥満指数が低く、自尊心が強く、目標を効果的に追及して欲求不満やストレスにうまく対処できた。

 こうしたマシュマロ・テストの結果は、本当は何を示しているのだろうか。
また、どうすれば先延ばしにすることを教えられるのだろうか。ヒントは、私たちの脳内で作用している二つのシステムにある。一つは情動・反射・無意識的な<ホット>システム、次に認知・内省的で時間と労力がかかる<クール>システムだ。強烈な誘惑に直面したときにこれらがどう相互作用するのか、日常生活で建設的に活用する方法を紹介したい。
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