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2017年06月15日

89号

『ナラティヴ・セラピー 社会構成主義の実践』
 編者:シーラ・マクナミー、ケネス・J・ガーゲン
 訳者:野口裕二、野村直樹
 発行:遠見書房, 2014年(原著:Therapy as social construction,1992)

紹介者より

前回まで、「他者の森を駆け抜けて自己になる」意味の自己形成を紹介してきました。
20世紀前半の自己論の特徴であった、社会とは別に存在する個人や自己という存在が自己実現していく発達段階を辿る発達モデルから、20世紀後半には社会のなかで他者と関わりながら自己・アイデンティティを形成していくと考えられるようになる流れを紹介しました。

今は、21世紀です。すでに自己形成から自己「構成」へと議論は発展しています。この領域の重要文献(本書)が、時代に合わせて新訳出版されていますので、ご紹介いたします。

現代を生きる私たちには、様々な役割を一度にこなさなくてはならない場面が多くなりました。自分の住む世界を正しく知って、それに適応して行動するのは個人であって、その場に対処しきれないことがおきれば、能力や行動に機能不全があると判断されてしまいます。(モンスター親、・・、などが想定されます)

どんな場合でも無難にうまくこなさなければならなくなった個人は、結果として、飽和(いっぱい、いっぱいの)状態になっています。こうした背景から、20世紀までの自己論を見直す動きが起こってきました。理論が現状にあわなくなってきたといえるでしょう。

現代(21世紀)は、様々な役割が一つに集約される最終点としての自己を「形成する」自己論から、人との関わりのなかで自己を「構成する」時代に入っています。では「自己を構成する」とはどのような意味なのでしょう。

自己は何によって「構成」されるかというと「言葉・言語体系」によって構成されると考えられています。言葉を使って自分が語られると、意味のまとまりをもったストーリーがあらわれます。このストーリー(物語)のなかに、自己が構成されるのです。文脈ごとに自己の役割やイメージがあることになります。

こうして、例えば母親の私、働く私、妻としての私、娘としての私、友人のなかにいるときの私など、様々な私はそれぞれの文脈のなかで存在することになるわけです。

演劇に例えると、舞台(場所)、登場人物(役割)、シナリオ(ストーリー)、背景が設定されて場面ごとに私たちはその役割を演じていますが、突然に場面が変わって、手元の台本や役割ではうまく乗り切ることができないときに、その台本を改訂する作業が必要になります。それがセラピーの役割だというのです。

改訂の場面では、カウンセラーは何を話すかよりも、なにを「質問する」かに重点をおいて関わります。人生の台本を改訂する作業の共同制作者であり、証人になるのです。

具体的には「この病気にかかってどのくらいですか」と聞くところを「この病気にかかったと<思ってから>どれくらいですか」と聞くようになります。クライエントの語りのなかにその方の真実があると受け止める姿勢が、改訂のきっかけになるという視点です。
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posted by oyagaku at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 図書紹介
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