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ベーリング海の珊瑚礁[2011年10月05日(Wed)]
先週は、木曜日にUBC(ブリティシュコロンビア大学)のLiu Institute for Global issuesの所長、 Peter Dauvagne教授と面会した。CSR(企業の社会的責任)の専門家のJane Listner博士の紹介である。

教授は、Political economy を専門としており、環境問題が政治経済的な問題でもあるという立場から議論を進めている(「地球環境の政治経済学 : グリーンワールドへの道」が日本語に訳されている)。個人的に魚問題には関心があり、彼の招待でダニエルポーリー教授も同研究所で何度か講演をしている。

また、教授のイニシアチブで、UBCの博士課程大学院生の間に学際的なネットワークを構築するプログラムが実施されている。これは、優秀な院生が学際的なチームを作り、共同にて研究・論文共著を行う事をサポートするプログラムである。ネレウスでの学際的なコラボレーションについて、経験豊富な教授に今後もアドバイスを頂けるのはありがたい。

金曜には、FISH 500セミナーで、太平洋最北の海、ベーリング海の自然についての発表を聞いた。ベーリング海は、大規模な漁業にとって世界有数の好漁場、Discovery ChannelでDeadliest Catch というカニ漁のドキュメンタリーがあるが(日本の題名は「ベーリング海の一攫千金」)、荒れ狂う北の海は、漁師にとってはまさに「板子一枚下は地獄」の世界である。

今回の発表は、その地獄の底深くに広がる素晴らしい海底珊瑚とそれらがそこに住む海の生物にとって(これはカニも含む)如何に重要な生息域であるかという講義であった。グリーンピースに所属する科学者であるJohn Hocever氏の発表は、海底探査用の潜水艇からとった珊瑚と荒れ果てた荒野の様な無惨な海底の姿を、写真を使って分かりやすく見せてくれた。何より驚いたのは、多くの漁師の生活を支えているこの海に関して私たちが本当に限られた調査・科学知識しか持っていない事であった。

発表の最後に会場から「グリーンピースにいる事で、あなたの「科学的報告」が色眼鏡で見られませんか?」との質問があり、「それについては否めないし、科学のみを行う事で、内外に対して色々受け入れられない事もあるが、事実を知る事は重要であると考える」と答えていた。

先ほどのDauvergne教授の著書でも議論されているが、私たちは、一人一人個人としてグリーン主義な部分と市場自由主義な部分を併せ持って生きており、それはある意味Hocever氏や環境保全の立場に立つ人間にとっても同様であろう。

現実社会の持つ混沌と人それぞれが考え方や行動において自己矛盾する事実をふまえながら、環境や政治的な問題については、その解決を目的として議論や調査を進めるべきではないか。
マグロは大丈夫? Duke大学ネレウスフェロー [2011年09月28日(Wed)]
先週から、自分自身の研究に割く時間があり、「魚と文化」についての調査を少しづつ進めている。

魚資源管理におけるHuman dimension (人間的側面)の研究は地域的な視点から行われている取り組みが多く、魚資源を共有財産やコモンズ(Ostromのカテゴリーについては深くは言及しない、民族学的な事例を見る上でそのカテゴリーにどれほどの意味があるのかについては考察中)として地域共同体の管理制度に言及する報告が多い。

そこには、成功の要素としての『リーダーシップ」等が焦点としてあげられるが、『??さんが立派だったから」というは説明として成り立つのか、少なくとそのリーダーシップを可能とした社会的枠組みについてより深い理解を得たいと考えている。

本日は、Duke大学のAndre Boustany博士とスカイプ会議、集中した1時間の長く楽しい会話だった。Andreとは、先週のDukeチーム(Patrick Halpin, Daniel Dunn)との会議で話をしたが、面と向かうのは初めてである。

今回は、彼のこれまでの研究と今後の予定について話をした。Andreは博士号をスタンフォードで終え、魚に発信器をつけて生態等を探る研究を行ってきた。マグロやサメ等の大型回遊魚が対象として国際的な若手マグロ(サメ)エキスパートである。

海に関わったきっかけは、学部を終えて漁船に監視員として混穫の実態(対象となる魚種ではなく大型の海洋ほ乳類等を網にかけてしまう事)とその取り締まりの仕事を行ったのが始まり、その経験から魚の生態とともに漁業について興味を抱いたという。

珍しく、複雑なモデル分析をするにもかかわらず、漁師との関わりの中で漁業管理の実践の難しさを肌で感じてきた若手海洋科学者である。もう十数年毎年海に出てマグに発信器を取り付ける調査を行ってきたため、海とそこに棲む生物についてはネレウスフェローの中で一番『実践的経験知」が高い。

漁業管理における科学の役割について、漁業管理が長期的な視点に立つ必要性は、早急に漁師に受け入れられなくても、科学者として、研究結果を常に発表し、実態と問題を指摘し続けるべきだと彼は言う。

本マグロに関しても、「其の危機については1999年から指摘されてきた。最近 その指摘を受け入れた管理政策が提示され始めた。時間はかかる」という。学際的なネレウスの取り組みに参加出来た事を嬉しく思うといい、他機関のフェローと共に 、『科学的結果」が受け入れられる(政策に反映される)時間を縮める工夫を考えていきたいと話してくれた。

マグロについて、プリンストンのJames Watson博士との橋渡しをし、今後は漁業経済、管理政策学に関わるネレウスフェローも含めた一連のマグロの流れ(自然から食卓へ)についての共同研究を今後の計画として進めていくつもりである。

Andreにマグロに関して聞いた所。「本マグロは絶滅はしないと思うが、資源量はかなりまずい事になっている」と話してくれた。我々がやるべき事は、本マグロには手を出さずにビンチョウやキハダを食べているのが良いと言うのが、Andreからのメッセージである。

最後に、CITESの件について話し、それが「本マグロの問題に一般の関心が向いた事が今後の資源保全にとっては、ポジティブな出来事であった」と述べ、「日本で築地に行きたい」と嬉しそうに話してくれた。バランスのとれたマグロ話の出来る若手研究員の参加に、心強く思った。
Princeton ネレウスフェロー[2011年09月21日(Wed)]
バンクーバーでは、今の季節松茸が出回っている。大変安めの値段で巨大な高級キノコを食せるのはありがたい。ここまで大きく育つのは気候の違いかそれとも種類の違いだろうか?

本日は午前中にUBCのネレウス関係者と会合、今後2週間に1度は各パート進捗報告も含めた会合を行う。如何せん各自専門性が高いため、こまめにベンチマークを決めておかないと各自バラバラになってしまう為、この様な会合は必要である。

現在遅れているウェッブのセッティングも含め早急に対応が必要な課題は山積みである。

午後から、プリンストンのシニアネレウスフェローであるJames Watson氏とスカイプにて会合、プリンストンの環境に慣れたかも含めて、研究内容等の説明を受けた。

カリフォルニア大学で博士号を終え、この秋からプリンストンにネレウスフェローとして配属されたJamesは、海流により海洋生態コミュニティが如何につながっているのかを探る事で、各海域の環境変化また漁業圧力への『抵抗力」を理解しようと試みている。

その為に、まず『大きな魚から減っていく」という「フィッシュングダウン現象」をより現実的にしかしシンプルに理解するために、魚のサイズを中心に新たなシミュレーションモデルの構築を試みている。

また、大型の海洋生物が如何に海域を移動し、またどのような理由でその移動パターンを変化させるのかを知る事で、今後これらの生物の活動の変化を予測する方法が導かれるのではないか(またそれによって漁業の海洋生物への影響をより詳細にそして広範囲に知るえるのではないか)という課題にも取り組む予定であるという。

配属されたプリンストンでは、生態学と海洋学の両学部の橋渡しをすでに始めており、人のネットワークを重視するネレウスに適任のフェローと言える(大変頼もしい!)。

昨日のDuke大学のフェローとの会合を早急に設定する事を約束しスカイプ会談を終わったが、多様な海の問題に柔軟に取り組もうとするJamesとの会談は本当に楽しかった。

会話の最後に、金融と海洋の話になり、生態学的アプローチを金融動向の理解に適応するというワイルドな考えを持つ研究者の話を聞いた。少し勉強してみようかと考えている。James Watson博士のウェッブはこちら
http://www.icess.ucsb.edu/~watson/Site/Home.html

Duke大学 [2011年09月20日(Tue)]
久しぶりに、晴れた日になり少し暖かい一日となった。

月曜日は毎週メール等で忙しい日々となるが、今日は少し時間があり、午後からの会合の為の予習が出来た。他分野の論文を読むのは、簡単ではないが基礎的な議論を理解する事に集中してリーディングを行うのは持続的に『学ぶ」楽しみを与えてくれる。

今日は、午後からネレウスの参加期間であるDuke大学と会合。研究責任者のPatrick Halpin氏、ネレウスフェローのDaniel Dunn氏 (博士課程)、ネレウスシニアフェローのAndre Boustany氏とサポートスタッフのEi Fujioka氏(漢字をお聞きするのを忘れておりました。すいません。)と今後の研究計画等について話をした。

Duke大学の参加者は、Marine Geospatial Ecology Laboratoryを拠点としており、GISによる海洋生態系・海洋活動の地図化を専門としている。最近、世界の海洋生物調査で有名になったCensus Of Marine Lifeでも生物情報の視覚化において中心的な役割を担っていた (例えば、広範囲で泳ぐマグロの生息域を地図に表す等)。

ネレウスでは、高度回遊魚の生態と漁業活動の関わりや、海洋保護区等の空間的な海洋管理の漁業活動の影響等、地理的な情報を視覚化し、異なった活動(魚の動きと漁師の動き)を重ね合わせる事でよりリアルな人間と魚の空間的な関わりを明らかにする研究を行う。

Andreは、マグロとサメの専門家であり、現在これらの魚種がどのくらい「あぶない」のかについてまた個人的に話してもらう事にした。

研究準備といい、進行に関する計画といい、Duke大学は現在ネレウスパートナーのトップランナーである。また、Daniel Dunnは海洋空間計画(Marine Spatial Planning - MSP) にも強く興味を持っており、私も少なからず関心のあるトピックである為、今後MSPについてもサイドトラックとして話を進めるつもりだ。

Duke 大学 Marine Geospatial Ecology Laboratory
http://mgel.env.duke.edu/

いきなり寒いバンクーバーとFish 500 Seminar[2011年09月17日(Sat)]
昨日まで、Tシャツで歩けたのに今日は朝から寒くセーターを来てオフィスへ。これから曇りと雨の日々が続くらしいが、イギリスが長かったためどんよりした空模様はそれほど嫌いでもない。ここで、「ターナーがなんとか」とか言い出すと坊ちゃんの赤シャツになってしまうので、取りあえず黙っておこう(でも、赤シャツが言っていたのは晴れた日の松の話だった様な)。
本日は、午前中ビジネススクールで講義を受け、その後Fisheries Centreの恒例セミナーFISH 500へ。本日の講義は、先日も話したWilf Swartz氏。最近半年程WTOでインターンをしてきた漁業経済学の大学院生(博士号)。

国際会議において如何に水産取引に関する国際的合意が困難かについて、内部からの視点で話してくれた。内容は、Wilfの論文が発表され次第お知らせします。それにしても、「ドーハの悲劇」について語る時に(あくまでも世界貿易機関のドーハラウンド交渉の非成功について言及しているのだか)、日本のサッカーの写真を出すのはやめてほしい、トラウマになる(笑)。

その後、人類学部のFelice Wyndhamと会議、漁業管理の人間的側面(Human Dimension)とHuman Ecologyについて話をする。

彼女とはもう6、7年の知り合いである。
私は、人間的側面って何?誰がその研究を必要としているのか?という内容で10月末にFISH 500で講義をする。この研究は、ネレウスの社会学系研究に対する私のContributionとして進めている。
プリンストン大学フェロー[2011年09月16日(Fri)]
ネレウスの協力大学であるプリンストン大学で博士課程を行うケリー・カーニイ氏(女性)とスカイプ会議を行った。

ケリーは、今秋からネレウスフェローとして選抜され、気候変動(変化)と魚資源の関係について研究を行っている。門外漢の私にも分かる様に研究内容を説明してもらった。ケリーが現在行っているのは、海の基礎生産力が気候の変動によってどのように変化し、それによって魚資源にどういった影響を与えるのかを予測する事である。

既存の生態系モデル(海洋の物理的な動きとプランクトンを扱うNemuro modelと小型から大型までの魚の食物連鎖を表すEcopath)の合成(適切な表現ではないかもしれないが)を行い、10年から20年単位で変動する気候が、魚資源にどのような影響を与えているのかをより明確にする事を目指している。

ケリーは、魚の資源管理は、魚種の動きのみに焦点を当てしまい、より低いレベルでの海の生物の変化とつながっていないと言う。小さいプランクトンから大きなマグロまで連鎖する海の生態系のつながりと気候の変化の影響をより正確に認識する事は、魚資源の動向を詳細に理解する事、例えば漁業をストップしても一度激減してしまった資源が回復しない理由等を探る大きな手がかりとなるだろう。

なぜ海の研究に足を踏み入れたのか、という私からの問いに、「なぜか知らないが、高校の時から、海洋科学者になりたいと思っていた。今でのその時の気持ちと何も変わらない。海は謎が多いからかも」と答えてくれた。

イギリスの漁師が一度、「気候が変わると魚の資源量はどうなるのか科学で分かっているのか?」と私に聞いてきたのを思い出し、今度ケリーと会う機会には一緒にその漁師に電話してみようと勝手に考えた。
環境管理 9月号[2011年09月14日(Wed)]
「環境管理」という機関誌が日本の海洋資源と海洋環境保全という特集を9月号で発刊している。海洋エネルギーから土砂管理まで幅広い分野での論文が掲載されており、私もネレウスについて寄稿させて頂いた。

「世界規模の漁業資源管理と日本の役割」というタイトルは、魚資源の問題が一国のみよる政策では解決出来ない事(輸出入も含めて魚が国境を超えて移動するため)を考えてつけたタイトルだが、実践では漁業管理は土地土地の特色を理解し、きめ細やかな対応も必要とする。その上、一般の消費者にも、正しく事態を認識してもらう事も大切だ。

だが、この「正しく」というのがくせ者である。例えば、世界的なアセスメントは、地域的に偏ったデータを用いている為、「正しい」海の姿を私たちに示す事ができない。Uncertaintyを見極めながら、状況に対応して資源管理を行う柔軟な対応が最適であるが、そうは問屋がおろさないのが海の問題である。

本日は、Stockholm Resilience Centreのネレウスフェローである Andrew Merrie氏と連絡をとる。氏は、地域漁業管理機関の「進化」と国際的な漁業管理の実態を探っている。関係者を個々に観るのではなく、それらがネットワーク化する事(またはしない事)によって出てくる国際的漁業管理への影響を考察している。社会科学系であるが故に、今後他分野とのデータ統合が課題であると話した。
ネレウス初年度準備[2011年09月13日(Tue)]
9月より、NF-UBC ネレウスプログラムの初年度が開始している。ブリティシュコロンビア大学を中心として、協力研究機関は当初の予定通りDuke大学、Princeton大学、Stockholm resilience centre、World Conservation Monitoring Centreとケンブリッジ大学である。

各大学に配属される日本財団ネレウス フェロー(Phd, Post-doc一名)もほぼ8割その選抜を終わっている。今後、フェロー同士のやり取りと各大学の研究責任者の共同研究を通じて、幅広く学際的な活動を進めて行く事になる。多様な学問の若手研究者と関わるのは大変刺激的だ。

先日まで、インディアナ大学人類学部の浜田信吾氏が私の属するFisheries Centre(FC)を訪れてくれていた。今月から日本に帰国し、北海道の厚岸にて一年間、現地調査に行くそうだ。FCでは、世界的な水産取引と漁業経済及びマーケットについての研究を進めるWilf Swartz氏(博士号もうすぐ終了)といろいろ話していた。

人類学というミクロの視点と世界的規模の分析を行うマクロの水産研究を行う研究者が意見を交換するのは、大変興味深い。私も、気候変動とその漁業への影響を専門的に研究するWilliam Cheung氏と現在共同研究を行う準備をしている。気候変動と人類学、またその切り口については次回。
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ネレウス太田義孝
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