CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る

海洋政策研究所ブログ

海洋の総合管理や海事産業の持続可能な発展のために、海洋関係事業及び海事関係事業において、相互に関連を深めながら国際性を高め、社会への貢献に資する政策等の実現を目指して各種事業を展開しています。


海のジグソーピース No.149 <BBNJ第3回政府間会議での議論を振り返って> [2019年10月09日(Wed)]

 本年(2019年)8月19日から30日にかけて、「国家管轄圏外区域の海洋生物多様性(BBNJ:marine Biological diversity Beyond areas of National Jurisdiction)」の保全と利用に係る新しい条約策定に向けた第3回政府間会議がニューヨークの国連本部で開催されました。海洋政策研究所では、BBNJに関連する能力構築、海洋技術移転の議論を中心に情報収集を行うとともに。会期中に開催された能力構築に関心のある関係者が一堂に会した非公式会合「Friends of Capacity Building」に前川美湖主任研究員が登壇するといった活動を行いました。そこで、今回はこれらの活動を踏まえたBBNJの能力構築の議論の今をご紹介したいと思います。

 BBNJをめぐる議論では、今回の政府間会議から条約の草案となる「Draft Text of an Agreement」をもとに進められることとなりましたが、文章をもとに交渉を進めることを求めてきた各国にとって、これは大きな一歩と言えます。一方、議論の中身に関しては、依然として各国の対立が多く見られました。その対立の構造は、主に途上国対先進国というものですが、これは能力構築・海洋技術移転の議論においても同様の構図となっています。例えば、BBNJの保全と利用に向けて具体的な取組みを行う際、それには技術や知識が要求されます。その際に、それらを有する国(主に先進国)による途上国への能力構築が必要となりますが、途上国はこれを「先進国の義務」としてBBNJ新条約に盛り込むべきと主張しています。これに対して、先進国は能力構築があくまでも任意的なものと捉え、途上国の主張に反対しています。少しでも交渉を有利に進めたい途上国と新条約によって自国の負担となり得る可能性を最小化したい先進国との溝は、根深いものがあると感じられました。

 その一方、非公式会合ではスピーカーや参加者(各国政府代表や政府間機関、民間機関)から、改めて能力構築や海洋技術移転の重要性が主張されました。また、こうした非公式の場で異なる立場にある代表が集まり、互いの情報・知見の共有や公共・民間のリソースの活用方法等に関する情報提供等を行ったりすることが政府間会議における議論をさらに深化させていく上で重要であることが強調されました。海洋政策研究所からも、「民間・公共両セクターの資金提供における協同をどのように図っていくのか」という問題提起を行うとともに、「能力構築ではフォローアップを含めた一連の段階が必要である」ことや「能力構築提供者間の協力体制構築が必要である」ことを表明しました。このような非公式の場は、各国の利害に焦点が当たりがちな政府間会議とは異なり、政府代表を含めたそれぞれの代表の意見が忌憚なく発せられます。その点で、BBNJ交渉のある種の潤滑油になるのではないかと感じられました。

 現在のところ、次の第4回政府間会議が、BBNJに関する最後の交渉の場とされています。しかし、ある政府代表の見解では、交渉の期間はさらに伸びる可能性があるとのことでした。能力構築・海洋技術移転が真の意味で、BBNJの保全と利用に貢献し得るものとなるのか、今後とも議論の行方を追っていく必要があると思います。私も海洋政策研究所の研究員として、引き続きBBNJをめぐる議論に注目したいと思います。

image001.jpg
非公式会合「Friends of BBNJ Capacity Development」の開催の様子(筆者撮影)

海洋政策研究部 藤井 巌