The 8th China-Japan-Korea IMBeR Symposiumでの研究報告
[2018年10月05日(Fri)]
2018年9月17日から19日にかけて、笹川平和財団海洋政策研究所の高翔研究員が中国上海市にある華東師範大学で開催された「The 8th China-Japan-Korea IMBeR Symposium」(日本語通称:CJK IMBeRシンポジウム)に出席し、海洋ガバナンス構築のあり方に関する調査研究成果の普及啓発の一環として、日本における沿岸域管理の方策に注目した「The Development of Coastal Governance in Japan」と題する報告(口頭発表)を行いました。
IMBeR(Integrated Marine Biogeochemistry and Ecosystem Research)は、海洋における物質循環と生態系動態に関する調査研究の中心的な役割を果たしてきたIGBP(International Geosphere Biosphere Programme:生物圏―地球圏国際共同研究計画)が1990年以降に立ち上げた3つのコアプロジェクトの1つであり、現在も活動を進行している唯一のプロジェクトでもあります。このプロジェクトは太平洋を主な対象海域として、2005年から始められました。CJK IMBeRシンポジウムは、IMBeRの下に設置された分科会の1つですが、自然科学の調査研究に対しても、社会科学の視点を導入する必要性が認識されるようになりました。その結果、今回は海洋や地球環境に重点を置いていたこれまでのCJK IMBeRシンポジウムとは異なり、初めて人間社会にも注目したプログラムが構成され、高研究員は社会科学分野の知見と密接に関わる第3セッション「Responses of society to global change in marine systems: ways forward」において、前述の報告を行いました。
高研究員は報告において、ガバナンスの視点から日本の海洋ガバナンスの重要な一環をなす沿岸域に分析の焦点を当て、地域レベルにおける日本の沿岸域ガバナンスのあり方を提示することを目指し、日本における沿岸域の利用管理問題の諸相や日本における沿岸域ガバナンスへの取組みの実態(例えば、漁場・藻場再生、漁業の自主管理、サンゴ礁の再生、里海など)を紹介するともに、日本における沿岸域ガバナンスのあり方を提示しました。
このような自然科学分野での国際会議において、社会科学、特に政策科学の観点から海洋カバナンスの構築について報告できたのは、海洋の複雑なメカニズムを明らかにする上で大変重要な取り組みであると思います。自然科学と社会科学の融合を目指す本シンポジウムには今後も継続的に出席することを予定しておりますが、私たちもこのような複眼的な視点から海洋政策のあり方を模索したいと考えております。
華東師範大学の図書館の入口付近で立てられたシンポジウムの看板