• もっと見る

海洋政策研究所ブログ

海洋の総合管理や海事産業の持続可能な発展のために、海洋関係事業及び海事関係事業において、相互に関連を深めながら国際性を高め、社会への貢献に資する政策等の実現を目指して各種事業を展開しています。


海のジグソーピース No.118 <「海とヒトの関係学」シリーズ刊行にさいして> [2019年02月20日(Wed)]

海の問題をどう読み解くか

 平成最後の年が幕を開けました。この31年の間、世界は大きく変わってきた、という思いをお持ちの方も多いでしょう。今後、世界はどう動くのでしょうか。私たちは、海をめぐる問題から、世界を考える点に基軸をすえていろいろと考えてきました。
 現在、地球温暖化と異常気象、海洋酸性化、乱獲と生物多様性の減少、海洋プラスチックゴミなど、海に関連した由々しい問題が連日のようにメディアで報じられています。ただし、個別の問題が報じられても、より包括的な視点から未来を見据えた議論は出版事情からも読者に十分な理解をえられないままに推移しているといっても過言ではありません。本企画はその点で先駆性と時代性をふまえたものです。

オピニオン誌の蓄積を集約する

 本シリーズは、海洋政策研究所がこの19年、発信をつづけてきた『Ocean Newsletter』の論考を中心として編集し、重要なテーマを元にその意見を論集として集約したものです。すでに Ocean Newsletter は平成12年8月の発行以来、445号を迎えます。1号あたり3本の論を掲載し、かかわった執筆者は創刊以来、のべ1,300名以上になります。
 海とヒトとが関わる分野はそのすそ野が広く、安全保障や国境紛争などの政治面から、船舶、造船、運輸、エネルギー問題、水産業、災害、教育や文化、歴史に至るまでの多様な話題があります。Ocean Newsletter では、時代やその時々のホットな問題を発信し、読者とともに海を考える姿勢を貫いてきました。
 海外からの投稿、読者のオピニオンなども含め、海洋政策から地域振興、教育現場までに関わる執筆者をお招きできました。その成果として、海を考える人材ネットワークを開発し、たがいに連携する努力を積み上げることができました。執筆にご貢献いただいた諸氏に心から感謝する次第です。
 この実績を踏まえて、今回の単行本シリーズ案が浮上しました。Ocean Newsletter の編集代表を初代の中原裕幸氏・來生新氏を継承し、山形俊男氏とともに12年間務めたこともあり、私は本シリーズ発刊の編者として海洋政策研究所の角南篤所長と編集作業を担当しました。
 Ocean Newsletter では執筆者だけでなく、外部の編集委員の貴重なご助言や海洋政策研究所のスタッフの尽力があったことは言うまでもありません。今回は、西日本出版社の内山正之社長と編集担当の岩永泰造氏の絶大なご協力をいただき、刊行にこぎつけることができました。厚くお礼を申し上げます。

海とヒトの関係の未来に向けて

 本シリーズでは、海とヒトの関係性を軸として、特定のテーマを元に構成することとしました。第1巻では「日本人が魚を食べ続けるために」、第2巻では「海の生物多様性を守るために」と題して、読者各位へのメッセージを強く押し出すようにしました。なお、執筆者は Ocean Newsletter にご執筆いただいた方がたであり、若干の論を新規に執筆いただき構成しました。
 海洋政策をモットーとする本書の性格から、単なる論集ではなく、今後の海とヒトとのよりよい関係性に資する議論を提示していただくよう編集面でご助言いたしました。日本の海洋政策、海洋教育、地域振興のありかたなど、多面的な政策上の問題を読み取っていただけるよう編集に最大限の配慮をいたしました。まだまだ不備な点、不十分な点がありましょう。読者各位の忌憚ないご意見をいただければと考えております。
 来年度には第3巻として「海はだれのものか」(仮)をテーマにすえ、すでに準備を整えつつあります。本シリーズを通じて、日本の海洋政策の推進や、よりよき海との関わりを構築する上での一助となれば幸いです。本シリーズを海の入門書としてぜひともお勧めいたします。

海洋政策研究所特別研究員 秋道 智彌


秋道1.png
「海とヒトの関係学」シリーズの表紙
(クリックして拡大)


チラシ.PNG
「海とヒトの関係学」シリーズ刊行について
(クリックしてPDFを表示)

海とヒトとの関係学シリーズ 2019年2月19日発行
第1巻「日本人が魚を食べ続けるために」(西日本出版社 ISBN978-4-908443-37-4)
第2巻「海の生物多様性を守るために」(西日本出版社 ISBN978-4-908443-38-1)
*書店にてお求めいただけます。

コメント