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海洋政策研究所ブログ

海洋の総合管理や海事産業の持続可能な発展のために、海洋関係事業及び海事関係事業において、相互に関連を深めながら国際性を高め、社会への貢献に資する政策等の実現を目指して各種事業を展開しています。


海のジグソーピース No.42 <『海洋の状況及び海洋に関して講じた施策』に見る次期海洋基本計画への期待> [2017年08月09日(Wed)]

 本ブログを御覧になっている皆様はご存知のことと思いますが、現在、次期海洋基本計画の策定に向けて、当研究所が実施した現海洋基本計画の評価と総括や、次期海洋基本計画に向けた提言(海産研経団連)が各方面で発表されてきています。そうしたなかで、筆者が会員となっている日本海洋政策学会においても、平成27年10月に「新旧海洋基本計画および各年次報告に関する研究」と題する課題研究グループが立ち上げられ、本年7月末に「第3期海洋基本計画の策定に関する提言」(以下、提言書)を作成、公表しました。筆者もこの課題研究グループに参加しているため、本日のブログでは、個人研究活動の一環として、この提言書をまとめるにあたって、本課題研究グループが行ってきた研究内容について紹介させていただきます。

 まず、本課題研究の問題意識ですが、当初からメンバー全員の間で、政府がどのように海洋に関する施策を行ってきて、それがどのように評価されているのか、についての問いかけが出発点でした。政府が海洋基本法15条に基づき、海洋基本計画の実施状況等に関して、毎年、「海洋の状況及び海洋に関して講じた施策」(以下、年次報告)を発表しており、また、海洋基本法16条5項では、「政府は、海洋に関する情勢の変化を勘案し、及び海洋に関する施策の効果に関する評価を踏まえ、おおむね五年ごとに、海洋基本計画の見直しを行い、必要な変更を加えるものとする」(下線筆者)と規定されています。「海洋に関する情勢の変化」については、各年次報告でも「海洋のこの1年」との見出しで報告例は比較的多く見出せます。他方、「海洋に関する施策の効果に関する評価」に関しては、その必要性は参与会議の意見書でも幾度か指摘はされてきているものの、ほとんど議論されていないのが現状です。

 そのため、「施策の効果に関する評価」のあり方を念頭におき、本課題研究グループでは、メンバー全員(※)の専門性に即して、基本計画第2部「政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策」(以下、12の基本的施策)を分担し、旧計画と現計画での記載内容の変化、また、その記載内容に対して、各基本計画策定以降の各年次報告における報告の有無及び報告内容の変化を検討しました(表1、2)。

表01.jpg
表1 現基本計画の施策項目と各年次報告での記載の有無の例
(右欄の年次報告の各コラムで、○は記載あり、−は記載なし)
(注:実際には、すべての基本的施策について本表を作成してある。表2も同。)

表02.jpg
表2 基本計画の施策項目に対応する年次報告の記載の推移の例

 このような研究手法で検討されてきた結果に基づき、本課題研究グループは「施策の効果に関する評価」に関して、年次報告こそが施策の実施状況やその効果を評価するための重要な検討材料であることを認識し、年次報告のあるべき姿とその役割、次期海洋基本計画において施策の評価に関する導入すべき視点、並びに12の基本的施策に関する改善すべき点を骨子として、提言をまとめました。

 本課題研究グループでは、施策にかかわる評価の手法はさまざまであるべきだと思いますが、施策側が積極的に自己評価を行うことも大事であると考えています。年次報告の内容を充実させることは正に施策の各担当省庁による自己評価の実施ではないかと思いました。さらに、これを参与会議で客観的に評価し、その内容も同時に公表していただき、PDCA サイクルのような仕組みが構成できれば、評価の結果を施策にフィードバックし、次の政策策定にも有用な材料を提供することができます。そのため、政府には年次報告の内容作成および年次報告の有効活用にぜひ重点を置いていただきたい、というのがメンバー一同の願いでした。

※本課題研究グループは横浜国立大学統合的海洋教育・研究センターの中原裕幸客員教授がファシリテーターとなり、船舶海洋工学、水産学、環境政策、国際法、国際政策、科学技術政策、総合的沿岸域管理、教育政策など、筆者を含む多岐にわたる専門知識をもつ11人の研究者から構成されています。

海洋政策チーム 高 翔

Ocean Newsletter No.408 [2017年08月08日(Tue)]
 No.408が完成いたしました。

『Ocean Newsletter』は、海洋の重要性を広く認識していただくため、
海洋に関する総合的な議論の場を皆様に提供するものです。 
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●日本の安定的な海上輸送確立に向けた日本籍等の外航船舶の確保について
東京大学公共政策大学院特任准教授◆諏訪達郎

世界的な海運不況が続く現状において、日本の安定的な海上輸送を
確立するためには、急減してしまった日本籍船の確保が重要となる。
外航海運において世界標準ともいうべきトン数標準税制やさまざまな
政策によって外航船舶の確保が図られているが、日本の外航海運企業が
外国の外航海運企業と対等に競争できるようにするためにはさらなる
環境の整備を図ることが重要となる。

●瀬戸内海のタイシバリ網漁と聞き取り調査の緊急性
香川県立観音寺総合高等学校教諭◆真鍋篤行

伝統的網漁は近世以前に起源のある歴史的価値の高いものが多いが、
高度経済成長の間に大半が消失している。
伝統的網漁の終末期に20歳代であった漁民も現在は80歳代で聞き取り
調査もあと5、6年が限界になる。
今、伝統的網漁に関する聞き取り調査を実施しなければ、貴重な網漁に
関する情報が永遠に失われる。
ここでは伝統的網漁の聞き取り調査の緊急性とその意義を瀬戸内海の
タイシバリ網を事例に述べたい。

●ペンギンが主役の水族館
長崎ペンギン水族館館長◆楠田幸雄

長崎水族館から長崎ペンギン水族館へ引き継がれた、ペンギン飼育は
今年で58年目となる。
これまで数々のドラマや記録を残しながら、ペンギンに特化した施設
として世界一と世界初を掲げている。
現在は、ペンギンの入手が難しくなり、将来に向けてペンギン大国である
日本の動物園・水族館が協力しながらペンギンたちの種保存のために活動している。

●編集後記
東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる

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Posted by 五條 at 11:17 | Ocean Newsletter | この記事のURL | コメント(0)
海のジグソーピース No.41 <海洋教育でつながる輪 〜第1回東京都島しょ高校生サミットを見学して〜> [2017年08月02日(Wed)]

 昨年度より始まった全国の学校への海洋教育助成事業である「海洋教育パイオニアスクールプログラム」の活動(以下、パイオニア助成)は序々に知られて広がり、2017年度の仲間は129校になりました。今年は単独校での単元開発部門のほかに、「複数校が共通のテーマのもと連携して行う取組みや、地域のまちづくりや教育計画などに基づいた取組みを支援し、地域規模の海洋教育の普及・推進モデルを開発する」地域展開部門が設けられ、11のグループが展開中です。そのうちの1つに、東京都立八丈高校と小笠原高校が連携して実施している島しょ海洋教育プログラムがあります。このパイオニア助成をもとに、第1回島しょ高校生サミットが7月24−25日に伊豆大島で開催されました。

 このサミットは東京都島しょ高等学校長会が主催し、伊豆・小笠原諸島の都立高等学校7校(小笠原・八丈・三宅・神津・新島・大島海洋国際・大島)から生徒代表20名が集結しました。その目的は、「都立高校生徒が集まり情報交換を行って、各々の島の良さや他校の取組みを理解し、課題の共有とその改善策の協議を通して、今後の活動の活性化を図ること。また、思考力・判断力、課題解決能力を培い、リーダーの在り方を学ぶとともに、島しょ高校生の横のつながりをつくること」にあります。

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大島高校でのサミット開会式

 島しょ高校生サミットは10年前に一度他の助成を受け行われたことがあったそうですが、その後途絶えており、今回このパイオニア助成により小笠原高校を含む7校での初めてのサミットが実現したとのことで、大変感謝されました。一番遠い小笠原からは、4日前に父島を出発し竹芝を経由して大島入り、八丈高校は6時間半をかけて到着(復路は竹芝経由で17時間)、三宅・神津・新島からもそれぞれの航路で大島に来るという行程です。これらの島々は直接の航路では結ばれておらず、事前の打ち合わせも難しい状況の中で、初対面の生徒の皆さんたちは上手にサミットを運営していました。

 初日は大島町役場(橘田副町長)への表敬訪問から始まり、会場の大島高校では各学校の取組み紹介が行われ、共通の課題認識とともに島ごとに特色ある文化について、互いに初めて知ることも多い様子でした。自然遺産の地にある小笠原高校は兄島の固有種を守る自然保護活動やビーチクリーン活動、体育でのウィンドサーフィン授業、八丈では黄八丈というシルク織物にショメ節や八丈方言披露、20年毎に噴火する三宅島でのお茶栽培と7校で唯一の遠泳教室、新島からの一人代表 N君は朝4時起きサーフィンで始まる島の一日を紹介、畝に育てるイモで焼酎をつくり3年後成人式のお祝いにするという話。神津島からはボクシング部の硬派生徒会代表が黒潮祭や島留学を紹介、農林科のある大島高校は広大な敷地につばき園と、玄関前には(三原山の噴火口に落ちた)ゴジラを象った植木があり、海洋国際高校は規律厳しい寮生活と海洋実習の様子を紹介してくれました。火山島として連なる島々の、それぞれ異なる学校生活がありました。懇親会バーベキューの頃になると初対面の緊張は薄れ、小笠原高校のフラダンス披露で会場が和みました。2日目は「魅力ある学校づくり・島づくり」「海洋文化とその発信」といったテーマで、4つのグループに分かれてディスカッションにのぞみ、皆が自分の言葉で発言し、高校生の視点から人口減少・高齢化を緩和するための提案や行政への要望が出されました。

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7校の代表で構成されるグループディスカッションの様子。


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懇親会でのフラダンス披露。首にかけたレイも自分たちで編みました。

 限られた時間の中で、生徒の皆さんがお互いの島のことを知り、そこから自分たちの島の魅力と課題を再発見する様子、課題解決に向けて何か活動を起こそうとする気持ち、島しょ高校生どうしの繋がりができていく様子を拝見して、未来のリーダーたちをとても頼もしく思いました。島しょというフロンティアから生まれる、まさにパイオニアの海洋教育実践なのだと感じました。

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サミット記念撮影。2日間で、以前からの知り合いのようになりました。

 来年の第2回サミットは、返還50周年を記念する小笠原で予定されているそうです。今回も近づく台風が心配されましたが、次回も7校が無事に再会して更に充実したサミットになることを願っています。

 2016年度「海洋教育パイオニアスクールプログラム」参加64 校の取組みについて、実践例をまとめて作成された各校の単元計画がパイオニアスクールWeb 上で公開されています。その中から完成度の高いもの、地域性や扱っている題材の特徴などの観点から抜粋した事例集も出来上がりました。現場の先生や関係者の皆さんのご参考になれば嬉しいです。

海洋教育チーム/海洋政策チーム 中村 修子

海のジグソーピース No.40 <海外出張 in 上海> [2017年07月26日(Wed)]

 本ブログをご愛読のみなさまはよくご存じかと思いますが、当研究所は我が国の海洋政策に係る調査研究事業の推進のみならず、海洋ガバナンスの確立に向けた国際的な取り組みにも積極的に参画しています。そのため、担当役員以下研究員の海外出張の頻度は、他の企業や団体よりも多いのが特徴です。ということで、本来我が国における海洋政策の調査研究を担当している私も海外出張することがたまにあり、先日は上海に出張しました。

 今回の出張では、上海社会科学院(Shanghai Academy of Social Sciences)を訪問し、金永明先生(法学研究所研究員)をはじめとした同研究所所属の研究者のみなさんと意見交換をしました。上海社会科学院は、1958年に上海市政府によって設立され、北京以外にある研究機関として中国国内で最古かつ最大級の人文・社会科学系の研究機関です。また、今回お会いした金先生は、2006年度に当研究所の前身である海洋政策研究財団が実施した「中国の海洋政策」事業において、現在でも我が国唯一とも言える報告書『平成17年度 中国の海洋政策と法制に関する研究(海洋政策と海洋の持続可能な開発に関する調査研究―各国の海洋政策の調査研究報告書)』の主たる執筆者として参画して頂き、中国における先駆的な海洋法研究者として、当研究所とは大変ご縁のある研究者のお一人です。

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上海社会科学院の概観(著者撮影)

 意見交換では、習近平政権下での海洋政策と海洋関係組織、一帯一路構想(Belt and Road Initiative)(※)の位置づけなどを踏まえた質疑応答やディスカッションなどを実施しましたが、@一帯一路構想が相手国とのwin-win関係を機軸とし、順調に推移していること、A経済投資をはじめとして、二国間関係を構築していくやり方であるが故に投資で避けて通れないリスク負担は止むを得ないこと、などに関する示唆に富むコメントを頂くことができました。

 そして、日中関係が現在、政治的には安定あるいは停滞している状態であるものの、経済的にはまだ発展しうる余地があり、多くの大手日本企業が上海社会科学院や関連する研究機関を訪問し、政治情勢や経済情勢の意見を聴取していることを踏まえると、特に第三国での経済協力ということであれば、日中両国は現状において相互に協力と貢献ができるはずであるとのコメントを頂き、日中関係もまだまだ捨てたものではないという思いを新たにした次第です。

 (業務の忙しさが増すということを差し置いても、)このように海外の研究者を訪ねたり、国際会議への参加などを通じて研究報告や意見交換を行ったりして得られた情報は、日本国内のみでは分からないものばかりであり、何物にも代えがたいものです。また、こうして得られた情報は、当研究所が実施している調査研究事業はもちろん、私自身が取り組んでいる調査研究の展開に大きく貢献しています。ですから、今後も機会があれば、積極的に海外出張に赴き、情報収集のみならず、情報発信に努めたいと思います!!

※一帯一路構想(Belt and Road Initiative):習近平国家主席が2013年に発表したユーラシア各国との経済連携や相互協力の緊密化させることを目指した「シルクロード経済ベルト」構想とASEAN諸国と海上協力を強化し、海洋協力のパートナーシップを発展させることを目指した「21世紀海上シルクロード」構想の総称。この構想は、中国が世界経済の中心的地位を占めていた古代シルクロードの再現を意識したものであり、中国の対外開放新戦略のコアと位置付けられている(出典:動き出した「一帯一路」構想)。

海洋政策チーム 小森 雄太

Ocean Newsletter No.407 [2017年07月20日(Thu)]
 No.407が完成いたしました。

『Ocean Newsletter』は、海洋の重要性を広く認識していただくため、
海洋に関する総合的な議論の場を皆様に提供するものです。 
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《 祝 海洋基本法制定10周年 》

●海洋基本法制定から10年の総括
自民党参議院議員、海洋基本法戦略研究会代表世話人代行◆武見敬三

海洋基本法の制定から10年。同法に基づく海洋基本計画は、第1期、第2期を経て、
いま第3期の策定を迎えている。
ガバナンスを重視してトップダウンとボトムアップの両政策を組み合わせて
実施してきたが、制度を整えても実態が伴わなかった面もあり、残る課題はいまだ多い。
第2期は、具体的な良い計画であったが、実行されずにいるものも多いという課題を残した。
第3期は、各省庁が確実に実行していく計画にしなければならない。

●SDGs達成のための科学技術イノベーションへの期待
政策研究大学院大学副学長、笹川平和財団海洋政策研究所所長◆角南 篤

科学技術イノベーションにより維持可能な開発目標(SDGs)を
達成しようという動きが世界で広まっている。
科学技術イノベーションはわが国の強みとして、国際社会でも期待が集まる。
海洋国家日本として、地球を未来につなげていく維持可能なシステムを、
世界とともに創るための科学技術外交が今、求められている。
また同時に、海にかかわる科学技術イノベーションを誘発するわが国ならではの
エコシステムの構築が急がれる。


●海洋立国としての海洋状況把握(MDA)について

(株)NTTデータ特別参与、(公社)安全保障懇話会代表◆古庄幸一

MDAは2001年の同時多発テロ事件を契機に、国家レベルの問題に影響を与えうる
海洋情報を、関係政府機関で効果的に共有するための仕組みとして米国ではじまった。
その後、MDAは海洋からのさまざまな人為的または自然の脅威に対応するための
情報共有基盤・枠組みとして深化しており、わが国でも領海および排他的経済水域内での
海洋政策・国家安全保障の脅威などが顕在化しており、MDAの構築は喫緊の課題となっている。


●真の日本の重心はどこか?

内閣府・SIP「海のジパング計画」プログラム・ディレクター◆浦辺徹郎

日本の重心はどこか?これまでの計算は陸上のみ対象になっていたが、
海洋国家を自認する日本であれば、領海および排他的経済水域(EEZ)の下の
大陸棚を忘れてはいけないだろう。
海底国土を含めた新たな重心計算から見えてきた課題について考える。

●編集後記
同志社大学法学部教授◆坂元茂樹

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Posted by 五條 at 11:18 | Ocean Newsletter | この記事のURL | コメント(0)
海のジグソーピース No.39 <スタンプラリーを通して東京湾岸をめぐる旅> [2017年07月20日(Thu)]

 いよいよ夏本番に入るということで、本ブログをご愛読の皆さまにこの夏ぜひ訪れていただきたい東京湾の施設についてご紹介したいと思います。

 先日知人を通じて、谷津干潟の日運営委員会および谷津干潟自然観測センターが主催する「東京湾・公園めぐりスタンプラリー」という企画について知りました。この企画は、東京湾の自然を体験できる指定の施設6箇所(*)を期間内(2017年6月1日〜7月17日)にまわり、各施設にてスタンプをゲットするということが目的です。しかも、施設を5箇所まわると素敵なグッズを手に入れられるということもあり、こんなチャンスは逃してはいけない!と思い、同僚を誘って参加してきました。

*施設一覧
習志野市谷津干潟自然観測センター
行徳野鳥観察舎
葛西臨海公園鳥類園
東京都葛西臨海水族園
東京都立東京港野鳥公園
大森海苔のふるさと館

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実際に完成したスタンプシート。

 各施設での滞在時間は非常に短かったものの、施設をまわるごとに、「東京湾ってこんなに広かったんだ」と感じました。特に東京港野鳥公園に着いた時は、物流センターや首都高のすぐ近くにこんなにも広い公園があることにびっくりしました。大都会の音がかすかに聞こえるものの、豊かな自然が感じられる場所でした。また、葛西臨海水族園と同じ敷地の中に広さ約27 haの鳥類園があることも知らず、今回のスタンプラリーを通じて、海を通じた活動とはまた異なる東京湾の楽しみ方があることに気づかされました。

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大森海苔のふるさと館にて。
見る展示物だけでなく、実際の海苔生産を体験できるようなものもありました。


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東京港野鳥公園のネイチャーセンターに向かっている途中。
すぐ外には物流センターがずらりと並んでいます。


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東京港野鳥公園ネイチャーセンターにて。

 最後の訪問先となった谷津干潟自然観察センターにたどり着いたころにはもう閉館間際でヒヤヒヤしましたが、無事スタンプを押し、クリアファイルとボールペンをゲットすることができました。センターの芝原達也副所長をはじめとするスタッフの方々にこの企画に参加した経緯と感想を述べたところ、スタンプラリーの企画について快く説明して頂きました。実はセンターに着いて初めて知りましたが、この企画は芝原副所長を中心に企画・実施されたもので、なんとご自身でスタンプのデザインも担当されたとのことでした。

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スタンプラリー完了とともにゲットしたクリアファイルとボールペン。

 残念ながら今回の企画は7月17日に終了してしまいましたが、今後もこのような企画があれば、ぜひまた参加したいと思いますし、また、東京湾に親しむことを目的とするこの企画は今後の当研究所の活動のヒントにもなると感じました。読者の皆さまにもぜひこの夏、東京湾岸の施設に足を運んでいただくことをお勧めします。そこには今まで知らなかった東京湾があるかもしれません。

海洋政策チーム 高原 聡子

海のジグソーピース No.38 <「船酔いしないように…」新潟からニューヨークへ> [2017年07月12日(Wed)]
 船を乗るのも見るのも好きです。特に計画を立てなくても行く先々でチャンスがあったらフェリーでも子供向けの遊覧船でも何でも乗ります。今年は幸いにも2回ほど乗船の機会があったのでご紹介します。

 今年のゴールデンウイークは新潟市を訪れる機会があったので、まずその様子をお伝えしたいと思います。個人の旅ながら、新潟市に興味を持ったきっかけはなんと14年前の『Ship & Ocean Newsletter(Ocean Newsletterの前身)』第76号に掲載された記事でした。「新潟の舟運―現状報告と将来展望」では、信濃川に水上バスを運行することにより新潟市を往時のように「水の都」に再現したいという夢が紹介されていました。日本のベネチアというイメージを勝手に浮かせながら、それに惹かれていつか見てみたいと思いました。随分の年月が経ちましたが、ようやく行ってみたところ、北陸の「水の都」はゴンドラ船こそありませんでしたが、海に注ぐ大河沿いに出来た都市なので、「水」は至るところで主役になっている印象を受けました。

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信濃川で運行されている水上バス(著者撮影)

 まず、中心街の万代シティから乗船できるので、さっそく「みなとピア」というところに行って、新潟市歴史博物館をゆっくり見回ってみました。そこでは、彫刻、絵画、武器などよくある展示のパターンと違って、縄文時代のシャケの捕獲方法から現代の橋の建設まで「住民と水」との関わりに重点が置かれ、ホログラムなどを駆使してそれぞれの時代の生活基盤が理解できるようになっている展示に感心しました。

 新潟市歴史博物館を後にすると、また船に乗って信濃川の対岸へ渡り、朱鷺メッセを一通り見た後、さらに歩くと江戸時代からある「今代司(いまよつかさ)」という酒蔵にたどり着きました。もともと信濃川と合流した河川に面していて、運搬に利用していましたが、今は大きな道路に埋め立てられています。ツアーに加わり、設備の仕組み、清酒の作り方、そして昔、農民が冬場の長期的泊まり込み作業について丁寧な説明を聞いた後、せっかくなのでお試しに少々の体験学習もしました。

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酒蔵での一コマ(著者撮影)

 今代司から20分ぐらいの万代シティまで行きました。川沿いにある新潟日報メディアシップという膨らんだ巨大な帆を形にしている高層ビルに行きました。その展望台に昇るとまるで船の見張り台から見るように、新潟港、日本海、佐渡、沿岸にある水族館マリンピアを一望できてほっとする時間でした。

 次の乗船はちょうど1ヶ月後のニューヨーク出張のときでした。国連本部で行われた国連海洋会議の一環としてマンハッタン南端沖のGovernors Islandという島で会議を記念するイベントがあり、それに参加するために、また船に乗る機会に恵まれました。マンハッタンと周りの地区と効率よく結ぶ通勤用のフェリーでしたが、摩天楼を一目に収めるには格好な乗り物です。国連に一番近い乗り場から、3カ所ぐらい寄港しても40分ぐらいで当島に着くので、刺激あふれるマンハッタンを一休みしたいときにお勧めのコースです。

 東京に戻ってから陸上での生活ばかりですが、以前、当財団の関係者と納涼クルーズに参加させていただいたことがあります。東京湾のさざ波に揺れながら平和を考えるのもいいかも知れません。プレミアムフライデーにいかがでしょうか。

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Governors Islandでの一コマ(同行者撮影)

海洋政策チーム ジョン A. ドーラン

海のジグソーピース No.37 <寺島紘士所長の退任に思うこと> [2017年07月05日(Wed)]

 15年間にわたって海洋政策研究所を牽引されてきた寺島紘士所長が、6月29日をもって笹川平和財団理事の任期満了に伴い退任され、同時に海洋政策研究所の所長職を退かれました。生き字引(失礼!)である寺島さんの退任によって、研究所は一つの節目を迎えたことになります。(退任されたいま、親しみと敬意を込めて、あえて「さん」付けで呼ばせていただきます)

 周知のとおり日本の海洋政策はこの20年間で大きく進展しましたが、その過程で民間セクターが果たした役割が非常に大きかったことがひとつの特徴と言えます。その中心にあって政策研究と実務を支えていたのが寺島さんであったと言っても過言ではないと思います。

 私は、寺島さんがまだ日本財団の常務理事をされていた2000年当時、縁あって日本財団に2年間出向する機会を得ました。ちょうど日本財団が海洋のガバナンスとは何なのか、日本で海洋管理を実現させるにはどうすればよいのか、という課題について取り組みを本格化させた頃です。寺島さんが中心となって有識者を集めて研究会を立ち上げ、2年に亘る議論のすえその成果を政策提言としてとりまとめたことを、まだ最近のことのように覚えています。私は偶然にも日本の海洋政策研究の黎明を目の当たりにする幸運を得たわけですが、恥ずかしながら、私はこうした取り組みを部下の一人として手伝いながらも、それが海洋基本法の制定にまでつながるとは当時想像もしていませんでした。

 そのあと私は出向から戻ったのですが、わずか半年後の2002年8月に寺島さんはシップ・アンド・オーシャン財団海洋政策研究所所長に就任され、再び私の上司となりました。結局、2000年から2017年までの17年間、私はずっと寺島さんの下で働いていたことになります。

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※海洋管理研究会での寺島さん(2000年)。お若い!


 寺島さんの仕事の取り組み方は丁寧で緻密。国連海洋法条約とリオ宣言を基軸とした海洋の総合管理の考え方は首尾一貫していて、私が仕えた17年間まったくブレることがありませんでした。すべての説明がまずここから入ることは、寺島さんと一緒に仕事をした人ならばご存知でしょう。この一貫した姿勢と信念こそ、海洋基本法制定といった大きな目標を実現するうえで重要な原動力となったことは間違いありません。このたびの退任で、UNCLOSとアジェンダ21から始まる寺島節を聞く機会が少なくなってしまうのは何とも寂しい気がします。

 寺島さんはひきつづき笹川平和財団の参与として残られ、海洋政策に関する本を執筆されると聞いています。おそらくはわが国の海洋政策の萌芽から発展に至る10年、そして海洋基本法制定後の10年、という20年にわたる日本の海洋政策の歩みがつまびらかにされることでしょう。きっと、それは内外の海洋政策研究者にとって貴重な資料となるはずです。

 海洋政策研究所は角南篤所長のもと、新たなスタートを切りました。これまで培った知見を生かしつつも、時代の変化にしっかりと対応し、今後100年先の海洋のことを考える長期的かつ俯瞰的な視野を持った海洋のシンクタンクとして進化すべく、組織の改革と強化を進めているところですので、皆様からの変わらぬご指導ご鞭撻をよろしくお願いいたします。

 最後にあらためて、わが研究所が誇るMr.海洋政策、寺島さんの長年にわたるご功労に敬意を表して心から感謝申し上げるとともに、これからもお元気でご活躍されますことをお祈りいたします。本当にお疲れ様でした。

海洋事業企画部長 酒井 英次

Ocean Newsletter No.406 [2017年07月05日(Wed)]
 No.406が完成いたしました。

『Ocean Newsletter』は、海洋の重要性を広く認識していただくため、
海洋に関する総合的な議論の場を皆様に提供するものです。 
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●海と生命を宇宙に探る
東京大学大学院理学系研究科准教授◆関根康人

太陽系天体には、液体の海を有する(あるいは過去に有した)ものが
複数存在していることが明らかになっている。
近年では、これら地球外海水のサンプリングとその場分析も行われ、
宇宙に海と生命を探る新時代が幕を開けている。
ここでは、土星の衛星エンセラダスに着目し、地下海に関する探査結果や
生命存在可能性に関する議論を紹介する。

●生産者の視点からの「国際資源管理認証」
宮崎大学産学・地域連携センター講師◆大元鈴子

国際資源管理認証は、国際的に取引される資源の持続可能性という
「ユニバーサルな価値」を流通させることを目的としている。
そもそも認証制度とエコラベルは、資源を消費する側、すなわち
消費者と企業の持続可能な選択を助けるツールとして設計されている。
資源管理のための認証制度というコンセプトが世に出て20数年たつが、
本稿では、生産者の視点からみた国際資源管理認証の積極的な
活用方法について紹介する。


●「ライフセーバー」が守るビーチの安全と将来への展望

NPO法人日本ライフセービング協会一般会員◆小山隆彦

多数の遊泳客でにぎわう海水浴場の安全を確保するため、
全国各地で、「ライフセーバー」と呼ばれる民間の有志が活動している。
地方公共団体や沿岸域住民と密接な関係にあるその取り組みは、
万が一の事故・災害等に即時対応するうえで大きな意義を有し、
言わば「公共的使命」を帯びている。
他面、この活動はライフセーバー自身の生命身体にとっても潜在的危険を
伴うものであり、海水浴場関係者は、法令等も踏まえ適切な安全確保体制を
不断に追求すべきだと言える。

●編集後記
東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる

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Posted by 五條 at 11:41 | Ocean Newsletter | この記事のURL | コメント(0)
海のジグソーピース No.36 <海に向かって上る坂道> [2017年06月28日(Wed)]

 吹く風も次第に夏めいてきて、いよいよ海開きの季節です。そこで、私の前回のブログに引き続き今回も浜辺に関する話題を一つ。今回のタイトルは、「海に向かって上る坂道」です。

 違和感のある日本語のようにも聞こえますが、実際に海水浴などの際に海に向かって歩くときに注意深く観察するならば、浜辺に近づくにつれて道が少し上り坂になっていることに気づくことがあるかもしれません。また、WEBで「“海に向かって上る坂道”」と入力して検索を行うと、NHKの人気の地形番組がヒットしますので、あながち間違った日本語表現でもなさそうです。そして、もし浜辺に向かう坂道を見つけたら、あなたが立っているその場所は、かつて砂丘が存在していた場所かもしれません。

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写真1:海に向かって上る坂道(若狭和田海水浴場、福井県高浜町)(著者撮影)
※写真の奥側が海岸で、民宿街から海に向かうなだらかな上り坂。

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写真2:砂丘を造成して整備した駐車場(若狭和田海水浴場、福井県高浜町)(著者撮影)
※写真の奥側が海岸で、砂浜に降りるまでは急な下り坂。

 国内で砂丘(Sand Dune)といえば、「鳥取砂丘」を思い浮かべる方が多いと思います。砂丘は、戦後まもない頃までは日本でも比較的いろいろな地域で見られた自然地形でしたが、戦後の食糧増産・工業化に対応して沿岸部の耕地化や開発が進んだ結果、消失が続いて今日ではその存在すら危ぶまれています。

 砂丘を擁する鳥取県では砂丘条例が制定され、京都府では府のレッドデータブックに久美浜砂丘(京丹後市)が絶滅危惧地形として指定されるなど、砂丘の保護に向けた様々な取り組みが進められています。また、砂丘保全の問題はわが国だけでなく、米国カリフォルニア州のオセアノ砂丘(Oceano Dunes)やフランス大西洋岸のピラ砂丘(La Dune du Pilat)などでも同様にあり、土地トラスト運動や自然保護区化を進めたり、開発規制、外来植物の侵入による草原化を防ぐなどして、海岸から風で陸地に吹き上げられた砂が自由に移動できる砂丘環境を保つための努力が、地道に続けられています。

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写真3:海に向かって上る坂道(鳥取砂丘入口、鳥取県鳥取市)(著者撮影)
※写真の奥側700m先が海岸で、海岸まで上り坂が続く。

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写真4:砂丘の頂上(鳥取砂丘、鳥取県鳥取市)(著者撮影)
※頂上は海抜50〜60m程度あり、海側は急斜面の下り坂。

 さて、日本に目を転じ、戦後復興を遂げたわが国の砂丘をとりまく政策の流れを振り返ると、戦後の農業生産や防災を目的とした農地森林政策(海岸砂地地帯農業振興臨時措置法:1953年制定、1971年失効)や、工業化を支える工場・港湾・高速道路・住宅地の整備など国土開発政策が進められる中で、多くの砂丘が消失してきたことが過去の航空写真や文献などからもわかります。また、ダムや港が造られたことによって、本来、山・川・海を通じて陸地に吹き上げられるはずの砂の供給が極端に減少したことも見逃すことができない潜在的な原因となっています。

 しかし、砂丘を形成する力である「波と風」は、昔とまったく変わらず今も陸に向かって働き続けています。このことから冒頭で紹介したような「海に向かって上る坂道」がある町を見つけた際には、途中で止まらずに是非とも波打ち際まで歩き続けてみてください。山や川が削られて海岸に流れついたごくわずかな砂が、今も昔と変わらずに働く波と風の力によって陸地に吹き上げられ、汀段(後浜)や小さな砂丘を形成している場所を発見できることでしょう。またそこでは、砂浜固有の植物(砂草)、昆虫、風紋(風が作る砂の模様)や、極まれに上陸したウミガメの足跡などを見られるかもしれません。

 今回のブログでは、記事のネタに悩みながらも、「海に向かって上る坂道」から「砂丘」をテーマに、海洋政策を考える上での「海と陸」を一体的に捉える重要性について迫ってみました。文末におすすめの海岸砂丘のリスト(Google Mapリンク)を記しました。衛星写真やストリートビューモードでご覧いただくことで、砂丘・自然の波と風の様子を感じていただければと思います。また、この夏のお出かけの際に、もし機会があれば、砂丘にも足を運んでみてはいかがでしょうか。今までとは一味違った自然の姿を感じることができるかもしれません。それではみなさま、よい夏をお迎えください。

■砂丘の形成がみられる代表的な海岸
1) 中田島砂丘:静岡県浜松市
www.google.com/maps/place/34°39'39.5"N+137°44'36.2"E
2) 鳥取砂丘:鳥取県鳥取市
www.google.com/maps/place/35°32'28.1"N+134°13'44.6"E
3) 久美浜砂丘:京都府県京丹後市
www.google.com/maps/place/35°38'43.1"N+134°55'02.8"E
4) 辻堂海水浴場(砂丘跡地):神奈川県藤沢市
www.google.com/maps/place/35°19'07.0"N+139°27'10.3"E
5) 若狭和田海水浴場(砂丘跡地):福井県高浜町
www.google.com/maps/place/35°29'30.6"N+135°34'27.2"E
6) オセアノ砂丘自然保護区:米国・カリフォルニア州
www.google.com/maps/place/35°03'56.3"N+120°37'13.6"W
7) ピラ砂丘:フランス・ジロンド県
www.google.com/maps/place/44°35'48.4"N+1°12'33.6"W

■砂丘・海岸林・砂浜について考える上で役立つ書籍・論文
1) 小田隆則「海岸林をつくった人々〜白砂青松の誕生〜」(北斗出版、2003年)
2) 太田猛彦「森林飽和〜国土の変貌を考える〜」(NHK出版、2012年)
3) 宇多高明「海岸侵食の実態と解決策」(山海堂、2004年)
4) 重見之雄「海岸地域の利用と変貌」(古今書院、2000年)
5) 寳金敏明「里道・水路・海浜〜長狭物の所有と管理〜」(ぎょうせい、2003年)
6) 塩入同「海水浴場の汚水処理に取り組む地方自治体に見る縦割り行政の総合化に関する研究」『沿岸域学会誌』第29巻第3号29‐43頁(2016年)

■参照したウェブサイト
1) 塩入同「海のジグソーピースNo.12<湘南海岸の冬支度―海岸管理という仕事―>」2016年
http://blog.canpan.info/oprf/monthly/201612/1
2) NHK「ブラタモリ#45〜新潟は“砂”の町!?〜」2016年
http://www.nhk.or.jp/buratamori/map/list45/fullscreen_all.html
3) 鳥取砂丘情報館「とっとり砂丘王国〜砂丘みどころ完全ガイド〜」2016年
http://site5.tori-info.co.jp/p/sakyu/guide/spots/find/
4) 京都府「京都府レッドデータブック」2015年
http://www.pref.kyoto.jp/kankyo/rdb/
5) 鳥取県「鳥取沿岸の総合的な土砂管理ガイドライン」2005年
http://www.pref.tottori.lg.jp/73976.htm
6) 神奈川県「相模湾沿岸海岸侵食対策計画〜美しいなぎさの継承をめざして〜」2011年
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f160298

海洋政策チーム 塩入 同

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