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海洋政策研究所ブログ

海洋の総合管理や海事産業の持続可能な発展のために、海洋関係事業及び海事関係事業において、相互に関連を深めながら国際性を高め、社会への貢献に資する政策等の実現を目指して各種事業を展開しています。


Ocean Newsletter Selected Papers No.23(英文版) が公開されました [2019年02月21日(Thu)]

 笹川平和財団海洋政策研究所が発行している『Ocean Newsletter』の中から、20号ごとに海外からも関心の高いと思われる原稿を選定し、英訳したものを『Ocean Newsletter Selected Papers』として発行しております。

 この度、Ocean Newsletterの411号(2017年9月20日発行)から430号(2018年7月5日発行)の中から11件の記事を選定し、『Ocean Newsletter Selected Papers No.23』として発行しました。

 『Ocean Newsletter Selected Papers No.23』はこちらからダウンロードすることができます。ご一読いただければ幸いです。

No.23.PNG
Ocean Newsletter Selected Papers No.23 表紙

Selected Papers.PNG
Ocean Newsletter Selected Papers No.23 プレビュー


【タイトル/著者一覧】
Discussion: Innovation to Overcome the Dangers Facing Our Oceans
Yohei Sasakawa
Chairman, The Nippon Foundation
Atsushi Sunami
President, Ocean Policy Research Institute of the Sasakawa Peace Foundation (OPRI-SPF) / Executive Director, The Sasakawa Peace Foundation

CCS Demonstration Project Offshore Tomakomai
Yutaka Tanaka
General Manager, Technology and Planning Department, Japan CCS Co., Ltd.

The Fire of Rice Sheaves and its Connection to World Tsunami Awareness Day
Koichi Sakiyama
Director, Inamura-no-Hi no Yakata

Ama Divers are Incredible!
Yoshikata Ishihara
Director, Toba Sea-Folk Museum

Hosting of the Coast Guard Global Summit (CGGS) −Towards the Maintenance of International Maritime Order−
Kentaro Furuya
Associate Professor (joint appointment), National Graduate Institute for Policy Studies (GRIPS) / Japan Coast Guard Academy

What Recovery Means for Us −Thoughts Following Production of the Film “Fukushima Fishermen”−
Toru Yamada
Film Director

The United Nations University's “Noto Satoumi Movement” −Connecting Japan's Coastal Management to Global Ocean Problems−
Evonne Yiu
Research Associate, United Nations University Institute for the Advanced Study of Sustainability (UNU-IAS)

The Roadmap to Oceans and Climate Action Initiative
Biliana Cicin-Sain
President, Global Ocean Forum (GOF) / Professor, University of Delaware
Meredith Kurz
Formerly Assistant to the President of GOF

Drug Resistant Bacteria in our Oceans: Where did they come from and where will they go?
Satoru Suzuki
Professor, Center for Marine Environmental Studies, Ehime University

Guideline for Consensus Building Regarding Use of the Oceans: Towards the Creation of “Marine Spatial Planning”
Yutaka Michida
Professor, Atmosphere and Ocean Research Institute, The University of Tokyo
Tatsuro Suwa
Project Associate Professor, Graduate School of Public Policy, The University of Tokyo

Putting “Dreams and Spirit” into Shrimp Crackers
Toshio Mitsuda
President and Representative Director, Keishindo Corporation

Posted by 高原 at 11:00 | Ocean Newsletter | この記事のURL | コメント(0)
Ocean Newsletter No.445 [2019年02月21日(Thu)]
No.445が完成いたしました。

『Ocean Newsletter』は、海洋の重要性を広く認識していただくため、
海洋に関する総合的な議論の場を皆様に提供するものです。 

********************************
●未来の海洋はロボットで切り拓く〜海中ロボットの複数利用がひとつの鍵〜
(国研)海洋研究開発機構 海洋工学センター 海洋基幹技術研究部 部長◆吉田 弘

海は残された産業フィールドであり、地球環境問題のオリジンでもある。
わたしたちはもっと海を知るべきであり、海を知ろうとする活動を通じて、
未来に向かってやるべきコトの答えを得られるのではないか。
筆者は専門分野である海洋ロボットをソリューションの一つとして提案し、
その重要性、これまでと今後やるべきことについて説明する。


●韓国海洋産業の現状と海洋金融教育の本格化
韓国海洋大学教授◆Yong Sik OH

世界の海運産業は大不況に見舞われており、韓国の海運産業も大きな影響を受けている。
海運は経済と金融に詳しくなければならないし、金融は海運を深く理解しなければならない。
中長期的に海運産業の再建は、何よりも海運と金融の融合知識に根拠を置くべきであり、
韓国海洋大学に海洋金融大学院が設立されたことは、韓国海運にとっては喜ばしい出来事であると考える。


●知られざる「海を耕した政治家」の業績
鹿児島県立短期大学教授◆福田忠弘

「海を耕した政治家」と称される原耕衆議院議員の足跡について紹介したい。
1876年に鹿児島に生まれた原は、鹿児島県枕崎市がかつお節生産量日本一になる
基礎を築いたほか、 南洋漁場開拓事業を行い、インドネシアのアンボンに、
日本にはかつお節を、欧米には缶詰を輸出する一大漁業基地を建設した。
現地の人々にカツオ漁・マグロ延縄漁の方法を教えるなど、 戦前において水産業を
通じて国際貢献を行った彼の功績を広く伝えたい。


●編集後記
同志社大学法学部教授◆坂元茂樹


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Posted by 五條 at 10:46 | Ocean Newsletter | この記事のURL | コメント(0)
海のジグソーピース No.118 <「海とヒトの関係学」シリーズ刊行にさいして> [2019年02月20日(Wed)]

海の問題をどう読み解くか

 平成最後の年が幕を開けました。この31年の間、世界は大きく変わってきた、という思いをお持ちの方も多いでしょう。今後、世界はどう動くのでしょうか。私たちは、海をめぐる問題から、世界を考える点に基軸をすえていろいろと考えてきました。
 現在、地球温暖化と異常気象、海洋酸性化、乱獲と生物多様性の減少、海洋プラスチックゴミなど、海に関連した由々しい問題が連日のようにメディアで報じられています。ただし、個別の問題が報じられても、より包括的な視点から未来を見据えた議論は出版事情からも読者に十分な理解をえられないままに推移しているといっても過言ではありません。本企画はその点で先駆性と時代性をふまえたものです。

オピニオン誌の蓄積を集約する

 本シリーズは、海洋政策研究所がこの19年、発信をつづけてきた『Ocean Newsletter』の論考を中心として編集し、重要なテーマを元にその意見を論集として集約したものです。すでに Ocean Newsletter は平成12年8月の発行以来、445号を迎えます。1号あたり3本の論を掲載し、かかわった執筆者は創刊以来、のべ1,300名以上になります。
 海とヒトとが関わる分野はそのすそ野が広く、安全保障や国境紛争などの政治面から、船舶、造船、運輸、エネルギー問題、水産業、災害、教育や文化、歴史に至るまでの多様な話題があります。Ocean Newsletter では、時代やその時々のホットな問題を発信し、読者とともに海を考える姿勢を貫いてきました。
 海外からの投稿、読者のオピニオンなども含め、海洋政策から地域振興、教育現場までに関わる執筆者をお招きできました。その成果として、海を考える人材ネットワークを開発し、たがいに連携する努力を積み上げることができました。執筆にご貢献いただいた諸氏に心から感謝する次第です。
 この実績を踏まえて、今回の単行本シリーズ案が浮上しました。Ocean Newsletter の編集代表を初代の中原裕幸氏・來生新氏を継承し、山形俊男氏とともに12年間務めたこともあり、私は本シリーズ発刊の編者として海洋政策研究所の角南篤所長と編集作業を担当しました。
 Ocean Newsletter では執筆者だけでなく、外部の編集委員の貴重なご助言や海洋政策研究所のスタッフの尽力があったことは言うまでもありません。今回は、西日本出版社の内山正之社長と編集担当の岩永泰造氏の絶大なご協力をいただき、刊行にこぎつけることができました。厚くお礼を申し上げます。

海とヒトの関係の未来に向けて

 本シリーズでは、海とヒトの関係性を軸として、特定のテーマを元に構成することとしました。第1巻では「日本人が魚を食べ続けるために」、第2巻では「海の生物多様性を守るために」と題して、読者各位へのメッセージを強く押し出すようにしました。なお、執筆者は Ocean Newsletter にご執筆いただいた方がたであり、若干の論を新規に執筆いただき構成しました。
 海洋政策をモットーとする本書の性格から、単なる論集ではなく、今後の海とヒトとのよりよい関係性に資する議論を提示していただくよう編集面でご助言いたしました。日本の海洋政策、海洋教育、地域振興のありかたなど、多面的な政策上の問題を読み取っていただけるよう編集に最大限の配慮をいたしました。まだまだ不備な点、不十分な点がありましょう。読者各位の忌憚ないご意見をいただければと考えております。
 来年度には第3巻として「海はだれのものか」(仮)をテーマにすえ、すでに準備を整えつつあります。本シリーズを通じて、日本の海洋政策の推進や、よりよき海との関わりを構築する上での一助となれば幸いです。本シリーズを海の入門書としてぜひともお勧めいたします。

海洋政策研究所特別研究員 秋道 智彌


秋道1.png
「海とヒトの関係学」シリーズの表紙
(クリックして拡大)


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「海とヒトの関係学」シリーズ刊行について
(クリックしてPDFを表示)

海とヒトとの関係学シリーズ 2019年2月19日発行
第1巻「日本人が魚を食べ続けるために」(西日本出版社 ISBN978-4-908443-37-4)
第2巻「海の生物多様性を守るために」(西日本出版社 ISBN978-4-908443-38-1)
*書店にてお求めいただけます。

海のジグソーピース No.117 <ペク国際海洋法裁判所(ITLOS)所長講演会が開催されました> [2019年02月15日(Fri)]

 2019年2月14日(木)、当財団ビルで国際海洋法裁判所(ITLOS:International Tribunal for the Law of the Sea)所長のペク(白珍鉉)判事をお招きした特別講演会が開催されました。ITLOSは国連海洋法条約に基づき、主に同条約の解釈・適用に関する紛争の司法的解決を任務として1996年に設立された、ドイツのハンブルクにある裁判所です。日本もみなみまぐろ事件(1999年)や第88豊進丸事件、第53富丸事件(2007年)で訴訟の当事国となったことは記憶に新しいところです。ちなみに、今回の特別講演会は、2月13日には山田賢司外務大臣政務官(詳細はこちら)と、2月14日には河野太郎外務大臣(詳細はこちら)とそれぞれペク所長が意見交換を行うというハードスケジュールを縫っての開催となりました。

 さて、特別講演会では、ペク所長からは以下のようなお話がありました。
 「ITLOSには主に2つの機能がある。ひとつは個別の紛争を解決すること、または勧告的意見を与えることであり、もうひとつは国際法の発展に寄与することである。ITLOSには21人という他の国際裁判所または国内裁判所にも例をみないほど多数の裁判官が所属しており、特定の紛争を扱うためのいくつかの裁判部から構成されている。

 深海底の制度を規定する国連海洋法条約第11部の下での紛争等については、裁判手続きは国家以外の主体(民間の開発事業者等)にも開放される(これまでにそのようなケースは存在しない)。そのような紛争を扱う海底紛争裁判部(Seabed Disputes Chamber)は、排他的な管轄権を有しており、裁判所長をはじめ他の裁判部からのいかなる干渉も受けない。

 ITLOSはまた、個別の紛争を解決することに加え、より一般的に、国際法の発展に寄与してきた。そのような傾向は特に、@船舶がかかわる紛争における船舶の早期釈放(prompt release)の要件や保証の基準などの明確化、A海洋境界画定紛争における考慮要素の明確化、B海洋生物資源保全をめぐる紛争における国際環境法上の原則(予防原則など)の発展、という3つの点で顕著である。他方で、ITLOSと管轄権が競合する他の裁判(国際司法裁判所での裁判や仲裁裁判など)で異なる法が発展せられる場合、国際法の分断(fragmentation)という状況が生じうることも懸念される。

 最後に、法の支配(rule of law)は主に国内法の下で実現されうるものとされてきたが、次の3つの条件が存在すれば、国際法の下でも実現可能であると考えている。ひとつは十分に確立された法体系、二つ目にそれらを実施する制度的基盤、三つ目に国際共同体の積極的な姿勢である。」

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ペク所長の講演

 会場の参加者からは、個別の紛争を解決することと国際法の一般的発展に貢献するという、一見して相反する要請の間で、実際にどのような妥協が図られているのかといった質問や、ITLOSの下で国家以外のプライベートな主体が紛争手続きにかかわるといった実行が、他の紛争解決手続きにどのような影響を与えるかといった質問、さらにITLOSが関与した個別の紛争に関する質問が提起され、活発な意見交換がなされました。

 最後に、ペク所長からは日本政府と日本財団がITLOSに行っているさまざまな支援に対する謝辞がありました。わたしたちも、海洋生物資源の保全をはじめ海洋の持続可能な利用について研究成果を発信する研究所として、どのように法の支配の確立に貢献していくべきか、改めて考えるよい機会となりました。

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ペク所長(中央)と関係者(柳井俊二 ITLOS前所長(元駐米大使)(左端)、
酒井英次 OPRI海洋事業企画部長(特別講演会司会進行)(右から2人目)、
東海林郁夫 外務省国際法局海洋法室課長補佐(右端))の集合写真

海洋政策研究部 村上 悠平

海のジグソーピース No.116 <ブルーエコノミーの最前線 ―カキ養殖事業立ち上げに注目して―> [2019年02月08日(Fri)]

 この数年、笹川平和財団海洋政策研究所が推進している取り組みの1つにブルーエコノミーがあります。当研究所として、ブルーエコノミーとは、「意識改革や技術革新を通して、多くの利害関係者が協働することで海洋に関する生態系基盤・社会基盤を持続可能な形で利用し、それにより対象となる産業やサービスが振興され、結果として地域の人々の福祉を向上する」ものと考えています。今回のブログでは、当研究所が取り組んでいる調査研究とは違う、ブルーエコノミーの実務を担う方々の取り組みを少しご紹介したいと思います。

*ブルーエコノミーの詳細につきましては、こちらの報告書もあわせてご参照ください。

 先程ご紹介した報告書でも指摘していますが、ブルーエコノミーを担う産業の中でも、養殖を含む漁業は重要な存在です。和歌山県海南市には、私が以前から親交のある漁協組合があります。先日、旅行で訪れた際には、養殖場での作業や販売店での取り組みなどを見学させていただく機会があり、まさにその重要性を実感しました。海南市では地域活性化に関する取り組みとして、過疎が進む地元の新しい産業の名物に育てようと、数年前からカキ養殖に関する取り組みが進められています。海南市の漁協や和歌山県の農水課担当者らが、日本全国のカキ養殖場を訪ねての実地調査や湾内での養殖実験を繰り返し経て、2018年9月に外洋での本格的な養殖を開始しました。

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養殖場の様子

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出荷を待つカキ

 カキ養殖というと全国シェア1位の広島県が有名で、2018年では全国158,925tのうち、60.2%のシェアとなっています。2位は宮城県の12.0%、3位は岡山県の9.7%と続き、和歌山県は6tで24位の0.0037%となっています。これまで主流になかった海産物を養殖するという、とてもめずらしい取り組みは注目されており、最近ではテレビや全国紙にその取り組みが取り上げられたりしています。

 しかし実は、1位の広島県の養殖のルーツは和歌山県にあったという説があります。江戸時代に当時の藩主であった浅野長晟(1586年〜1632年)が紀伊和歌山藩から安芸広島藩に移封された際に、カキ養殖の技術が導入されたそうです。ですから、(既に実践されていますが)歴史的にも和歌山県でカキ養殖は十分可能であることがわかっています。

 今回は旅行で訪問したのですが、私も海洋政策研究所でブルーエコノミーを含む海洋政策に関するさまざまな調査研究に携わっていますので、これからもこのような取り組みをされている皆さんをぜひご紹介したいと思います。なお、今回ご紹介した地域活性化を目指した新しい養殖への取り組みについては、後日当研究所が発行している『Ocean Newsletter』でも改めて詳しくご紹介致しますので、ご期待下さい。

客員研究員 五條 理保

Ocean Newsletter No.444 [2019年02月06日(Wed)]
No.444が完成いたしました。

『Ocean Newsletter』は、海洋の重要性を広く認識していただくため、
海洋に関する総合的な議論の場を皆様に提供するものです。 

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●沿岸漁業と協働する浅海域の海底地形モニタリング
豊橋技術科学大学大学院工学研究科助教◆岡辺拓巳

海岸の環境問題や沿岸防災、国土保全にとって、浅い海域の地形情報は欠かすことができない。
そこで、沿岸漁業と協働して漁船の操業中の位置や水深情報を大量に集めることで、
広域の海底地形データを低コストで生成する手法を開発してきた。
沿岸域の環境保全において、ビッグデータを活用するモニタリング技術は大きな可能性を秘めている。


●世界に誇れる松島“湾”ダーランドの創造
宮城県松島町産業観光課課長◆安土 哲

松島湾は、2013年に日本で初めて「世界で最も美しい湾クラブ」に加盟、それを契機として
宮城県と松島湾エリアの3市3町が一体となって観光振興を目指している。
東日本大震災より8年近くが経過し、松島湾ダーランド構想のもとで観光振興や環境保全に
取り組める土壌ができ上がりつつある。
今後もこれまでの取り組みをブラッシュアップしながら継続し、湾を取り巻く環境の保全と
観光振興に取り組みたい。


●東京オリンピック・パラリンピックに向けてホテルシップをレガシーに
〜大型クルーズ船のさらなる活用〜
(一財)みなと総合研究財団クルーズ総合研究所副所長◆石原 洋

ホテルシップとは、クルーズ船を一定期港湾に停泊させて宿泊施設として活用するものである。
政府では、東京オリンピック・パラリンピック競技大会時に、東京およびその周辺地域に
おける宿泊施設の供給を十分に確保する一つの方策として、2017(平成29)年6月、
関係行政機関等からなる「クルーズ船のホテルとしての活用に関する分科会」を設置し、
必要な制度改正等を行なった。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会のレガシーとしてクルーズ船のさまざまな
活用が期待されている。


●編集後記
東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる


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Posted by 五條 at 00:00 | Ocean Newsletter | この記事のURL | コメント(0)
海のジグソーピース No.115 <海洋資源と持続可能な開発 ―ブルーエコノミーは海と海と暮らす人々を救うのか?−> [2019年01月31日(Thu)]

 平成最後の年となった2019年もはや1か月。昨年末の改正漁業法の成立や国際捕鯨委員会(IWC:International Whaling Commission)からの脱退など、日本の海洋政策に注目している海外の研究者からは年末から年明けにかけてさまざまな問い合わせを受けました。亥年の2019年はどんな年になるのでしょう?昨年末から続くトランプ大統領によるアメリカ政府機関の閉鎖は、アメリカからの海外送金が重要な外資となっている途上国の経済政策担当者の悩みの種となっています。アメリカ経由でアフリカからの会議参加者の招聘を準備していた知人からは、さっそく、アメリカ政府機関閉鎖のとばっちりを受けたとのぼやきを聞かされました。トランプ大統領が1月25日に暫定予算の執行を認めたとはいえ、この問題は予断を許さない様相に思えます。

 昨年末、アメリカの経済紙『フォーブズ』は「2019年ビジネス最適国ランキング(The Best Countries for Business 2019)」を発表しました。翌年の経済見通しを占う話題としてよく毎年取り上げられています。今回のランキングでは、EU脱退で揺れたものの、その自由でグローバルな経済取引環境や効率性を背景にイギリスが1位を維持し、これにスウェーデン、香港が続きました。16位の韓国、17位のアメリカの後塵を拝して日本は19位でした。このフォーブズのランキング、年の瀬とともに聞き流されてしまうのかと思いきや、年明けに目にすることになりました。年が明けた2019年1月7日、モーリシャス・テレコム(Mauritius Telecom)はモーリシャスがアフリカ諸国の中ではフォーブズのビジネス最適国ランキングで1位(全世界では39位)となったとこの発表を大きく報じました(詳しくはこちらをご参照ください)。インド洋西部に位置し、人口約130万人の狭隘な島嶼国が南アフリカ(59位)、モロッコ(62位)を抑えて、なぜ1位にランクインしたのでしょうか?モーリシャス・テレコムは、その要因にスマートシティといった効率性の高いまちづくりや再生可能なエネルギー利用などと並んで、「海洋経済(Ocean Economy)」を挙げました。

 つい数日前の1月26日、フォーブズは「私たちの海洋を再考する:ブルーエコノミーへの投資に向けて(Rethinking Our Oceans: Investing in the Blue Economy)」と題した論説を掲載しました。観光、水産業、海洋再生可能なエネルギー、バイオテクノロジーなど、海洋資源を利用した経済活動、いわゆる「ブルーエコノミー」は2030年までその他の経済分野の倍に相当する率で成長するとの予測を示し、セーシェルが海洋保全を目的とした世界最初の国債を発行したことや、パラオが領海や自国の排他的経済水域の8割を禁漁とし、高付加価値のある観光を推進していることなど、小島嶼国の海洋を舞台とする先進的な政策が注目されていると述べています。その上で、世界の海洋全体が提供しうる経済的価値は世界第7位の国家経済規模に相当するとして、ブルーエコノミーの可能性を示唆する一方、海洋プラスチックがその成長阻害要因になりうると警鐘を鳴らしています。

 このブルーエコノミーは、2017年の国連海洋会議でも「海洋基盤経済(Ocean-based Economies)」としてその推進が提唱され、2018年11月26〜28日にはケニア・ナイロビで「持続可能なブルーエコノミーに関する国際会合(Sustainable Blue Economy Conference)」が開催されました。この会議には、ケニアのケニアッタ大統領の他、モザンビーク、セーシェル、ソマリア、ウガンダ、タンザニア、ナミビアの大統領などの国家元首7名や84名の閣僚など約1万6千人が参加し、世界ではじめての大規模なブルーエコノミーに関する国際会議として注目されました。笹川平和財団海洋政策研究所からは、私と同僚の渡邉敦主任研究員が参加し、私は食料安全保障と持続可能な水産業に関するセッションでの司会を務め、渡邉さんはナイロビ大学での研究会でブルーカーボン(アマモを通じた炭素貯留)と地域経済振興について発表を行いました。

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「持続可能なブルーエコノミーに関する国際会議」の会場にてソロモン・カランジャ・マイナ駐日ケニア大使(中央)、渡邉主任研究員(左)と筆者(同行者撮影)

 これまでの海洋政策に関する国際会議は、ニューヨークの国連本部やアメリカ政府、欧州諸国などが主導してきた印象が強いですが、今回はアフリカ諸国がブルーエコノミーに関するハイレベルの国際会議を主催したということで、ブルーエコノミーの機運の高まりをアフリカの沿岸や沖合などの海洋保全と経済振興の分野取り組みを進める姿勢を国内外に示しただけでなく、投資促進や国際的な資金および技術援助の呼び込みを図るためにアフリカ諸国が協力していくというアフリカの指導者の強い政治的決意を感じました。日本政府はカナダ政府とともにこの会議の共催国として参画し、佐藤正久外務副大臣からはリーダーズ・コミットメント・セグメントにおいて、ブルーエコノミー推進に向けた技術協力やアフリカ支援を進める日本政府の政策を推進するとのスピーチが行われました。この他、国際協力機構(JICA)の杉山俊二専門員や学習院大学の阪口功教授等も登壇し、水産分野での協力実績や課題などを議論しました。日本財団とともに当研究所が支援する世界海事大学(WMU:World Maritime University)のフェローで、現在、母国で働くケニア、ヨルダン、インドネシアの卒業生ともこのブルーエコノミーの会議をきっかけに交流を持ちました。

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ケニアッタ国際会議センター前には沿岸で暮らす人々の大きな写真パネルが展示されていた。(筆者撮影)

 この会議では、ケニアが南北に連なる長い海岸線のほかにも、湖や河川を抱えていることから、海水だけでなく、そこに流れる淡水を総合的に水資源として捉え、ブルーエコノミーの議論に淡水魚の養殖を含めて考えるべきとの提案が相次いで出されたのはこれまでの議論と異なる視点でした。アフリカ諸国がブルーエコノミーに強い関心を示していることから、2019年8月に第7回アフリカ開発会議(TICAD 7)を横浜で開催する日本政府にとっても、ブルーエコノミー分野での協力は重要な分野となることが期待されています。日本も岡山県備前市の日生地区でアマモの再生を通じた水産資源の回復の取り組みや沖縄県竹富町でのマングローブやサンゴ礁の保全、エコツーリズムの推進、さらには水産大手のマルハニチロがマグロの漁場としているミクロネシア連邦で鰹節工場を設立するなどして漁業と水産加工業の分野で協力関係を発展させていることなど、日本のさまざまな取り組みは、アフリカでのブルーエコノミーの推進に有用な視点を提供するものと思われます。

 このように、さまざまな分野への好影響が期待されるブルーエコノミーですが、大規模な養殖場の整備などが過度な生態系破壊を引き起こしうるといった負の影響を軽減することに対する注意が必要です。そのために、環境影響評価といった手続きや生態系と調和する水産養殖を進めるといった持続可能性を担保する制度整備や人材育成も重要な取り組みとして求められます。また、水産資源の乱獲や違法漁業の問題などに対応するための国際協力の推進、内陸での森林伐採が土壌流出を引き起こし、田畑の生産性を低下させるばかりか、沿岸のサンゴなどにも悪影響を及ぼしうることなどに対応するための陸域と沿岸域の一体管理を進める施策も重要な取り組みとして考えられます。

 6年くらい前ですが、アフリカへの出張の往路、モーリシャスで乗り換えのため1泊することになりました。空港からホテルへの道中、タクシーの運転手との雑談の中でイギリスの話になり、運転手にイギリスに移住しようとか考えたことないのかと何の気なしに聞いたことがありました。帰ってきた答えは、「モーリシャスは地球上の楽園だよ。楽園から出ていくなんて考えられないね。」とのことでしたが、自分の暮らす国を「楽園」と呼べるなんてなんて幸せなんだろうと驚いたことを思い出しました。ブルーエコノミーの政策が今年、どのように発展していくのか。そして、当研究所がどのように貢献できるのか。海とともに暮らす人たちが自分の暮らすまちを「楽園」と呼び続けられるよう、そして、ブルーエコノミーが海を守り、そこで暮らす人々の暮らしを豊かにすることにつながるよう、調査研究や国際連携に関わっていきたいと思います。

海洋政策研究部主任研究員 小林正典

海のジグソーピース No.114 <自然災害のトレンド―小島嶼開発途上国が気候変動自然災害における脆弱性> [2019年01月23日(Wed)]

 「災害は、“危機”(Hazard)がある “場所”(Exposure)に“脆弱”(Vulnerability)と出会うことで起こる」(B. Wisner, P. Blaikie, T. Cannon, and I. Davis(2004))

 人的被害、経済的被害、環境に対する被害の規模を最終的に決定づけるのは、被害者を支援し、災害拡大を抑えるための人員数や災害からの回復力の大きさに依存します。「ナチュラル・ハザード」とは、大気学や地質学、水文学的な要因で、太陽系や地球、地域、国家あるいは地方といった規模の範囲を急速または緩慢に襲う事象により引き起こされ、自然に発生する物理的現象を指します。このナチュラル・ハザードを原因とする災害には、地震、火山噴火、地すべり、津波、洪水、干ばつが含まれますが、これらは社会の持続可能性や経済的・社会的発展にも大きな影響を与え得るものです。

 世界最大級の自然災害データーベースであるEM-DATによると、2000年〜2018年にかけて、毎年約2億人が被災にあっているという数字が示されています。自然災害による経済的損失は年間平均1200億ドルを超え、これらの影響とその犠牲者や死亡者の大半は発展途上国に集中しています。

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【図1】2000年〜2018年に発生した自然災害の犠牲者数
(クリックして拡大)

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【図2】2000年〜2018年に発生した自然災害の経済損失
(クリックして拡大)

 2010年以来、自然災害による死亡人数が低下していますが【図1】、経済損失は増加傾向にあります【図2】。犠牲者が多く発生した災害の類型によると、地震・津波災害は一番多く、2004年のスマトラ地震・津波(25万人)、2005年のパキスタン地震(7万人)、2008年の四川地震(8万人)、2010年のハイチ地震(22万人)と2011年の東日本大震災(1.5万人)などが挙げられています。一方、経済損失では、2008年の四川地震(85億米ドル)と2011年の東日本大震災(210億米ドル)が多く見積もられ、気候変動や津波・高潮などによる自然災害は主に経済損失への影響が高くなっています。特に、1980年以来の自然災害の人的・経済的損失と見ると、被害が2000年以降に最も高い割合で発生していることが分かります。また、2017年は気候変動や津波・高潮などによる災害損失は290億米ドルに至り、自然災害全体の9割以上を占めています。

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【図3】2000年〜2018年の自然災害の発生回数
(クリックして拡大)

 さて、【図3】の災害発生回数と見ると、気候変動や津波・高潮などの自然災害の発生頻度も多く、2000年以降、平均して毎年およそ300回以上発生しています。これらの自然災害は、長年の開発・発展、あるいはまちづくり、村づくりへの努力を一瞬で水泡に帰してしまうものです。気象災害(台風、暴風雨など)による人的被害は、2008年にミャンマーを襲ったサイクロンでは、15万人以上が犠牲となりました。このような自然災害による発展途上島嶼国(SIDS:Small Island Developing Countries)の経済損失はSIDS各国のGDPの8%も占めており、世界平均の0.12%、G7各国の0.01%比べると、極めて深刻な問題となっています。自然災害は必ず発生することは事実ですが、持続可能な開発に対する脅威でもあります。自然災害は全く他人事ではありません。東日本大震災もタイの洪水も、世界全体のサプライチェーンの分断など見られるように、人々の生命や暮らしに深刻な影響を及ぼすものです。

 2012年に日本で行われた世界銀行総会にて報告された減災の効果に関する試算によると、防災に関する取り組みに1ドルの投資を行うと、7ドル分の被害を抑制することが可能だそうです。即ち、防災は7倍の利益を生む効果的な投資なのです。【図4】を見ると、特にSIDS諸国における自然災害ファイナンシングに対する発展が期待されています。このため、災害アセスメント、救援、そして強靭化(Resilience)の研究能力向上は不可欠な取り組みです。さらにはインフラ、そしてシステムの強化、科学技術の投資、産業、生活など持続可能な発展により、先進国が持つ知見や技術を最大限に活用することで強靱な社会の構築に向けたこの国際社会と現地の努力を導き出すことが期待できます。

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【図4】世界平均とSIDS各国の災害影響の比較(EM-DATの資料より著者が作成)
(クリックして拡大)

 災害リスクの3大要素の中でも、自然災害(hazard)の発生を止めること、若しくは被災されること(exposure)を抑えることが重要ですが、大規模の移転は現実的に不可能であり、一番実現的な対策としては脆弱(Vulnerability)を削減することとなります。つまり、災害に強い能力(Capacity)を構築すること、そしてそれを支援する技術を軸とした科学技術外交の推進が必要であると考えます。

 災害は必ず発生するものですが、被害を抑える一番の方法は社会全体の投資により良いサイクルを促進し、安心安全だけでなく持続可能な発展ができる社会を構築することではないでしょうか。

海洋政策研究部 黄 俊揚

Ocean Newsletter No.443 [2019年01月21日(Mon)]
No.443が完成いたしました。

『Ocean Newsletter』は、海洋の重要性を広く認識していただくため、
海洋に関する総合的な議論の場を皆様に提供するものです。 

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●横浜市でのブルーカーボン事業の考え方
(株)エックス都市研究所理事、横浜市次期環境未来都市計画に関する有識者懇談会委員◆信時正人

環境モデル都市をはじめ、国から数々の都市選定を受けている横浜市は、
ひとつのトライアルとして、海に注目した温暖化対策「横浜ブルーカーボン事業」を始めた。
市民の目を身近にある海に向けさせ、海洋都市としての特徴を活かしていく施策展開を図っている。


●大洋州島嶼国の沿岸資源管理への国際協力〜東日本大震災から学ぶ〜
バヌアツ・豊かな前浜プロジェクト、国際協力機構専門家◆枝 浩樹

大洋州島嶼国は、水産資源が大きな財産となっていますが、近年の水産資源の減少と共に、
大規模自然災害による深刻な被害が度重なっています。
一方日本では、大規模自然災害からの復興に多くの経験や教訓を持っています。
このような災害リスク管理についての日本のさまざまな経験や教訓は、大洋州の島嶼国に
とって有益な参考事例として生かされる部分が大きいと考え、大洋州6カ国から行政官を
招聘し研修を実施しました。


●競技としてのフリーダイビングの魅力
フリーダイビング選手◆福田朋夏

一息でどれだけ水中に潜ることができるのか、その潜水能力を競うのが
フリーダイビングと言う競技です。
100mという深い海は凝縮したような青を経験する魅力があります。
そんなフリーダイビングの魅力と競技について紹介します。


●編集後記
同志社大学法学部教授◆坂元茂樹


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Posted by 五條 at 17:22 | Ocean Newsletter | この記事のURL | コメント(0)
海のジグソーピース No.113 <海洋政策研究所における各国および国際社会の海洋政策に関する調査研究について> [2019年01月21日(Mon)]

 本ブログをご覧のみなさまはよくご存じのことと思いますが、当研究所は日本のみならず、世界の海洋政策の発展ならびに世界の海洋ガバナンスの確立に貢献すべく、所長を筆頭に研究員一丸となって調査研究に励んでいます。先日のブログでは、「『政策』とはなにか?」というテーマで、政治学の立場から政策の重要性や複雑性について振り返りました。「政府・政党などの施政上の方針や方策」である政策がもつこの特殊性は、世界共通のものではないかと思います。

 実際に各国の海洋関連政策の内容を見てみても、個々の国々の国内状況や自己認識が違うため、実施されている海洋政策は実に多種多様であります。とはいえ、「海洋の持続可能な利用」がすでに国際的に合意された「海洋の総合管理」を行うための指針となりましたので、社会経済の状況が異なっていても、「海洋の持続可能な利用」は世界の海洋国家が目指す共同の目標であると言えるでしょう。このような状況を鑑み、当研究所では海洋の総合的管理に関する日本の取り組みに新たな知見を提供し、海洋の利用、開発、保全および管理に携わっている行政、研究機関、民間企業、NPO、国民の活動に寄与することを目的とし、世界のなかでどのような先進的な海洋政策の取り組みがあるのかについて、諸外国(例えば、今まで取り扱っていた国や地域としては、米国、英国、フランス、韓国、中国、インド、ブラジル、ベトナムなどがあります)における海洋政策の取り組みを調査・分析してきました。その調査研究の成果については、「総合的海洋政策の策定と推進に関する調査研究」事業のもと、当研究所の研究員が分担して、平成19(2007)年度から『各国および国際社会の海洋政策の動向』というタイトルの報告書として取りまとめるとともに、当研究所のデータベースで公開しています。

 この調査研究では、各国の海洋政策の動向把握や分析といった従来の調査研究の内容に加えて、さまざまな海洋政策の中でもある1つの施策に焦点を絞り、その施策に関する状況や展望を特別テーマとして取り上げ、諸外国の取り組みをフォローしています。この特別テーマについて、2017年度の報告書では、各国における国連の持続可能な開発目標14(SDG 14)に関する取り組み状況、海洋保護区や海洋の安全保障に関する取り組み状況といったテーマを取り扱いました。今年度(2018年度)の報告書では、海洋ごみ問題に関する各国の取り組み状況をまとめることを予定しています。

 年度末に近づく中、担当研究員は現在、原稿執筆に全力で取り組んでいます。今年度の報告書も相当な力作揃いになろうかと思われますので、乞うご期待ください。

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近年発行された『各国および国際社会の海洋政策の動向報告書』(著者撮影)

海洋政策研究部 高 翔

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