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海洋政策研究所ブログ

海洋の総合管理や海事産業の持続可能な発展のために、海洋関係事業及び海事関係事業において、相互に関連を深めながら国際性を高め、社会への貢献に資する政策等の実現を目指して各種事業を展開しています。


海のジグソーピース No.109 <水の惑星地球の将来は?> [2018年12月12日(Wed)]

 地球温暖化の問題の認識はかなり以前からありましたが、古気候学(climate proxies)について、初めて具体的な関心を抱いたのは、当研究所の前身であるシップ・アンド・オーシャン財団と日本財団が共同で実施したINSROP(国際北極海航路計画)が始まる1年半ほど前の1990年でした。この年、英国のマーガレット・サッチャー首相は気候変動に脅威に触れた発言があり、計画の具体的な内容を検討するためにまずは何年後に北極海航路が商業目的に適うような航路に変貌するのか見当をつけたかったからです。

 はじめに、ハワイのマウナロア観測所による大気中CO2濃度の増加傾向が今後も続くという観測結果を踏まえるとともに、同時にスース効果(Suess effect:化石燃料の使用により樹木に含まれる14Cの量が相対的に減少する現象)が産業革命以降、急速に進行していることから大気中CO2大気中増加が人為起因であるという条件を設定しました。そして、北極海に流入する海水量とその温度上昇を推定するとともに、海氷の潜熱と海氷面と海水面のアルベドの相違を考慮し、太陽活動は一定として海洋・大気の熱交換メカニズムに関する当時の最新理論を使い、冬季と夏季の違いを考慮し、5年毎の簡単な夏季海氷面積のシミュレーションを行いました。このシミュレーションにより、約50年後の2040年代後半には北極海夏季の海氷はほとんどなくなると言う結果を得て、INSROPは当面夢であるものの、近未来の実現性のある計画であることを認識しました。しかし、2006年にDr. Stroeve et al.が発表した夏季海氷面積のシミュレーション群を見て愕然としました。1990年の結果は、そのシミュレーション群とほぼ同様で、しかも実測値に近いものだったからです。であるならば、地球の温暖化は当時考えていた以上に着実に進行しているということになるからです。

 現在、シミュレーションの確度は、観測手段、理論、シミュレーション手法の進歩により、かなり向上しつつありますが、地球の気候に影響する因子の全てとそれらの相互干渉などが十分取り入れられてはおらず、まだまだ観測が必要です。地球は、過去、大気中のCO2濃度が現在より高い時期を幾度か経験していますが、その濃度が現在ほど急激に上昇したことはないようですので、客観的に見れば、これまで経験したことのない地球の今後の様態は予測できないと考えられます。

 パリ合意の後、後ろ向きの姿勢がちらほら見える国際情勢を背に、2018年にはUN Environmentによる”Emissions Gap Report 2018”、IPCCの特別報告 “Global Warming of 1.5℃”、WMOもIPCCと同趣意の報告書を、米国ではUSGCRPが”4th National Climate Assessment”が発表されています。最近のCOP24ではパリ合意の具体的施策のルール作りが議論されるなど、「帰らざる川」のように産業革命以前の地球環境に戻ることは最早できないとの厳しくも悲しい指摘もありますが、少なくとも、気分だけは慌ただしい雰囲気に包まれています。

 地球上の全生物を代表して、ホモ・サピエンス・サピエンスと自称する人類の真骨頂が見たいものです。これは、個々の人類の問題でもあります。さて、どうすればいいでしょうか。

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NOAA Climate.govに示された全球の温度上昇

客員研究員 北川 弘光

海のジグソーピース No.108 <WMUで授与式/卒業式―新たに30名の笹川フェローが誕生―> [2018年12月05日(Wed)]

 2018年11月3日、スウェーデン・マルメ市にある世界海事大学(WMU:World Maritime University)で、WMU学長のCleopatra Doumbia-Henry博士やIsabella Loevinスウェーデン副首相、Anders Wijkmanローマクラブ共同代表、Leif Almoe日本国名誉総領事などにご臨席頂き、「WMU友の会ジャパン入会証授与式」を行いました。

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来賓のIsabella Loevinスウェーデン副首相(OPRI撮影)

 WMUは、国際海事機関(IMO:International Maritime Organisation)が海事人材の育成を目標に設立した大学院大学です。日本財団は30年以上にわたり、WMUにおける海事・海洋分野の人材育成に関する活動を支援しており、当研究所は日本財団の支援を得て実施されている「WMU笹川奨学プログラム」の実務および「WMU友の会ジャパン」の事務局を担当しています。

 WMU笹川奨学生は、この授与式と卒業式を経て、「WMU笹川フェロー」となり、WMU笹川フェローでつくる「WMU友の会ジャパン」のネットワークの正式メンバーとなります。今年は、新たに23ヵ国30名のフェローが加わり、WMU笹川フェローは総数で72ヵ国611名となりました。トーゴ、ギリシャ、東ティモールからは、初めての「笹川フェロー」が誕生しました。

 授与式では、Cleopatra学長が今年5月のWMU-Sasakawa Global Ocean Institute創設に言及しつつ、「WMUで学んだことを生かし、海洋・海事のリーダーとして活躍することを期待する」という祝辞を述べられた後、海野光行日本財団常務理事から、「将来を見据えたイノベイティブな仕事をしてください。」との挨拶とともに、各卒業生に出身地の言語で「おめでとう。頑張って下さい。」の言葉が伝えられ、一人一人に入会証が手渡されました。

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ビルマ語の御祝いの言葉を聞くミャンマーの笹川奨学生(OPRI撮影)

 翌日のWMU卒業式では71ヵ国267名が卒業し、WMUの卒業生は168ヵ国4,921名となりました。WMU卒業式では、笹川奨学生であるインド沿岸警備隊のBanshidhar Singhさんが首席に与えられるThe Chancellor’s Medalを獲得しました。昨年もエジプトの笹川奨学生が同賞を受賞しており、2年連続で笹川奨学生が受賞したのは嬉しい限りです。また、WMUの女性卒業生は、今年で1,029名となり、1000人目の卒業生となったナイジェリア出身のNaandem Rita Njinさんに特別賞が授与されました。

 海洋は、危機的状況にあり深刻さを増しています。WMUは今年35周年を迎え、その役割は、設立当初の自国海事産業の発展の基礎となるIMO条約の履行という枠を超え、海洋全般を視野に活動できる専門家の育成、キャパシテイー・ビルデイングへと広がっています。また、WMU笹川フェローのなかにはフィリピン沿岸警備隊の長官(2018年1月に長官となったElson E Hermogino少将は、1996年にWMUを卒業したフェローの1人です)となるなど海事・海洋分野で責任ある地位に就く者も出てきています。

 海洋の持続的発展に向け、次の海洋をどうしていくか、世界各地にいる笹川フェローが核となり、既存の枠組みを超えて協力し、その活動が国際社会全体に及んでいくことを期待しています。

特任調査役 秋田 務


Ocean Newsletter No.440 [2018年12月05日(Wed)]
No.440が完成いたしました。

『Ocean Newsletter』は、海洋の重要性を広く認識していただくため、
海洋に関する総合的な議論の場を皆様に提供するものです。 

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●世界的な海洋プラスチックごみ 総量削減対策の動向
(公社)日本海難防止協会欧州代表、神戸大学海洋科学部客員教授◆長谷部正道

世界の海洋プラスチックごみ量が増大するなか、プラスチックごみの削減は緊急の
課題になっており、欧州委員会をはじめとする世界の主要国はプラスチックごみの
総量削減のための法制化を進めている。
わが国では、プラスチックごみの分別収集が進んでいるため、プラスチックごみの
海洋への流出は他人事と考えている国民も多いが、わが国においても早急に
プラスチックごみの総量削減対策に官民で取り組む必要がある。


●東京湾における水上交通活用について
東京ウォータータクシー(株)代表取締役◆田端 肇

東京港における水上交通の一役を担う水上タクシー。
新たな東京の発見を提供すべく「船体構造」「教育」に対応してきた。
東京2020オリンピック・パラリンピックをひかえ海外からの渡航客も
増える中でさらなる増船が必要と見込まれる。
そのためにも解決すべき課題は乗降場所の利用方法等に依るところが小さくない。


●MELの取り組み─東京五輪を見据えて
(一社)マリン・エコラベル・ジャパン協議会会長◆垣添直也

水産エコラベルが誕生してから40年余。今や世界には140を超える
ラベルが乱立する。
かつて「世界に冠たる」とその存在を誇示した日本の水産業は、
世界の流れとなった水産物の持続的利用に関しては大きく出遅れた。
2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催は、
日本社会において持続可能な考えと行動が共有できるまたとない機会である。
MELは「日本発の世界に認められる水産エコラベル」として
持続的社会定着に貢献できることを願っている。


●編集後記
東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる


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Posted by 五條 at 14:49 | Ocean Newsletter | この記事のURL | コメント(0)
海のジグソーピース No.107 <古代からのメッセージ―紀元前12世紀、グローバル経済を崩壊させた海上交通路の破壊−> [2018年11月28日(Wed)]

 紀元前1200年以前の昔、北アフリカから地中海を挟み、南欧・中東まで広がるグローバル経済圏が栄えていたそうです。そのグローバル経済圏は、B.C.1177年を境に突如崩壊しており、その要因が謎の「海の民」による破壊活動であったとの説を唱える歴史学者も多いそうですが、まだ定説はないようです。2018年1月、その崩壊の謎に挑んだ考古学者のエリック・H・クラインの著書『1177B.C:The Year Civilization Collapsed』の邦訳版(B.C.1177古代グローバル文明の崩壊)が出版されました。クラインの分析は、現在のグローバル経済の脆弱性を示唆しており、物流の大動脈である海上交通路の安全保障の重要性を再認識させるものがあります。

 後期青銅器時代に当たる紀元前1500年頃からおよそ300年にわたり、地中海域を中心としてミケーネ、ヒッタイト、アッシリア、バビロニア、キプロス、そしてエジプトの古代国家や民族の間で活発な交易活動が営まれ、様々な物品が売買されるという、言わば古代版グローバル経済圏があったことは、ある地域の特産品が他の地域の遺跡で発掘されるなどから、歴史学的に認められているようです。その古代グローバル経済圏では、国家や民族間で絶え間なく武力紛争や略奪が生じていましたが、そのような中でも民族間の婚姻による姻戚関係の構築や経済交流は維持・促進されていたようです。例えば、紀元前1274年にエジプトとヒッタイトがカデシュで戦闘を始めますが、地域での経済活動は続いており、やがて世界最古の和平条約を交わしています。

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カデシュの和平講和(イスタンブール考古学博物館所蔵)(著者撮影)

 ところが、そのようなグローバル経済圏が突如として歴史から姿を消します。紀元前1177年、グローバル経済圏を構成していた多くの古代都市に大規模な破壊の痕跡があり、その後、交易の証となる考古学的発見は途絶えているそうです。古代都市の大規模な破壊の原因としては、各地で連鎖した内紛、大規模な地震、気候変動など幾つかの説がありますが、当時地中海沿岸を跋扈した「海の民」によるものであったとの説もかなり有力なようです。しかし、その「海の民」とは何者か、何処から来たのか、何故破壊活動を繰り返したのか、まだ定説はなく謎に満ちています。クラインは著書の中で、破壊の原因はおそらく幾つかの仮説の複合によるものであろうと述べています。グローバル経済は、実はかなりの複雑系構造世界であり、ある要因が生じると連鎖的に様々な状況を創り出し、それがシステム破壊を生じさせる危険性があることを指摘しています。クラインは、複合要因の1つとして、他の学者が指摘する次のような「海の民による交易ルート断裂説」を挙げています。

 つまり、支配地域を越える経済活動の主体が領主・国王から商人へと移り変わり、その過程において海上交通路の安全を守るという意識が希薄になっていき、そこに領域と既得権益を持たない「海の民」が入り込み、利益略奪を試みた、とする説です。

 複雑系としてのグローバル経済構造世界では、1つの要因が歯車の回転を変え、構造の破たんを引き起こすのみならず、一旦破たんすれば回復が難しいのかも知れません。「海の民」は海上交通路の安全確保の重要性を訴える「古代からのメッセージ」かも知れません。

 笹川平和財団海洋政策研究所では、グローバル経済を支える物流の大動脈としての海上交通路の安全確保のあり方について、さまざまなアプローチによる研究事業を展開していきます。
特別研究員 秋元 一峰

海のジグソーピース No.106 <自衛艦の命名にまつわる「よもやま話」> [2018年11月21日(Wed)]

 本年(2018年)7月30日、ジャパンマリンユナイテッド横浜工場において、海上自衛隊(以下、海自)の最新鋭イージス護衛艦「まや」の進水式および命名式が行われました。「まや」は海自の保有する7隻目のイージス艦であり、新型のミサイル護衛艦(DDG)の一番艦ですが、その艦名は神戸市灘区六甲山地の中央に位置する「摩耶山」に由来しています。これは護衛艦の名称付与基準である「天象、気象、山岳、河川、地方の名」に基づくもので、このように自衛艦の名称は艦種毎に定められた規則(「海上自衛隊の使用する船舶の区分等及び名称等を付与する標準を定める訓令」別表第二(文末掲載参照))に掲載されているのですが、今回はこの艦名選定にまつわるちょっと興味深いエピソードをご紹介したいと思います。

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進水直後の「まや」(出典:海自ウェブサイト)

 このような艦名選定について、海自のウェブサイトには「部隊から募集し(中略)防衛大臣が決定しました」と記されていますが、実際のプロセスとしては海上幕僚監部(以下、海幕)の担当者がいくつかの候補を選定して配属先の部隊など部内の各関係先に意見照会の上、海幕や防衛省内局での審議を経て防衛大臣の決裁を得るという形になっているようです。決定された艦名については、命名式(進水式に先立ち、防衛大臣が艦名を読み上げる形で実施)まで厳重に秘匿されており、報道関係者への事前通知なども「命名式まで非公表」という条件付で実施されています。ちなみに、インターネット上では艦船マニアによる議論が大変盛んであり、中にはさまざまな根拠を列挙して思わず「おおっ!」と唸らせるような予想も見受けられますが、まあ、こういうのは大概外れます。

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艦名は命名式までヒ・ミ・ツ(出典:海自ウェブサイト)

 さて、その名称等の付与標準ですが、実は内規としてさらに細かな取り決めもいくつかあり、護衛艦であれば型毎に同じカテゴリーの名称を使用(○○ゆき、〇〇きり等)とか、あるいは補助艦については「名所旧跡の名」とされていますが、例えば、補給艦は湖の名称(とわだ、ましゅう等)、潜水艦救難艦は城郭の名称(ちはや、ちよだ)といったサブカテゴリーが定められています。さらに、国際問題を生ずる可能性のある名称や揶揄の対象となるような名称は避けるといった点も考慮されています。このほか、近年では海上保安庁(以下、海保)と連携する機会が増えて来たため、現場での運用上の錯誤を避けるという観点から自衛艦と巡視船の名称重複はお互いに避けるよう留意するといった点も考慮事項に加えられています。

 ところで、諸外国の軍艦では、米海軍の空母ロナルド・レーガン、仏海軍の空母シャルル・ドゴールなど、著名人に由来する艦名も一般的なのですが、文末添付の表のように我が国では名称等の付与標準に人名は入っておりません。このような言い方をすると、南極観測支援に使用されている砕氷艦「しらせ」は「南極探検の白瀬中尉に由来しているのでは?」というご指摘を受けるかも知れませんが、実はこれは南極大陸に所在する白瀬中尉を称えて名付けられた「白瀬氷河」に由来するということであり、前述した補助艦艇の名称等の付与標準「名所旧跡の名」に基づく命名という括りになっているのです。

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砕氷艦「しらせ」(二代目)(出典:海自ウェブサイト)

 その「しらせ」ですが、実は今回の話題である艦名の選定について、極めてインパクトのあるブレークスルーを作ってくれた艦でもあります。ご存じのように、現在の「しらせ」は2代目であり、初代に引き続き同一名称が使用されています。それまで海自では、艦船の除籍後も関連する事務手続き上の錯誤を避けるという観点から同一名称の使用は一定の期間を置いてからという運用をしてきましたが、「しらせ」については「広く国民に定着しているので」という判断もあり、敢えて同一名称となった経緯があります。海保では同じ任務で同じ地域に配備される巡視船には同一名称を付与するという運用が一般的に行われて来たところですが、この後は海自でも敷設艦「むろと」と潜水艦救難艦(先代は潜水艦救難母艦)「ちよだ」で同様の事例がありました。前述のように、名称付与に関する考慮事項が増え、「良い艦名」を考案することがなかなか難しくなって来た中で、今後はこういった事例が増えてくるのかもしれません。ちなみに「ちよだ」では、先代からそのまま移籍した乗員も数多くいますが、彼らの間では映画「シン・ゴジラ」をもじって二代目を「シン・チヨダ」と呼んでいるそうです。

 それから、2代目や3代目と言えば、同一名称の旧日本海軍の艦艇との関係もまた重要な考慮事項の1つです。そもそも、名称等の付与標準自体が旧日本海軍の規定を参考にしていますので、旧日本海軍の艦艇名称は、多くの自衛艦に受け継がれています(例えば、旧海軍においては駆逐艦「春雨」(初代、2代)、海自では護衛艦「はるさめ」(初代、2代)が在籍しています)。前述の艦名選定のプロセスにおいては、旧海軍における同一名称艦の艦歴なども参照されることとなっており、この点について、艦船マニアの間では「武勲艦」「不運艦」といった議論が交わされることもありますが、そもそも旧海軍の艦艇は最終的にほとんどが喪失していますので「撃沈されたから不運艦」という理屈にはなり得ず、その艦歴から命名不適とされることはほとんどありません。それでも「大和、武蔵は永久欠番」とか、「謎の爆沈をした陸奥は戦後の原子力船「むつ」の事故もあり縁起が良くない」といった感覚が一種の不文律として存在すると言われていることについては、「さもありなん」と頷けるところでもあります。

 最後に、これは自衛艦の命名の結果として生じる重要事項の1つと言えるかもしれませんが、命名由来地との関係ということについても、いくつか実例をご紹介したいと思います。日本は「言霊の国」ですから、地元住民の地名に対する愛着というのも当然強いわけで、近年これに由来して命名された自衛艦を「応援したい」とする動きが各地で起こっており、例えば、試験艦あすか(奈良県の明日香村に由来)後援会、掃海母艦うらが(東京湾の浦賀水道に由来)後援会などが結成され、乗員との交流行事も活発に行われています。元海上自衛官で掃海艇乗りであった筆者がまだ若かった頃、某掃海艇が命名由来地の某島で寄港地広報をしようと役場にコンタクトしたところ「何で勝手に名前を使うんですか?」と強く非難されたという話を聞きましたが、そうした時代に比べれば、これは日本国民の皆様の自衛隊に対する意識が大きく変わってきたことの証しでもあり、大変ありがたく思う次第であります。

 ちなみに地元との関係という観点で言えば、海保の巡視船は配属先の地元で親しまれるようにとの趣旨で転籍に際し、船名が変更される場合があるそうですが、海自ではそうした考え方は取っておりません。このため、命名由来が旧国名であるヘリコプター搭載護衛艦(DDH)についても「ひゅうが」が舞鶴、「いせ」が佐世保、「いずも」が横須賀、「かが」が呉と、配備先と命名由来地は一致していません。しかし、いずれの艦も上記のような広報効果も考慮しつつ、定期的寄港などそれぞれの命名由来地との密接な交流を続けているとのことです。

 以上、自衛艦の艦名の由来などについて縷々述べて参りましたが、親が子の将来を想ってその名付けに大いに思い悩むのと全く同じように、自衛艦の命名もまたさまざまな想いを込めて実施されているものです。本記事を契機として読者の皆様が自衛艦の艦名などにも御関心をお寄せ頂き、そして願わくは、これらに多少なりとも愛着を持って頂ければ大変幸甚です。

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「海上自衛隊の使用する船舶の区分等及び名称等を付与する標準を定める訓令」別表第二
(出典:防衛省ウェブサイト)
※クリックしてPDFを表示

海洋政策研究部特任研究員 相澤 輝昭

Ocean Newsletter No.439 [2018年11月21日(Wed)]
No.439が完成いたしました。

『Ocean Newsletter』は、海洋の重要性を広く認識していただくため、
海洋に関する総合的な議論の場を皆様に提供するものです。 

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●国境離島の保全・管理に関する政府の取り組み
内閣府総合海洋政策推進事務局有人国境離島政策推進室参事官補佐◆大山裕司

2017年4月1日に施行された「有人国境離島地域の保全及び特定有人国境離島
地域に係る地域社会の維持に関する特別措置法」は、日本国民の居住により、
領海等で行われる漁業、海洋調査、領海警備等の活動の拠点機能をもつ
有人国境離島地域の機能を維持するための特別の措置を講じ、領海等の
保全等に寄与することを目的としている。
本法に基づく政府の取り組みについて紹介する。


●国際沿岸海洋研究センターの再建とこれからの活動
東京大学大気海洋研究所国際沿岸海洋研究センターセンター長・教授◆河村知彦

東日本大震災で壊滅的な被害を受けた国際沿岸海洋研究センターの新しい
研究実験棟と宿泊棟が完成した。
今後は、これまで以上に国際的な沿岸海洋研究拠点として機能すると同時に、
被災地にある研究機関として、海洋生態系に対する地震・津波の影響研究の
拠点としての役割を果たし、地域の復興・発展にも貢献する活動を展開する。


●島しょ地域の次世代を担う若者の育成
東京都立小笠原高等学校校長◆遠山裕之

第2回島しょ高校生サミットが今年の夏、小笠原高校を会場に開催された。
本サミットは、生徒の見方・考え方を広げ、島しょの横のつながりを生み、
将来の島しょ地域を担う人材の育成にもつながることが期待されて、昨年から始まったものだ。
今回は、都立島しょ6高校の生徒12名に本校の8名を加えた20名の生徒が参加した。
今後も島しょにある学校としてこのような高校生の交流の機会を支援し、見守り、
島しょ地域を創っていく若者を育てていきたい。


●編集後記
同志社大学法学部教授◆坂元茂樹


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Posted by 五條 at 01:31 | Ocean Newsletter | この記事のURL | コメント(0)
国際共同シンポジウム「日中における沿岸域利用管理の仕組みとガバナンスの諸問題」について [2018年11月15日(Thu)]

当研究所が開催協力している国際共同シンポジウムについて、ご紹介いたします。

東京海洋大学・上海海洋大学国際共同シンポジウム
「日中における沿岸域利用管理の仕組みとガバナンスの諸問題」
 日時:2018年11月21日(水)10:00〜18:00
 場所:東京海洋大学 楽水会館1F 大会議室 (東京都港区港南4-5-7)

詳細につきましては、下記ファイルをご参照ください。

海洋大チラシ.PNG
※クリックしてPDFを表示

海のジグソーピース No.105 <電波と海> [2018年11月14日(Wed)]

 「海のジグソーピース」が開始されて、約2年が経ちました。ご愛読に深く感謝いたします。初めてご覧になる方、初めまして。「海のジグソーピース」は、当研究所の研究員が持ち回りで各自の研究内容や、その中で見つけたカギとなるピースをご紹介し、当研究所の活動へご理解を深めていただこうというコンテンツです。今回で5周目に突入の「海のジグソーピース」。引き続き、ご贔屓いただけますようお願い申し上げます。

 さて、今回は、「電波」についてのお話です。私は「海洋レーダ」という海の表面の流れを観測する機器の開発・普及に携わった第二級陸上無線技術士であり、最近第一級アマチュア無線技士免許を取得した電波小僧(?)でもあるのです。

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海洋レーダの例(国土技術政策総合研究所所有の24 MHz帯海洋レーダ)

 さて、電波と海は大変似ていると申し上げたら皆さんは驚かれるでしょうか。
 実は、どちらも世界の人々を「つなぐ」大切な媒体です。古来より海は大陸や島しょ間を船で人や物を運ぶ道となり、各地の文化・文明をつないできたことは言うまでもありません。電波も、歴史こそ19世紀後半からしかありませんが、いわゆるトン・ツーの無線電信や、音声通話を可能とした無線電話、映像通信、データ通信などにより、大陸や島しょ間といった遠隔地に情報を運ぶことで各地をつないできました。

 さらに、どちらも有限であるということも共通しています。近年まで、海が有限であることは知っていても、そこにある漁業資源や鉱物資源は無尽蔵と錯覚していた感がありますが、間違いなく海そのものも、そして海に抱かれている資源も有限であります。電波は、三百万メガヘルツ以下の周波数の電磁波であり、同じ周波数を2つの電波が同時に使えないという排他性を持っています。したがって、電波の周波数も、実は海と同じく人類に与えられた有限な資源なのです。

 電波の世界には、この有限な資源を管理・利用していくための仕組みがあります。1865年に設立された世界電気通信連合(ITU)と国際無線通信会議(WRC)です。ITUは、無線通信に関する科学技術の開発などを推進する機関であり、1906年に第1回のWRCをベルリンで開催し、無線通信規則(Radio Regulations:通称RR)とよばれる、電波の国際ルールブックを作成しました。今もWRCは、3-4年に1回ジュネーブで開催されています。1か月の会期の間に議題毎の審議、RRの改正、次回会議の議題案の決定を全会一致(コンセンサス)で行います。

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2,000人が議事に参加するWRCの本会議場(左上は発言を求めるためのプラカード、
この他に多数決用の○×札があるが、使われたことは無いと言う)

 こうした大会議でコンセンサスを可能にする一つの鍵が、勧告・報告としてまとめられるITUの研究成果であり、もう一つの鍵が、世界に6つある地域組織における事前の合意形成プロセスです。科学的・技術的な議論と政治的・戦略的な議論とを分離させながらも、相互のフィードバックを欠かさない重層的な体制とそれを運用する柔軟な仕組みが電波の周波数の公平かつ有効な分配を支えています。

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海洋レーダへの周波数割り当てのために準備された勧告・報告
※クリックして拡大

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WRCに関連する会議の構造(2012年のWRC-12の例:議題採択から4年間で5回の地域会合、8回の技術会合、1回の準備会合を経てWRCで審議された。
その間、ITU勧告・報告が並行して準備される)
※クリックして拡大

 ITUやWRCに携わる人々が必ず知っている逸話があります。それは、1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニック号の悲劇です。氷山の存在を知らせようとした無線電信が、乗客の電報送信が優先された結果、受信されなかったこと、1906年のWRCで遭難信号がSOSとして規格化されていたにも関わらず、統一的な信号送受信方法が確立されていなかったために、近隣に居た汽船への無線連絡ができなかったことなどが重なり、悲劇が起きたということです。ITUは問題解決に向け素早く対応し、事故から数か月後にロンドンで開催されたWRCで、船の遭難信号のための周波数を定め、通信士の傍受義務などを決議しました。

 2012年のWRC議長が開会の時に「我々は、現在の最高の科学と技術の成果を持って問題解決にあたるためにこの地に集まった。1か月という限られた時間ではあるが、科学的・技術的な問題に帰結させることができるのであれば、全ての人々のコンセンサスを作り上げることが可能と信じている」と述べました。そして、1か月後、その通りになり、海洋レーダの電波の割り当てがRRに掲載されたのです。

 電波も海も人間が生活していく上で不可欠なものです。海の科学・技術は、電波のそれのように理想化された条件で解くことはできません。また海の利用に関する政治・戦略は、通信以上に多様で輻輳しています。しかし、人間の知恵と工夫を結集することで、一歩ずつコンセンサスに向かう道筋が見えてくるのではないかと思うのです。

海洋政策研究部長兼上席研究員 古川 恵太

海のジグソーピース No.104 <クウェートの社会環境・海洋環境について> [2018年11月06日(Tue)]

 最近クウェートに行ってきました。さて皆さん、クウェートと言われて何を思い浮かべるでしょうか?私は中東、ペルシャ湾、石油採掘国、湾岸戦争の舞台、程度のキーワードしか思い浮かびませんでした。一方で湾岸海洋環境保護機構(ROPME)、アラビア湾、外国人漁業者、海水淡水化、そしてクウェートの海洋環境等、現地に行って初めて知ったこと、学んだこと、分かったことがあります。今回はこうした言葉に触れながら、クウェートの社会情勢や海洋環境についてご紹介します。

クウェートで石油産業が興るまで(日本との関係)
 中東(あるいは西アジア)に位置するクウェートは、ペルシャ湾奥部にある小国です(地図参照)。約11,000q2の排他的経済水域(EEZ)を有します。今から約80年前に石油が産出するまで、クウェートはメッカ巡礼のルート上にあり交易で栄えてはいたようですが、遊牧民が多く、定住民は主に沿岸に暮らす漁民たちで、真珠等を採って生計を立てていたようです。当時、真珠は天然産に限られ、クウェート沿岸地域は真珠市場を独占していたそうですが、ミキモトで知られる御木本幸吉による真珠養殖成功により、クウェートの真珠産業は壊滅的な状態に陥ったそうです。真珠で立ち行かなくなったクウェートは、外資による石油掘削を許可し、それにより大規模油田が発見されるに至ったということですので、間接的にせよ日本の技術発展が知らず知らずのうちに、遠く離れた他国を大きく動かした、ということに驚きます。

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クウェートの位置とそのEEZ(赤く塗った領域)
※クリックして拡大

石油で激変したクウェートの生活環境、自然環境。
 クウェートでは世界2位の原油埋蔵量を誇ると言われるブルガン油田も発見され、1940年代後半には石油掘削が本格化しました。これに伴い石油産業一辺倒のモノカルチャーに移行し、クウェートには外国人労働者が多く流れ込みました。現在クウェートには400万人を超える人が暮らしていますが、そのうちクウェート人は1/3以下です。なお石油産業が興る以前の人口は、正確な統計は見つけられませんが、現在の1/10程度の規模だったようです。クウェート人の大部分は国家公務員で、その他の仕事の多くは外国人労働者によってなされています。例えばクウェートでも漁業はされており年間3,000〜8,000トン程度の陸揚げがあるそうですが、こうした漁労活動をしているのはバングラデシュ人、インド人、エジプト人、イラン人といった外国人労働者です。

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近代的な街並みと漁船。漁船の所有者はクウェート人だが、漁業者はほとんどが外国人労働。

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魚市場。ハムールと呼ばれるハタ類の魚は良く食されているよう。

 この様に多くの人が暮らすようになったクウェートですが、淡水はどうやって得ているのでしょうか。現地に行くまで知りませんでしたが、クウェートには河川が1本もありません。淡水はほぼ、海水の淡水化によって作られています。クウェート国内には、6つの海水淡水化プラントが稼働しており、熱を得るため全て火力発電所に隣接しています。こうしたプラントからの排水を受ける沿岸域は、ときに塩分が60(通常の海水の塩分の倍近く)という、超高塩分になっている場所もあると聞きました。

 こうした国内の問題に加え、ペルシャ湾奥部に注ぐティグリス川・ユーフラテス川の流量減少もクウェートおよびペルシャ湾の海洋環境に大きな影を落としています。ティグリス川、ユーフラテス川の上流部にあるトルコやシリアにダムが建設され、これが流量減少の一因と言われています。また流域での灌漑などの利水も、流量減少の原因と言われています。河川流量の減少により、以前は雪解け水が流れてくる季節には30近くまで下がることのあったクウェート海域の塩分も、現在では40を切らなくなっているという報告もあります。

環境保護に向けた地域的な枠組みと湾の呼称
 さて、ここまでの文章では「ペルシャ湾」と呼んできましたが、実はこの地域では湾の呼称はデリケートな問題です。本部をクウェートに置く湾岸海洋環境保護機構 ROPME(Regional Organization for the Protection of Marine Environment)にはバーレーン、イラン、イラク、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦の8か国が加盟しています。イランを除いたアラブ諸国の間では、アラビア湾という呼称を用います。しかしイラン国内ではペルシャ湾という呼称を用いていますし、国連でもペルシャ湾という呼称を採用しています。そこでROPME加盟国間では、ペルシャ湾からホルムズ海峡を経て、オマーン湾を出たオマーンの南岸までの領域をROPME Sea Area、略してRSAと呼んでいます。
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ホルムズ海峡より内側はInner RSA、外側はMiddle RSA、
オマーンの南岸はOuter RSAと定義されています。
出典:ROPME (2013)
※クリックして拡大

豊かな沿岸環境の創成に向けて
 クウェートでは前述のように海水の塩分が下がらなくなってきており、また最高気温が40℃以上、時には50℃以上に上がる夏場には、水温も35℃近くに達することがあります。まして浅瀬の干潟等は、夏場、非常に厳しい熱塩環境にさらされていることが容易に予想されます。現地のクウェート科学研究所(KISR)という研究機関では、こうした干潟に海草を増やす、浅海域に海藻を増やすという、藻場造成の機運が高まって来ています。このような活動を軌道に乗せるためには、沿岸海域にこれ以上負荷を掛けないことはもちろん、活動を担っていくための地域社会への普及啓発活動も不可欠と考えられます。特に次世代を担っていく子供達を巻き込んで行くことが重要でしょう。

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干潟で見られた海草の一種(ウミジグサ Halodule uninervis)。
過酷な夏を過ぎた時期のためか、非常に短い物しか見つかりませんでした。

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こちらは水深5mほどのところに見られた海藻の一種(Sargassum spp.

 クウェートでは最近、真珠産業が盛んだった往時をしのんで年に一度 Pearl Diving Festival(真珠採り祭り)が開催されているそうです。このイベントには、バーレーンやUAEからの参加者もいるとのことです。こうした国民や周辺国の海への興味を基盤に、若い世代に海を持続可能に利用しようという活動が浸透していくことが、成功の芽となるでしょう。課題も多そうですが、今まで私が経験した国々とは社会環境・自然環境が大きく異なるアラビア湾でのこうした活動に、何か貢献できることは無いのかなと想像し、今はもっと多面的に勉強したいと思っている私です。

海洋政策研究部主任研究員 渡邉 敦

【参考文献】
Faiza Al-Yamani, Takahiro Yamamoto, Turki Al-Said, Aws Alghunaim (2017) Dynamic hydrographic variations in northwestern Arabian Gulf over the past three decades: Temporal shifts and trends derived from long-term monitoring data. Marine Pollution Bulletin 122 : 488–499.

ROPME (2013). State of the Marine Environment Report- 2013. ROPME/GC-16 /1-ii Regional Organization for the Protection of the Marine Environment, Kuwait, 225 p.

Ocean Newsletter No.438 [2018年11月05日(Mon)]
No.438が完成いたしました。

『Ocean Newsletter』は、海洋の重要性を広く認識していただくため、
海洋に関する総合的な議論の場を皆様に提供するものです。 

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●第2次竹富町海洋基本計画の策定 〜美ら海とともに生きる町〜
沖縄県竹富町政策推進課課長◆通事太一郎

竹富町は自治体としてわが国初の海洋基本計画を策定した。
各種施策の実行は成果を上げているが、町をとりまく情勢は変容してきており、
その情勢に即応し、町の役割を踏まえて海洋基本計画の改定を行っている。


●海洋分野にイノベーションをもたらす男女平等
世界海事大学准教授◆北田桃子

持続可能な開発目標の実現に向けて、既存の考えや価値観を超える新しい発想、
すなわちイノベーションが必要不可欠な要素として求められている。
伝統的に男性中心の分野として知られている海洋・海事分野でも、
男女平等がイノベーションをもたらす手段になりうる。


●東京湾の干潟の長期調査から考える赤潮対策
フリーランサー(底生生態系調査)、東京大学総合博物館事業協力員◆山田一之

赤潮は人為的な除去では追いつかない。
首都圏がその機能を維持する限り無限に生産されるものだが、見方を変えれば、
それは生物資源にもなる。
人間は赤潮を直接利用できないが、アサリなどの貝類をはじめとして、
ろ過食性生物の餌料とすることで利用できる形へと転換できる。
赤潮を産業利用につなげることはできないだろうか。


●編集後記
東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター特任教授◆窪川かおる

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Posted by 五條 at 21:34 | Ocean Newsletter | この記事のURL | コメント(0)
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