東京音訳グループ連絡会 研修会報告 2025.11.26
文責 : 東京音訳グループ連絡会
加筆・修正 : 高橋久美子先生
日時 2025.10.30 (火) 13:30〜15:40
会場 東京ボランティア・市民活動センターA.B会議室
テーマ 「文意を伝えることのできる読み」
講師 高橋久美子氏
教材 @「踊る文章」「文章の燃料」 (井上ひさし著『自家製
文章読本』 より抜粋)
A 「第五章 動物噺など」 (今江祥智著『子供の本 持ち
札公開』 より抜粋)
参加者 64名
※はじめに
本講演では、「文意を伝えることのできる読み」をテーマに、文字情報をそのまま読むのではなく、意味のかたまりをとらえ、著者の意図を音声表現で的確に伝えるための方法を学んでいきたい思います。
耳から聞いて理解することは、目で見て理解することとは違うということを踏まえ、表記にこだわりすぎず、文意や文のかたまりに自分の息を合わせる音声表現を勉強して、著者の意図を正確に伝えることのできる音声表現を学んで、よりよいものを作っていって欲しいと思います。
※講師が出席者名簿から順に指名し教材の文章を実際に読みながら進めていきその都度ご指導いただきました。
※例
◆教材@−1
・P110『述語は動詞(+(プラス)助動詞)』
⇒ 述語は動詞 (ピッチを下げて→)プラス助動詞
<注意>・述語は 動詞プラス助動詞 と聞こえないように
・「カッコ カッコトジ」 は不要
・P111 『あの(、、)問題を素通りするわけには行かないだ
ろう』
⇒あの(、、)、は読み方で表現 (「あのに傍点」 は不要)
・P111 引用文が複数並んでいる、その文章の内容によって
間の処理だけでは引用文だとわかりにくい場合、「以下引用
引用終わり」の文言を入れる。
<注意> ・あまり多用しない方がよい。
・本文と同じ息、音量で読まないで、ピッチを下げ
て読む。
・P111 本文にある( ) カッコはその場に適切な処理で
伝える
「カッコ トジ」/「カッコ カッコトジ」←( )内が長い
場合/カッコと読まず音程、ピッチを変えるなど適切な方法
を選択
<注意>・引用文の中の、著者が加えた注などの( )は、
「カッコ カッコトジ」を入れた方がわかりやすい。
・出典の( )は読み不要。
・( )の前後は違う息で読む。
・P111 『/ところが、・・・ 、/日本の作家たち
も・・・』
⇒「/」は行替えを意味するので「シャセン」とは読まない。
◆教材@−2
・P112 『・・・す(話す、訳す) ・・・ぬ(死ぬ)
・・・ぶ(呼ぶ)〜』
⇒「・・・」は読み不要
・P113 『竹取物語の、 かた時のほどとて』
⇒文体が変わることで引用文とわかるので、間を取り、息を変
えて読みで表現できる。「以下引用 引用終わり」は不要。
・P113 『下ししを 身をかへたるがごと成りにたり』
⇒(前の文章で説明があるので)「し に傍線、たる に傍
線」など、傍線の文言は不要。丁寧に読むことで表現。
・P113 『「な」→連用形 「は」「も」→おおむね終止形』
⇒「下向き矢印」「やじるし」などの文言は不要
<注意>矢印は、方向性を伝えるのに必要なときに音声化す
る。
◆教材@−3
・P185 『文章は、自然発生的に生まれるものではない。中略
それが初歩の作文です。』
⇒文章は、 (ピッチを下げて)「以下傍線」 自然発生的
に〜作文です。(ピッチを下げて)「傍線終わり」
<注意>・文中に「傍線を引いたのは筆者であるが・・・」と
あるので、「傍線」の表現は必須。
・「傍線筆者」などの表現がある場合は、短い文言で
も必ず「傍線」のことわりを入れる。
・短い場合は「〜に傍線」、複数の場合は「〜と〜に
傍線」とまとめて言っても良い。
◆教材A−1
・P88「シダのそだてかた」 それを解体(、、)して 原作つ
き(、、)の ようなものか・・・・現れる―という
「ロスト・ワールド」「ジュラシック・パーク2」マイクル・
クライトン作/スピルバーグ監督の・・・・
⇒これらの記号は、カッコ、傍点、点線、傍線、斜線 など
とは読まない。テンポ感を大切にする。
・P89 『動物(アニマル・)噺(ストーリー)』
⇒「アニマルストーリー ドウブツバナシ」
<注意>・基本はふりがな→漢字の順によむが、適宜判断す
る。
・何度も出てくる場合は、 全て2種類を読む必要は
なくどちらを読むかはその都度検討する。
・P89 『あの「しろいうさぎとくろいうさぎ」を』
⇒「あの(間)しろいうさぎとくろいうさぎ(間)を」
「あの(間)しろいうさぎとくろいうさぎを」 など読み方
の方法は色々あるので、そこに適する音声表現をする。
(太字:音を立てて読む)
<注意>・必ずカギカッコの後で間を取って読むとは限らな
い。
・大事にしたい文言はその直前に「間」をとることで、
その文言が活きる。
・後ろの「間」は文脈を切ってしまいかねないので読み
方に注意する。
◆教材A−2
・P90 『読んでみて欲しい(1)』
⇒読んでみて欲しい 注1 注1工藤直子〜1982、84)
注1終わり (注終わり)
・P105 『(〜理論社、1982、84)』
⇒年は付けなくても付けて読んでもいい 「1982,84」 「1982年84年」など
・P90 『(舟崎克彦+舟崎靖子)』
⇒「+」に意味はないので「+」は読まない
※質疑応答
報告書では省略させて頂きましたが、講義中および終了後、受講者からたくさんの質問が出され、それぞれ丁寧にお答えいただきました。
◆終わりに <後日、高橋先生から以下の原稿を頂きました。>
記号、符号などの処理はケースバイケース。
「活字」の世界と「音」の世界、この媒体の違いを理解して音訳
して欲しいです。文意を伝えるうえで必要かどうかを考えて下さい。
活字にはアクセントがありません。
音声化した途端、発した言葉はアクセントを持ち、単語や意味の
塊が生まれます。
記号、符号などの表記に縛られ過ぎると、文章がすっと入ってこ
ない、聞いて理解し難い音訳になってしまいます。
音訳の目指すところは、文意を正しく伝える事だと思います。
けれども、「著作権」を大切に、「原本忠実」は、音訳者がいつ
もベースに置かなければならない基本です。
「わかりやすい」を基本にすると、ちょっと違う音訳図書が出来
かねません。難しい言葉を、解りやすい言葉に読み替えたり、前後を変えて解りやすくしたり、懇切丁寧に解釈を加えたり、
と原本から離れてしまいます。
これからも、活動を通して、自然で、いきいきと文意の伝わる音
訳を目指して頑張って下さい。
以上