中印のエネルギー安全保障
[2012年01月16日(Mon)]
プロジェクト・シンジケートのウェブサイト1月16日付で、英国際戦略研究所のSanjaya Baruが、アジアの新興の大国が成長を維持しようとする中、エネルギー安保がアジアの地政学の最前線に出てきた、と言っています
すなわち、中国の温首相が、イランに代わる石油供給先を求めてサウジ、UAE、カタールを訪問したが、その背景には、中東やイスラム世界で中国の存在感を高めるという目的もあった。実際、中国は、2006年のサウジ国王の訪中以来、広範なビジネス関係や戦略的つながりを作り、湾岸で最重要のアジアの国となっている、
事情はインドも同様で、インドもエネルギー安保のためにメノン国家安全保障補佐官をサウジ、カタール、クウェートに派遣した。また、この地域には6百万のインド労働者がいて、彼らが本国に送金する金は200-300億ドルにもなる、
しかし、中印の活発な外交は、何よりもエネルギー安保への懸念の反映だ。両国はこれまで安保理のイラン制裁に同調してきたが、両国にとって重要なのはエネルギー安保であり、両国は米国の対イラン政策がアジアの経済とエネルギー安保を犠牲にしないよう説得しようとするだろう、
他方、米欧の方も、OECD諸国の経済がさえない中、中印等の経済成長が世界の不況を緩和してくれることを望んでいる、
米、中、印がイラン核問題の解決のためにイニシアチブを発揮するのが望ましく、サウジは、この問題の平和的解決のために共に働くよう、これら3カ国に呼びかければ、建設的な役割を果たせるだろう、
アジアのエネルギー安保への懸念に対処する新たな発想が必要な時期に来ていると言える。また、こうした発想は、今後アジアの中から出てくるようになるだろう、と言っています。
論説は湾岸地域で中印、特に中国の存在感が大きくなっていることを指摘し、中印ともに、エネルギー安全保障が最大の関心事であり、イランの核問題についても、米国がそのことを踏まえて、中印とともに努力することが重要だと論じています。
イランの核問題については、「安保理常任理事国+ドイツ」とイランとの交渉の場があり、中国はこの枠組みに入っていますが、インドは入っていません。バルーは、イラン核問題解決のためにサウジが米、中、印に声をかけるのがよいと言っていますが、これは、この従来の枠組みにインドを加えるべきだと言っているように聞こえますが、従来の枠組みをどうするのかがはっきりしません。
また、論説では日本への言及がありませんが、日本は石油輸入の大部分を湾岸地域に依存しており、この地域の情勢について日本が何の発言権もないのは問題で、日本は湾岸でそれなりに存在感を高めて行く必要があります。
しかし、単に石油を買い、物を売る関係だけでは限界があり、政治的な役割を果たす国にならないと存在感は高まらないでしょう。1973年の石油ショックの際、当初サウジは日本を友好国とすることに難色を示しました。その時のサウジ側の言い分は、「英仏は武器を売ってくれている友好国だ、日本が武器を売ってくれるなら、すぐ英仏並みの扱いにする」、というものでした。サウジやイランのような国との付き合いでは、政治的、戦略的な話をする必要がありますが、日本はそうした話し合いの相手にならないと思われています。こういう日本を変えて行かなければ、湾岸での存在感など、望むべくもないのかもしれません。
すなわち、中国の温首相が、イランに代わる石油供給先を求めてサウジ、UAE、カタールを訪問したが、その背景には、中東やイスラム世界で中国の存在感を高めるという目的もあった。実際、中国は、2006年のサウジ国王の訪中以来、広範なビジネス関係や戦略的つながりを作り、湾岸で最重要のアジアの国となっている、
事情はインドも同様で、インドもエネルギー安保のためにメノン国家安全保障補佐官をサウジ、カタール、クウェートに派遣した。また、この地域には6百万のインド労働者がいて、彼らが本国に送金する金は200-300億ドルにもなる、
しかし、中印の活発な外交は、何よりもエネルギー安保への懸念の反映だ。両国はこれまで安保理のイラン制裁に同調してきたが、両国にとって重要なのはエネルギー安保であり、両国は米国の対イラン政策がアジアの経済とエネルギー安保を犠牲にしないよう説得しようとするだろう、
他方、米欧の方も、OECD諸国の経済がさえない中、中印等の経済成長が世界の不況を緩和してくれることを望んでいる、
米、中、印がイラン核問題の解決のためにイニシアチブを発揮するのが望ましく、サウジは、この問題の平和的解決のために共に働くよう、これら3カ国に呼びかければ、建設的な役割を果たせるだろう、
アジアのエネルギー安保への懸念に対処する新たな発想が必要な時期に来ていると言える。また、こうした発想は、今後アジアの中から出てくるようになるだろう、と言っています。
論説は湾岸地域で中印、特に中国の存在感が大きくなっていることを指摘し、中印ともに、エネルギー安全保障が最大の関心事であり、イランの核問題についても、米国がそのことを踏まえて、中印とともに努力することが重要だと論じています。
イランの核問題については、「安保理常任理事国+ドイツ」とイランとの交渉の場があり、中国はこの枠組みに入っていますが、インドは入っていません。バルーは、イラン核問題解決のためにサウジが米、中、印に声をかけるのがよいと言っていますが、これは、この従来の枠組みにインドを加えるべきだと言っているように聞こえますが、従来の枠組みをどうするのかがはっきりしません。
また、論説では日本への言及がありませんが、日本は石油輸入の大部分を湾岸地域に依存しており、この地域の情勢について日本が何の発言権もないのは問題で、日本は湾岸でそれなりに存在感を高めて行く必要があります。
しかし、単に石油を買い、物を売る関係だけでは限界があり、政治的な役割を果たす国にならないと存在感は高まらないでしょう。1973年の石油ショックの際、当初サウジは日本を友好国とすることに難色を示しました。その時のサウジ側の言い分は、「英仏は武器を売ってくれている友好国だ、日本が武器を売ってくれるなら、すぐ英仏並みの扱いにする」、というものでした。サウジやイランのような国との付き合いでは、政治的、戦略的な話をする必要がありますが、日本はそうした話し合いの相手にならないと思われています。こういう日本を変えて行かなければ、湾岸での存在感など、望むべくもないのかもしれません。
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