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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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インドの対ミャンマー政策 [2011年12月08日(Thu)]
Project Syndicate12月8日付けで、Shashi Tharoor元インド外相が、インドの対ミャンマー政策を解説するとともに、最近のミャンマーの変化を歓迎し、ミャンマーが世界に向けて開かれるよう、インドを含む地域の民主主義諸国が助力する時期が来た、と論じています。

すなわち、今年になってテイン・セイン政権は政治犯を釈放するなど政治を開き始めており、スーチーも補欠選挙に立候補の意図を表明した。実際は、実権は軍にあり、スーチーの選挙参加も自由化の幻想を振りまくために利用するのだろうが、これまでも「管理された民主化」は、イラン、インドネシア、ソ連等でそれを操作する本人を驚かせてきた。インドも米国もこのチャンスを掴むべきだ、

実は1988年にミャンマーで軍が選挙結果を無視して民主派を弾圧した時、インドは民主主義、自由、人権の側に立って逃亡する学生を助け、インドで抵抗運動を組織することを許し、民主派の新聞や放送を支援した、

しかし、その後、インドのライバル、パキスタンと中国がミャンマーに接近、経済的利権を勝ち取り、地政学的地歩を築いてしまった。また、ミャンマー軍事政権は、インドの反体制派に聖域と武器を提供する事態となった、

そうなると、インドとしては自分の裏庭でライバルが地歩を築くのを座視するわけにはいかず、方向を180度転換、インド内のミャンマー反政府派の拠点を閉鎖し、ミャンマー軍事政権に軍事援助や情報協力を行うなど、民主化支持から軍事政権支持に変わった、

しかし、今回の選挙とテイン・セインの大統領就任に伴うミャンマーの開国は、インドの行動をある程度正当化してくれるだろう。実際、軍事政権と関係を持ちつつ、静かに変化を促したインドのような国の方が、非難や制裁によって将軍たちの態度を硬化させただけの西側諸国よりも成果を上げた、

またミャンマーは中国支援の巨大水力ダム建設を中止したが、これはミャンマーが中国の属国ではないということ、そして米国が民主化の推進役となる余地があることを示すものだ、と述べ、

米国がテイン・セインの政治的開放を額面通りに受け入れる中、ミャンマーが世界に対して窓を開くように、インドが働きかける舞台は整った、と言っています。


この論説はインドの対ミャンマー政策を的確に描写しています。対ミャンマー政策は、国際政治上の考慮と民主主義の価値のどちらを優先すべきか、という古典的なジレンマをわれわれに突き付けてきました。最近のミャンマーの動きは、軍事政権が事態の掌握に自信を深めているが故に出てきた政治統制緩和の動きでしょうが、これを利用しない手はありません。テイン・セインは単にASEAN議長国になりたいだけだ、という辛辣な見方もありますが、これもミャンマーの開放にはつながります。

政治というのはプロセスであり、一旦ボールが転がり始めると、ずっと転がることがあるものです。他に適当な選択肢がない時には、少しでも希望のあることに賭けてみるのは正しい選択です。

日本はかつてミャンマーと良好な関係にありましたが、米国の意向もあって、関係は悪化の一途をたどってきました。今日本は今方向転換をしつつあり、結構なことです。それにしても、インドのように、主体的な外交を展開することには大きなメリットがあるということに今更ながら気づかされます。米国との関係は当然重視すべきですが、対ミャンマー政策のような場面ではもっと自由に行動する方がよいように思われます。
(次回の更新は1月4日です。皆さまどうぞよいお年を。)


Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 17:02 | 中央・南アジア | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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