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世界の論調批評 

世界の流れは、時々刻々専門家によって分析考察されています。特に覇権国アメリカの評論は情勢をよく追っています。それらを紹介し、もう一度岡崎研究所の目、日本の目で分析考察します。

NPO法人岡崎研究所 理事長・所長 岡崎久彦


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中国が覇権国になる? [2011年09月05日(Mon)]
Foreign Affairs 9-10月号で、米ピーターソン国際経済研究所のArvind Subramanianが、控えめに見積もっても、2030年に中国が経済的に世界の覇権国となり、その経済力によって米国に自らの意思を押し付けることができるようになるのは避け難い、と警告しています。

すなわち、中国の追い上げについては楽観論も多いが、重要なのは、@その国が動員できる国力を示すGNP、A他の国に対する影響力に関わる貿易量、B債権国であるかどうか、の三つの指標だ。少子高齢化等の影響も勘案して、今後20年間の中国の成長率を7%とし、米国の成長率を過去30年間の平均である2.5%として計算すると、2030年には中国のGDPは世界の20%、米国は15%弱となり、中国の一人当たりのGDPは米国の半分になる、

一人当たりの生活水準が低い間は、覇権国になれないという考え方もあり、それにも一理はあるが、貧乏な国でも、国内の結束を保ち、外に向けて国力を集中することは出来る。現に、中国はアフリカ諸国などに台湾大使館を閉鎖させたりしている、

米国は1990年代に日本からの挑戦を克服したことはあるが、当時GDPの19%だった米国の財政赤字は、2020年には100%になると予想されており、また、1990年には外国による米国債保有は19%だったが、現在は50%に近く、その多くは中国が保有している、

何よりも数には勝てない。中国は人口が4倍だから、生活水準が米国の4分の1を越せば経済規模は中国の方が大きくなる。中国は、すでに世界が欲しないことが出来るようになっており、さらに、米国が欲しないことをさせられるようになれば、米国の立場は1956年のスエズ危機の際の英国と同じになる。中国が、太平洋における米軍のプレゼンスにはもう我慢できないと言って、$4兆ドルの米国債等を売りに出せば、ドルは暴落、米国の信用は落ち、米国債の買い手はなくなる。そうなった時、中国は西太平洋から米軍が引き揚げることを条件に、IMF融資を認めるかもしれない、
 
このシナリオは現実性が無いという意見もある。1956年には米国はドルの価値に影響を与えずに英国を締めつけることができたが、中国の場合は元が急騰、通商上の利益を失い、資産も目減りする。米国はその機会に安くなった米国債を買えばよいという考え方だ。しかし、10年後の中国は今とは違って、もはや安い元に固執しないかもしれない、と述べ、

中国の覇権は予想よりも早く実現するかもしれない、と結んでいます。


たしかに、スエズ危機の時は、米国の脅しが実行されれば、英国は外貨準備の危機に陥り、食糧の輸入もままならなくなる状況でした。この論説は、将来米中の国力が逆転した場合(しかも、一般の予想より遥かに早いと見ている)に、中国が米国債を大量に売りに出して起きることを想定して警告を発しているわけです。

筆者は、実績のある一流の経済学者のようであり、この論文でも、独断的な表現は避け、あり得る反論を一々掲げた上で、理論的に議論を進めており、この論文が正しい可能性があることは否定できないのでしょう。第一次大戦前のドイツの経済軍事力も予想外のスピードで拡大しました。

ただ、経済の専門家ではない者として思いつくことを一つ言えば、スエズの場合と違うのは、英スターリングは既にその10年前に主要通貨の地位をドルに譲っていましたが、ドルは当分基軸通貨であり続けると予想されることです。ドルが基軸通貨(少なくともその一つ)であり、それが高度な技術に基づく軍事力に支えられている限り、米国はドルを印刷し続ければ、行き詰ることは無いのではないかと思われます。
Posted by NPO法人 岡崎研究所 at 16:20 | 中国・台湾 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)
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