米国経済の大停滞 その1
[2012年01月16日(月)]
米ジョージ・メイソン大学のTyler Cowen教授が、その著書「The Great Stagnation」で、米国経済の不振は、過去米国経済の発展を支えてきた、無償の土地、イノベーション、十分教育を受けていない賢い子供たち、という3つの「容易に収穫できる果実」がほぼ食べ尽くされてしまったためだ、と論じています。
すなわち、19世紀末まで米国には自由に利用できる肥沃な土地がふんだんにああったし、20世紀前半までは、電力、モーター、自動車、航空機、家電製品、電話、医薬品、大量生産システム、テレビ等、目覚しい新技術が次々に現れて生活に取り入れられた。しかし今日では、インターネットを除いて、我々の生活は物質面で1953年とあまり変わっていない。また、20世紀前半には、適切な教育を受けられない才能ある若者が大勢いて、彼らを高校に通わすことで生産性を大幅に向上させることができた、
こうした時代が1970年代頃に終ったことを示す数値の一つが、世帯所得の中央値の伸び率だ。1947年から1973年までの26年間は2倍以上伸びた($21,771からから$44,381)のに、その後2004年までの31年間は22%弱しか伸びていない、
もう一つの数値は人口当たりのイノベーション件数で、19世紀後半まで増えたあと減少に転じ、1955年頃から大きく落ち込み始めた。また、近年のイノベーションの多くは「公共財」ではなく、「私的財」であり、恩恵を受ける人々は必ずしも多くない、
そうした中で、最も革命的なイノベーションはインターネットで、我々の生活と思考に大きな影響を及ぼしている。しかしインターネットが上げる収入は比較的少なく、雇用創出力も大きくない。20世紀前半、フォードとGMは何百万もの雇用を生み出したが、今日のインターネット関連企業は数万人の雇用しか生んでいない。しかも、富裕層がダイヤを買う代わりにインターネットを楽しむなど、人々が大挙して物質主義から離れる傾向があり、それによる打撃も大きい、
また、最近の米国経済は生産性が向上し、GDPが増えているのでさほど心配ないという議論があるが、中身をよく吟味する必要がある。例えば、政府、医療、教育の3大重要部門についてみると、@政府支出は、大きくなればなるほど、核心的部門ではなく、選択的、周辺的部門に支出され、その価値は下がるのに、全ての政府支出は同じに計算され、GDPの一部となる。従って、政府の役割が大きくなればなるほど、GDPはわれわれの生活水準の向上を過大評価する、A米国はGDPの17%と、どの国よりも多額の金を医療サービスに使っているが、米国人の平均寿命は日、豪、仏などより低く、医療支出の増大が、国民をより健康にしているとは思えない、B米国はGDPの約6%を教育に使っているが、権威ある調査によれば、17歳の読解力は1971年とさして変わらず、数学力は1973年とほぼ同じだ、
つまり、これら3部門は米国のGDPの25%を占め、最も急速に成長している分野だが、その質と成果は過大評価され、出費に見合っていない、と述べ、
要するに、我々は、生産性やGDPの指標が示すよりよほど貧しいということかもしれない、と言っています。
昨年発売されてベストセラーとなった“The Great Stagnation”は、米主要メディアから絶賛され、大きな波紋を呼んでいます。その一つの大きな理由が、米国人の生活水準は1973年頃をピークに、その後伸び悩んでいるが、それは技術革新が停滞したためだという議論です。
これに対しては、米国経済は1973年以降も成長しているし、IT技術革命、インターネットも出現している、という反論がありますが、コーエンは、@確かにGDPは伸びているが、政府、医療、教育部門を分析すれば明らかなように、それは生活水準の伸びに反映されていない、Aインターネットは、国家経済に対する付加価値が少なく、雇用効果も限られている、と説明、世帯所得の中央値1973年以降伸び悩んでいることが何よりの証拠だ、と言っています。
米国では中流階級の不満が高まっていると言われていますが、それは高所得者優遇という相対的理由だけではなく、世帯所得の中央値の伸び悩みという絶対的理由によるものであることが明らかにされています。
全体として米国経済の現状の問題点を独自の視点から鋭く分析した、興味深い議論です。
すなわち、19世紀末まで米国には自由に利用できる肥沃な土地がふんだんにああったし、20世紀前半までは、電力、モーター、自動車、航空機、家電製品、電話、医薬品、大量生産システム、テレビ等、目覚しい新技術が次々に現れて生活に取り入れられた。しかし今日では、インターネットを除いて、我々の生活は物質面で1953年とあまり変わっていない。また、20世紀前半には、適切な教育を受けられない才能ある若者が大勢いて、彼らを高校に通わすことで生産性を大幅に向上させることができた、
こうした時代が1970年代頃に終ったことを示す数値の一つが、世帯所得の中央値の伸び率だ。1947年から1973年までの26年間は2倍以上伸びた($21,771からから$44,381)のに、その後2004年までの31年間は22%弱しか伸びていない、
もう一つの数値は人口当たりのイノベーション件数で、19世紀後半まで増えたあと減少に転じ、1955年頃から大きく落ち込み始めた。また、近年のイノベーションの多くは「公共財」ではなく、「私的財」であり、恩恵を受ける人々は必ずしも多くない、
そうした中で、最も革命的なイノベーションはインターネットで、我々の生活と思考に大きな影響を及ぼしている。しかしインターネットが上げる収入は比較的少なく、雇用創出力も大きくない。20世紀前半、フォードとGMは何百万もの雇用を生み出したが、今日のインターネット関連企業は数万人の雇用しか生んでいない。しかも、富裕層がダイヤを買う代わりにインターネットを楽しむなど、人々が大挙して物質主義から離れる傾向があり、それによる打撃も大きい、
また、最近の米国経済は生産性が向上し、GDPが増えているのでさほど心配ないという議論があるが、中身をよく吟味する必要がある。例えば、政府、医療、教育の3大重要部門についてみると、@政府支出は、大きくなればなるほど、核心的部門ではなく、選択的、周辺的部門に支出され、その価値は下がるのに、全ての政府支出は同じに計算され、GDPの一部となる。従って、政府の役割が大きくなればなるほど、GDPはわれわれの生活水準の向上を過大評価する、A米国はGDPの17%と、どの国よりも多額の金を医療サービスに使っているが、米国人の平均寿命は日、豪、仏などより低く、医療支出の増大が、国民をより健康にしているとは思えない、B米国はGDPの約6%を教育に使っているが、権威ある調査によれば、17歳の読解力は1971年とさして変わらず、数学力は1973年とほぼ同じだ、
つまり、これら3部門は米国のGDPの25%を占め、最も急速に成長している分野だが、その質と成果は過大評価され、出費に見合っていない、と述べ、
要するに、我々は、生産性やGDPの指標が示すよりよほど貧しいということかもしれない、と言っています。
昨年発売されてベストセラーとなった“The Great Stagnation”は、米主要メディアから絶賛され、大きな波紋を呼んでいます。その一つの大きな理由が、米国人の生活水準は1973年頃をピークに、その後伸び悩んでいるが、それは技術革新が停滞したためだという議論です。
これに対しては、米国経済は1973年以降も成長しているし、IT技術革命、インターネットも出現している、という反論がありますが、コーエンは、@確かにGDPは伸びているが、政府、医療、教育部門を分析すれば明らかなように、それは生活水準の伸びに反映されていない、Aインターネットは、国家経済に対する付加価値が少なく、雇用効果も限られている、と説明、世帯所得の中央値1973年以降伸び悩んでいることが何よりの証拠だ、と言っています。
米国では中流階級の不満が高まっていると言われていますが、それは高所得者優遇という相対的理由だけではなく、世帯所得の中央値の伸び悩みという絶対的理由によるものであることが明らかにされています。
全体として米国経済の現状の問題点を独自の視点から鋭く分析した、興味深い議論です。



