8月5日(火曜日)
朝8時、ホテルの前でタクシーを拾い、MILIへ向かう。昨日、MILIのメンバーにもらっていた地図を示して交渉。最初のタクシーは何と9000チャットを要求したのでパス。5000チャットでOKというタクシーを見つけて出発。
MILIのオフィスにやって来たのは、新しいオフィスの庭にプレハブ作りで新設したYangon Disability Business Incubation Centerの開設記念式典が行われるため。併せて、タクシービジネスのための6台の車両の引き渡し式も行われる。日本財団を代表してで挨拶するよう頼まれていたのだ。
式典が始まるのは10時だったが、私が着いたのは、30分以上早い9時半頃。昨日、打合せをした際に、早めに来るよう頼まれていたからだ。
それは、ユヤトゥさんが私の日本語のスピーチをミャンマー語に通訳することになっていたので、そのための打合せをすることになっていたため。昨日のうちに,日本語で書いた骨子は送ってあったのだが、それを昨夜のうちに少し手を加えたりして修正したので、齟齬のないように着いて早々に改訂個所について説明する。
<インキュベーションセンター開所式が始まった>
彼女は、日本語が3人の中でも一番うまい。ところが、他の二人と違い日本語は基本的に独学だ。両手に障害があり、ペンや本を持つのも困難だが、ヤンゴン大学大学院の植物学の修士課程を卒業したという努力家である。
説明がほぼ終わったところで、時間になったので着席するよう連絡が入った。式の会場は戸建ての新しいオフィスの庭にこしらえた大きなテントの中。プレハブのインキュベーションセンターが建ったので半分程になってしまった庭を覆い尽くすようにテントが張られ、その中にはプラスティックの椅子がぎっしりと並べられ、100人近い人々が座って待っていた。
インキュベーションセンターの開所式が始まった。デカロさんたちも来ていた。テチーさんたちの姿も見える。トミーさんは来賓席と向かい合って座り、手話通訳の準備体制。
先ず最初に、ミャンマー人権委員会のシッミャイン事務局長が来賓として挨拶。次いで、社会福祉省を代表してユユシュェさんがスピーチ。主催者を代表してネイリンソウさんの挨拶の後、活動を紹介するビデオの上映と続いた。そして、6台の車両の贈呈式の後、私がスピーチをした。
<ミャンマー人権委員会の事務局長が来賓として挨拶>
私は、次のように述べた
私は、今から丁度3年前、MILIの設立直後にその若きリーダーたちと知り合った。その時、彼らから、障害の分野を超えて集まり、一致団結して自らの環境を変えて行きたいという熱い決意を聞き、大変感銘を受けたことから協力関係が始まった。それから僅か3年で、MILIの支部は18箇所に拡がり、会員は2000人を超えるまでになった。私は、MILIの実行力を非常に高く評価している。
今回、新しく今までよりずっと広いオフィスを得て、彼らの活動は、益々、発展するものと確信している。
MILIは、Myanmar Independent Living Initiativeと言う名前が示している通り、障害者自身が人に頼るのではなく自立することを目指し、それに向かってお互いに助け合うことを目的として設立された。
私は、常々、彼らが目標としている「自立」は、advocacyとして政府に実現を呼びかけるだけでは不十分で、自らが経済活動に積極的に入って行くことが重要であると思っている。
それには組織としての事業の運営と同時に、個々人が経済活動に従事しやすい環境を組織の力として作る必要があると思う。 タクシーは前者の例であるし、インキュベーションセンターは後者である。
<日本財団が寄贈した6台の車両も勢揃い>
元々、タクシービジネスのアイデアは、彼らから自分たちの活動をする上で、ヤンゴン市内の交通機関の不備が障害になっているので、移動手段としての車の寄付を打診されたことがきっかけである。
ただ、車があっても、運転手を雇い燃料代を払って行くためのコストがかかるが、それを全額利用者が負担出来るのか? ならば、タクシービジネスとして収益源を確保、それを原資にユーザーのコストを補填することを考えたらどうか、と提案したところ、同意が得られた。
一方、インキュベーションセンターについては、カンボジアで奨学金を供与している障害のある大学生たちと彼らの就職問題を話しあった際に、就職が難しいので在宅でパソコンを使って起業したいので、パソコンの購入費とインターネット接続費用を支援して欲しいという声が挙がったことがきっかけになっている。
個々人の自宅でのeBusinessをサポートするのではなく、障害者でも使いやすいように配慮された会員制のインターネットカフェのような共同で使えるものはどうか、と提案したところ、賛同を得て、今年の初めにプノンペンで第一号が開店した。
<テレビ局のインタビューを受けるユヤトゥーさん>
今回のヤンゴンのインキュベーションセンターは、第2号店である。このファシリティーを使って、remoteオフィスとして働く人がたくさん出てくることを期待している。しばらく、ここで働いたのちに、自信がついたら、自分のパソコンを買って、インターネット契約をして、家で働くようにすれば良い。更には、このファシリティーを使って起業し、お客さんがついてビジネスとして上手くやって行けると思ったら、自分の家で起業すれば良い。それをサポートする施設にしたい。それがインキュベーションセンターと名付けた理由である。
MILIのメンバーたちは、このコンセプトを自分たちのアイデアで更に進化させ、ヤンゴンインキュベーションセンターをタクシービジネスなどの共同の運営母体としても位置付けた。この組織の元で、障害者の若者たちは、働く場所を得て、自信をつけて、巣立っていくことであろうと確信している。
今日集まったMILIメンバー以外の参加者の皆さんにお願いしたい。勇敢にも、このように新らしいChallengeに乗り出したこの素晴らしい若者たちを、どうか今後も励まし暖かく見守って行って頂きたい。They are the agents of change.
<ユージンさんのお父さん>
MILIからパラミ病院へ。MILIでタクシーを呼んでもらうと2000チャット。先月の出張時の入国ビザのトラブルの際、大変お世話になったユージンさんにご挨拶するためだ。また、彼が関わっている携帯電話による画像通信を使った遠隔診断サポートシステムである「テレメディシン」事業を見せてもらおうと考えたためだ。
12階建てのパラミ病院の最上階に設けられたコールセンターには5、6人の女性たちがコンピューター画面を覗きながらなにやら作業をしていた。そして、屋上にある大きなパラボラアンテナが見渡せる部屋には2人の医師が詰めていた。ユージンさんが色々説明してくれた。ユージンさんの妹さんにも会うことが出来た。妹さんから、彼のお父さんが若い時に東京のNHKを訪問し、テレビ番組に出演した時の写真を見せてもらった。
パラミ病院からは、流しを拾ってもらおうとするが最初の2台には断られてしまう。夕方の市内中心部の交通渋滞を嫌うタクシー運転手が増えた。ようやく、見つけたタクシーの料金は4000チャット。
08時 ホテル出発
09時 MILI打合せ
10時 MILIインキュベーションセンター開所式
12時 テレビ各社インタビュー
13時 MILI打合せ
14時 テレメディシン事業本部訪問