5月15日(金曜日)
正午前にタイ保健省の伝統医療局へ向かう。ASEAN事務局長特別顧問のラジャさんも合流して、8月末のASEAN地域伝統医療国際会議に向けて協議。3日間の会期の基本的な枠組みが決まる。当初期待されたシリントーン王女の出席は、別の行事との関係から見送り。その代わり、保健大臣の出席とスピーチが決まる。初日の開会式でのスピーチは、ASEANのスリン・ピスワン事務局長、日本財団の笹川会長を入れた3人で決定。 <タイ国内4か所で配布された置き薬箱とその中身>
そのあと、私一人は、保健省の医務サービス局へ。今年の初めから始まったタイ国内での置き薬事業の現状報告を受けるとともに、6月にも計画されているタイ国内でのキャンペーン国民集会についての情報入手と、タイ保健省係官の対日研修の打合せを行う。
タイ国内4か所で1600世帯を対象にした置き薬キットのパイロット事業が始まったのは、2007年のウランバートルで日本財団がWHO(世界保健機関)と共同で開催した伝統医療に関する国際会議に、当時、タイ保健省医務サービス局の局長であったスパチャイ博士が参加したのがきっかけだ。彼の口から、タイでも日本財団がモンゴルの遊牧民相手に実施している置き薬の家庭内配布をやってみたいと聞いた時には、私は思わず彼に言った。「東南アジアでは既に、シンガポールに次ぐ医療先進国とも言われるタイで今更なぜ」。彼の答えは、「タクシン政権時代に始まった医療サービスの無料化の結果、財政負担が急増する一方で、国民の方は、病院が大混雑してしまい、肝心の医療サービスを受けることが困難になっている、という状況にある。たとえ、有料であっても簡単な病気なら、家庭内で副作用の少ない伝統薬を自ら服用できるようにすれば、一定の利用が見込まれるはず。これによって、どこまで病院の混雑と財政負担が軽減されるか実証実験をしてみたい」、というものだった。そこで、日本財団は、費用を保健省と折半すること、チュラロンコン大学の協力を得て、きちんとした科学的なデータを収集し、それを内外に公表すること、を条件に事業を支援することに決めた。<プミボン国王をあしらったキャンペーン用カレンダー>
実施まで準備に時間がかかったとはいえ、タイ保健省のこの事業にかける意気込みは我々の当初の予想をはるかに越えるものであった。全土でわずか1600世帯のみが対象というこの事業のために、素晴らしい手作りのバスケットとそれぞれの薬の専用容器の表面に、日タイ両国の国旗をデザインした美しい専用ロゴ入りの置き薬キットを作り上げた。しかも、キャンペーン用に作ったカレンダーにはプミボン国王の(随分若かりし頃のではあるが)写真が大きくあしらわれている。タイで国王の肖像を使う許可を獲得したというのは、それだけで、大変な待遇である。即ち、王室の賛同を受けている重要事業であることを意味する。 <置き薬を入れる箱は、素晴らしい手作りのバスケット>
<日タイ両国の国旗をあしらった薬箱 日本財団のロゴも>
<中身の個々の薬にも美しいロゴが>
12時 保健省伝統医療局アンチャリーさん
15時 保健省医務サービス局ドゥアンタさん
19時 The Nation紙 カビ副編集主幹