置き薬プロジェクトの有効性検証のため、調査実施を合意 [2010年05月18日(Tue)]
5月18日(火曜日)
ホテルから徒歩で国際貿易センタービルへ。世界銀行の北京事務所がこのビルの中に入っているのだ。 保健衛生事業担当者である王さんに会うのは今年1月に続き、2回目。英語が堪能で、自身も医師の資格を持つ彼は、まだ30代前半という若さながら、バリバリと仕事をこなす。 1月に会って私の話に興味をもった彼は、先週、モンゴルに出張し保健大臣に会って、モンゴル保健省の意向を確認してきたばかり。 開口一番、「いい事業を紹介してもらってありがとう」と言われ私は面喰ってしまった。モンゴルの置き薬事業の全国展開のために世界銀行がローンを供与することがあたかも決まってしまっているかの口ぶりだ。 <世界銀行の入る国際貿易センタービル> 彼は、自分は以前から日本財団を尊敬していた、一緒に仕事を出来るのは光栄だという。日中笹川医学奨学金事業などことは、自分の友人たちにも恩恵を受けた者がいるのでよく知っているし、世界保健機関(WHO)を通じたハンセン病根絶のための活動など、日本財団の対中支援にはとても感謝している、というのだ。 彼の言う日中笹川医学奨学金事業とは、日本財団の子財団である笹川記念保健医療財団が20年にわたり実施して来た、中国からの医学生に対する一年間の対日研修のことで、これまでに2000人以上もの卒業生を生み出した。2年前の四川省の大地震の際には、日本政府が派遣した医師団を補佐し、また中国語の出来ない医師たちの通訳として、日中笹川医学奨学金OB会のメンバーたちが大活躍したことは余り知られていないが、知る人ぞ知る事実である。 前回は初対面であるにもかかわらず、とても友好的であるのが印象的であったが、その背景には彼の持つ日本財団グループに対する大変高い評価があったのだ、ということが分かり私も大変うれしかった。 彼との今回の打合せは、本事業の有効性を客観的に検証するための現地調査の実施について。世界銀行に資金供与をしてもらうためには、しっかりした現地調査とポジティブな評価が必要となるのだ。実施期間、必要経費、そのための事前手続き、などを話し合う。 王さんは、調査の結論がポジティブなものになることは信じて疑わないようであった。2012年までなら世銀のモンゴルに対する融資には、特別に無金利のものが割り当てられる可能性があるとか。ならばそれに間に合うよう、急いで準備を済ませることで合意。 世界銀行の事業年度は6月末に終わるので、今は一番忙しい時期なのだが、何とか頑張る、と言ってくれた王さんとがっちり握手をして別れた。 <貿易センタービルの前の通り> 日本を出る前にチェックした天気予報では北京は毎日雨となっていたのだが、なぜか快晴。世界銀行での打ち合わせも予想以上にうまく行ったので、晴れ晴れとした気分で、ホテルまで歩いて戻る。 その途中、あるビルの横の歩道で、5-6人の人たちが路上に抗議文を広げているのが目についた。文面も読んでみるとどうやら強制的な立ち退きに抗議しているようであった。ふと眼を見上げると、10メートルほど離れたところに、5、6人の背広姿の男たちがいる。私服の警察官であろうが、特に制止する様子もなく佇んでいる。 すると、突然大声をあげて男たちが道路の反対側に駆けだした。その先を逃げる一人の男。だが、あっという間に、逃げる男も、追いかける私服警官達の姿も、角を曲がって見えなくなってしまった。結局、何が起こったのかは分からずじまい。 短期間に大きく変貌した北京だが、その一つの理由は、社会主義国であるため、土地の強制収用がやりやすく、公共工事のスピードが早いということがある。しかし、最近では、市民の間に、権利意識が高まり、立ち退きなどに従順に従うばかりではなくなっている。 <立ち退きの強制に抗議する人々(捕り物の行方を眼で追う)> ホテルに戻ってみると、豪華な飾り付けが行われており結婚式の様子。ただ、従業員によると、これは人気テレビのドラマの撮影なのだとか。道理で、クレーン式のテレビカメラがある筈だ。 それにしても、中国人も豊かになったものだ。北京の街中には、日本料理店も増えたが、今は中国人の客で一杯だ。これらの高級レストランは、昔は外国人ばかりが利用していたものだった。 しかし、豊かになった人ばかりではない。ホテルの前の、横断地下道には手作りの粗末な胡弓のような楽器をもつ物乞いの姿もあった。 <横断地下道には物乞いの姿も> 12時 世界銀行 北京事務所訪問 18時半 NHK中国総局 |