12月3日(土曜日)
<ホテルの前のクリスマスツリー>
昨日でパリでの予定していた行事は終わったが、夕方の帰国便まで少し時間がある。
この時間をどうやって潰そうかと考えていたところ、数日前に同行の新田さんにベルギーに出向中の日本財団職員、吉田君から連絡があった。時間があればブラッセルから私たちに会いに来ようと思うがどうか、と。
「勿論、大歓迎」と返事をしてもらい、今日の昼前に落ち合うことになった。
吉田稔君は最近まで日本財団で障害者公共政策大学院(IDPP)の担当として活躍してくれていた若手職員。自身も、聴覚障害者ということで手話通訳者の蓮池さんとコンビを組み、国際部では私の下で主に、障害者事業を担当してくれていたのだが、その後、審査本部に異動。そして、今年の10月から欧州議会事務局に出向している。
<吉田稔君>
今回は、彼とホテルの近くで落ち合った後、私が贔屓にしているリブゴーシュにある中華料理店で新田さんと三人で昼食を取りながらブリュッセルの仕事ぶりを話してもらった。
吉田君は37歳。聴覚に障害はあるが、いわゆる口話法というテクニックを身に付け、よほど複雑な話でない限り、普通に会話し読唇術でこちらの会話も聞き取ってくれる。
彼が日本財団に入ってくれたのは8年前。障害者支援に力を入れる日本財団にとっては、障害当事者という立場から貢献してもらえる人を、ということで彼をスカウトしたのだった。
彼は幼いときに病気ににかかり、聴覚障害者になったが、ご両親の方針で口話法を身に付け、小中校とも一般学級で学んだ。しかし、小学校高学年の時、親に内緒で手話サークルに入り手話も身に着けた。さらに、米国で英語と米国手話を習い、ロチェスターにある国立聾理工学院(NTID)ではITを専攻。さらに大学院に入り公共政策で修士号を取ったと言う輝かしい経歴の持ち主。
<シャンゼリゼの両側にクリスマスマーケット>
彼が席を置いているのは欧州議会事務局にあるハンガリー出身の自身も聴覚障害者というアダム・コーシャ議員のオフィス。主に使うのは国際手話だと言う。文書はハンガリー語が多くて読めない、とこぼしていたが楽しそうだ。国際部時代は、部内でもぴか一の素晴らしい英語力の持ち主で、彼の書く英文にほれぼれとしたものである。
昼食の後、三人でシャンゼリゼのクリスマスマーケット見物に向かった。人ごみに中に異常に背の高い男性を発見。
吉田君のNTID時代の恩師であるデカロ教授の言葉を思い出した。「障害は相対的な関係を表す概念に過ぎない。自分のようにとても背が低い人間は、米国では一種の障害者である」
1年半の出向という契約でこの正月は赴任間もないので帰国せずに頑張ります、と言う吉田君にエールを送りたい。
<人混みの中に異常に背の高い人物を発見>
11時半 吉田稔君
12時 昼食
16時10分 ホテル出発
19時00分 パリ発