5月10日(土曜日)
今回も私の都合で、プノンペン滞在は週末にかけてのスケジュール。しかし、週末にも関らず、JICA専門家で、昨年までミャンマーでの学校作りを陣頭指揮してもらっていた河本さんが呼びかけ、現地で活躍中の日本人の皆さんが集まってくれた。日本財団が企画準備中の事業の人材探しを中心に相談。
夕食は、英国放送教会(BBC )のメンバーが作ったNGOである BBC World Service Trustのカンボジア代表で前回面談したキャサリン・サグさんが病気で降板、ピンチヒッターとして最近就任したばかりのフランシス・コックスさんと。すでに、プロジェクトプロポーザルを貰っているカンボジア僻地の中学校のためのラジオによる放送英語教育の事業の進め方を相談。
食事の前に、カンボジア盲人協会(ABC)にブンマオ事務局長に電話。彼が2年前に養女にした17歳の盲人女性サバンリーさんを入院中の病院に見舞うことにした。
カンボジア式の病気見舞いに無知な私は、いつも使っているタクシーの運転手、ソルヤ君に相談したところ、カンボジアで一般的なものとして薦められたのは何と、缶詰に入った長期保存用のミルク。12個入りのものを購入して病院へ。言ってみると立派な病院で、小奇麗な病室は個室。ブンマオさんが一人で看病していた。目の見えない人が見えない病人を看病するとは、とこちらは絶句。
日本財団とは長い付き合いのブンマオ事務局長は当年37歳、若手ながらカンボジアの盲人社会の押しも押されぬリーダー。彼の半生は波乱万丈で、カンボジア国の悲劇の体現者と言って良い。彼が、2年前に見るに見かねて養女にしたサバンリーさんも、17歳にして早くも悲運と幸運の狭間を行ったり来たりしていると言えようか。
彼女は幼くして両親に捨てられ、オーストラリア人夫妻に引き取られ、豪州に渡った。現実には、お手伝いさんのように扱われたようだ。お陰で、英語はうまくなり、料理も目が見えないにも拘らず、何でも出来るようになった、という。ところが、2年前、オーストラリアからカンボジアに戻され、捨てられたのだそうだ。そして、見かねたブンマオさんの養女になった。
先月、我々の元にブンマオさんからSOSのメールが届いた。彼女が命がかかわるほど深刻な腸の急病になり手術をすることになったが、手術台が30万円もかかる、というのだ。これに対し、彼を支援してきた米国人の盲人学校の先生であるラリーさんなどが10万円ずつ寄付してくれることになり、日本財団の笹川会長が10万円、私も小額のカンパを送った。
幸い手術は成功したのだが、重篤な胃潰瘍で食事を受け付けず、まだ入院しているというのだ。話を聞いてみると、むしろ拒食症のようだ。ブンマオさんによると、彼女は、二度も「親」に捨てられたことが深刻なトラウマになっているのだそうだ。ブンマオさんが最近結婚し、赤ちゃんが生まれたことが、どうやら彼女にまた捨てられるのではないかと言う不安を呼び覚ましたようだ、という。
しかし、実際に会って見ると、サバンリーさんは素晴らしい若者であった。英語が堪能なので、私たちは彼女の手を握って1時間近く話し合った。ブンマオさんから、笹川会長や私のことを聞いて、ずっと会いたいと思っていた。自分は目は見えないがこうやって現実に会うことが出来て本当に嬉しい、と言ってくれた。将来の夢は聞くと、医者になりたいとはにかんだ。そして、今度会うときは美味しい料理を作って待っているからと、約束してくれた。病院を出ながら、とてもさわやかに気分になった。本当に来て良かった。
運転手のソルヤ君の表情は複雑だった。自分には、とうていあのような良い病院に子供を入院させる金は無いとつぶやく。先だって、彼の3歳の娘さんが夜中に発熱した際は、おばあちゃんが朝一番に、スイス人が作った無料のクリニックに行き順番札を取りに並んだのだそうだ。それでも、実際の診察は夕方4時頃になった、という。これが貧しい国の庶民の現実だ。カンボジアでやらないといけないことはまだまだ沢山ある。
12時 JICA河本専門家らと懇談
15時 サバンリーさん病気見舞い
18時半 BBCトラストコックス代表と面談
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