アユと郷愁13,14話 [2016年01月01日(Fri)]
高橋泰子理事長の連載は続きます。
掲載のソースはこちら https://readyfor.jp/projects/ayu 2012年6月19日 大原川 https://blog.canpan.info/ohgreen/archive/1596 「静間川の源流の旅」が終わった1年後、請われて県の河川整備計画検討委員の職についた。平成15年にNPO法人格を取得してからというもの、様々な委員の委嘱を受けた。当初、私に話がきたのは女性委員を増やしたい県の意向と、「緑と水の連絡会議」という「山の緑と川の水を想像させる会の名称」が要因ではなかったろうかと、うがった見方をしていた。 河川法はそれまでの治水・利水だけではなく、水辺の空間や地域独特の生物の生息や生育環境も一緒にとらえるという社会変化を盛り込むことになった。そして、平成9年には河川環境の整備と保全という要素が入り、地域の意見を反映し、その個性を生かした川つくりを求められるようになったのだ。 「な〜んだ。それならまかしておけ。」と県内の河川整備基本計画、そして河川整備計画の原案作成に10年間携わった。河川整備計画作成の折には地域に出向いて視察し、地域の方々と意見交換し、その地の文化や地域の実情を知ることになった。安来の伯太川、隠岐の八尾川など島根県内中を歩き、住民の川に対する思いを聞き、また地域独特の文化や植生の違いを目に焼き付けた。 ある時、ふと思って質問してしまった。「静間川の源流の旅」の報告会で手を挙げたおっさんの漁業権の話を!「あの〜、静間川には漁業権が設定されていないんですけど、何故ですか?」って。事務局は皆で顔を見合わせている。そんな質問が出るとは予想だにしていない感じだ。誰が答えるか、譲り合いしている。そのうち「静間川は二級河川で漁業組合もない。したがって、漁業権を設定してもそれを管理する団体も人もいないからである。」という趣旨の回答。わかったような、分からない答えだ。それでも「え〜、人の問題ですか?」と返す私。まるでそうだとでもいうようなうなずき具合だ。「ふ〜ん。あのおっさんのような人が表に出ればそうかもね。」と違う意味で納得してしまった。 数年前、県内でも最も絶滅の恐れが高い絶滅危惧種である「ミナミアカヒレタビラ」という魚の観察会に参加した。この魚は環境省のレッドリストの中でも絶滅危惧TB類に分類されるほどのものだ。島根県では宍道湖にそそぐ川の一部と大田市を流れる大原川にしか生息していない。その保護活動を平成19年から県や市、小学校、そして保護団体が連携して行っているという。「ミナミアカヒレタビラ」看板は見るが、本物を拝んだことがない。「是非、この目で見たい。」と連れ立って参加を決めたものだ。 久手の公民館で基礎知識やこれまでの保護活動の成果、課題などを学んだ。タナゴ亜科のこの魚はどぶ貝、いし貝等の2枚貝のえらに卵を産んで、仔魚期をその貝の中で過ごす。その貝が、水質汚濁や泥の堆積など河川環境の悪化により見られなくなってきたことがこの魚の減少の要因になっているという。 さて、いよいよ現地に出て観察の段である。結構な水量の川の中、数か所ワナが仕掛けてあった。一つ目のワナをあげる。川の畔に集まった観衆が息をのむ。本物を見たことがないのに、係りの人の顔色を見て「ミナミアカヒレタビラ」がかかっていないことを察する。結局、期待は裏切られ、全てのワナに目当ての魚がかかることはなかった。「残念。」みんな帰途に着こうとする。 すると、突然、透明な魚専用の観察箱を手に他の係員が「みなさん、目当ての魚は見れなかったんですが、この魚なんだかわかりますか?」と10pくらいの長細い魚を指さす。 「????」声にならない声の中、「アユ?」と誰かが自信なさそうに答えた。「そうです。アユですよ。」「へー、この川にアユがいるんだ。」とアユを見た感激に「ミナミアカヒレタビラ」の姿をいつか大原川に見れる日があるかもしれないと、期待するのだった。 |
Posted by
ginmori
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