第24回全国首長連携交流会 第3分科会「農業」部会
これからの農業・農村の担い手づくりと技術の応用
日 時: 2019年5月11日
所 : 政策研究大学院大学
主 催: 全国首長連携交流会
事務局: NPO地域交流センター
http://www.jrec.or.jp/はじめに
農村人口は高度経済成長期より減少を続けており、1970年代には700万人を超えていた農業就業人口は、2018年には175万人に。耕作放棄地が増え、食糧自給率も低下傾向の中、政府は農業の自由化を進め、企業の農業への参入促進方針を打ち出している。一方、国連は2019〜28年を「家族農業の10年」と定め、「小農の権利宣言」を決議し、家族農業保護政策を推進中。
一方、AI等の技術革新やTPP等のグローバル化が進む中で、これからの農村・農業は誰が支えていくのか、外国人労働者をどう活用するのか等、多角的に考えたい。
第一部 これからの農業の担い手と農業経営を考える
基調報告「農業の未来に向かって―農業の新しい働き方―」依田學(農水省経営局経営政策課長)
・ 基幹的農業従事者の平均年齢は67歳、40代以下は1割と少ない。
・ 2017年の国連総会において、世界の食料安全保障確保と貧困撲滅に大きな役割を果たしている家族農業について、@各国が家族農業に係る施策を進めるとともにその経験を他国と共有すること、AFAO等の国際機関は各国等による活動計画の策定・展開を先導すること等を求めている。
・ 我が国の農業経営体数は138万経営体で、家族農業が98%を占め、他の先進国と同様である。
・ 農業の未来を切り拓いていくためのポイントは、@AIやロボットなどの先端技術を活用した「スマート農業」、A農地の集積と集約化、B女性など多様な人材が活躍できる環境づくり。
・ スマート農業加速化実証プロジェクト:全国の60ヵ所で行っている。
・ 農地バンク事業:農地の集積・集約化を進めるための仕組みとして創設し、担い手の農地利用面積は再び上昇に転じ、平成29年度はシェア55.2%に拡大した。
・ 従来不十分だった「農地バンク、JA、市町村、農業委員会の連携」から、関係者が一体となって地域の農地利用の将来構想を徹底して話し合い、人・農地プランの作成を進めている。
・ 新規就農対策:準備段階から経営確立までの総合的な支援を実施。毎年40代以下2万人に。
・ 農福連携:障害者等の活躍を通じて、社会参画・生きがいを創出する農福連携を推進している。
課題提起「農業の未来を照らし続ける」 上村光太郎(潟pシオス、静岡県磐田市)
・ 高齢化で営農できなくなった約500人の農地約40haを借りて、パートや技能実習生とともに大規模農業を展開している。仲間や地域を豊かにし、農業の未来を照らし続けるために法人化した。
・ 海外技能実習生なしでは成り立たない。受け入れ団体を立ち上げ、合理的な体制を作っている。
課題提起「後継者不足と外国人労働力の受け入れ」 毛受敏浩(日本国際交流センター)
・ 農業労働者不足対策は待ったなしの段階にあり、「農村の持続性の維持」への発想転換が必要。
・ 地域を担う人材として、外国人が祭りや消防団にも参加する等、抜本的な認識改革の時代に。
第二部 新しい時代の農業・農村振興政策を考える
基調報告「人口減少社会における農山漁村の活性化」 大畠学人(農水省農村政策推進室長)
・ 地域の共同活動の支援・地域全体で担い手を支える体制の拡充・強化策
多面的機能支払交付金、中山間地域等直接支払交付金、農村の定住条件の確保
・ 農山漁村振興交付金「スマート定住条件強化型」:ITを最大限活用した定住総合活動計画
全体意見交換:IT化、AI化の動向、鳥獣害対策、農福連携などの課題について話題提供・意見交換を行った。課題は多いが、地域の知恵を出し合って解決策を生み出している実例の報告があった。
所感:「農業の衰退」が叫ばれる中、どっこい地域の知恵を結集し、農業の再生に頑張っている人々の交流会に参加することができた。国連「家族農業の10年」に期待したい。