専 門 家 と 市 民 による 豊 洲 会 議
〜安全・安心な新市場の実現のため、SDGsの目線から考える〜
日時:2018年5月19日 所:朝日新聞社東京本社
主催:「専門家と市民による築地市場の豊洲市場移転検証会議」実行委員会
主催者挨拶:寺西俊一実行委員長
・ 開場スケジュールに負けずに、将来展望を開こう!
講演: 楡井 久(NPO日本地質汚染審査機構理事長)
「単元調査法から見た豊洲新市場の地質汚染問題」
・ 宅地や工場敷地の汚染調査法には2種類ある。一つは地質汚染科学に沿った地質汚染単元調査法で、地下の汚染物質の存在状態を支配する地層ごとに診断するもので、汚染部位を科学的に検査する方法で、地下水の流れと汚染源の特定や汚染の広がりを把握することができる。
・ 他方は、土壌汚染対策法の調査方法で、地下から採取したコアから画一的に地表、50p、1m、2m‥‥と分析試料を機械的に採取するため、汚染部位の性状・汚染状況を正確には診断することができない。
・ 因みに、豊洲新市場敷地は、石炭を乾留化して都市ガスを製造した東京ガス工場跡地で、後者による調査では正確な診断は不可能である。
・ さらに、築地市場や豊洲新市場に想定される自然災害(地層の液状化・流動化・地波現象)とその2次汚染の危険性は驚くほどである。
・ 現在の豊洲の調査結果は、調査をしていないに等しく、現地把握には地質汚染単元調査法で再調査し、汚染状況把握が不可欠である。
講演: 水谷和子(一級建築士)
「拡散する汚染、健康被害がないと言えるか」
・ 豊洲新市場は汚染問題、アクセス、流通動線など解決不能な問題山積であるのに、10月11日の開始期日しか決まっていない状況である。東京都にウソが多く、法的にも手続き的にも問題が多い。小池都知事は、自ら安全宣言を出さず、国の認可に逃げ込もうとしている。余りに情けない!
・ 問題点を列挙すると、軟弱地盤、地下水位が高い、耐震護岸ではない、盛土なしの説明がない、遮水壁高さ不足、遮水壁と地下水位偽装、緑地下雨水抑制層と下水道法違反、ピット床追加対策の意味不明、不十分な汚染調査、土壌汚染隠し等々、余りにもウソと問題隠しが多すぎる!!!
講演: 藤原寿和(化学物質問題市民研究会代表)「有害物質による将来的な健康影響のおそれ」
・ 東京ガスはコークス炉を用いて石炭を乾留して都市ガスを製造していたことから、石炭ガスの製造工程で発生するタールスラッジにはベンゼンやベンゾピレン、シアン化合物が含まれていた。
その他に、敷地内土壌中に水銀、クロム、鉛、カドミウムなどの有害物質や、地下空間の滞留水中にはモリブデン、バナジウム、ガリウム、スズ等25種類の重金属類が検出されている。
・ 敷地内から検出された化学物質の中で、人に対して明らかな発がん性物質、内分泌かく乱作用の疑いのある化学物質、子供の発達過程への影響のある物質が見られる。
・ さらに、想定されている都市圏直下型巨大地震による地下構造物や遮水壁、コンクリート床などの破損や地盤流動化によって地下に封じ込めたはずの汚染物質が再び環境中に流出する可能性を否定できない。また、地下で発生したガス状の物質や地下水中に含まれる有害物質が土壌間隙中を毛細管現象で、あるいは地震時の液状化による噴射に伴って地表に露出・噴出する恐れがある。
・ 健康リスクを「ゼロリスク」に近づけるため、「予防原則」を適用してリスク回避を講じるべき。
所感:食の安全安心は都民ばかりでなく、国民の最重要課題であるにもかかわらず、小池都知事は
解決回避に終始するばかりで、抜本的な解決に取り組む意欲も能力もない。問題は現状把握の調
査がなされていないことである。抜本的な状況把握調査と分析・解析を積み重ねて、豊洲新市場
の危険性を徹底把握し、築地市場再整備を慎重に進めることが望まれる。