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2018年10月21日

海ゴミに人の環で戦う 対馬暖流の島々

島嶼コミュニティ学会 第17回島カフェ

海ゴミに人の環で戦う 対馬暖流の島々

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日 時: 2018年10月13日 
 所 : 東洋大学 
主 催: 島嶼コミュニティ学会
講 師: 清野聡子(九州大学大学院准教授)
・ 学生時代、大島火山爆発がきっかけで、大島や三宅島に毎月調査に行っていた。その後、壱岐、五島、対馬の研究を行い、大学も東大から九大に転じることになった。
・ 九州西部は東シナ海と日本海という国際的な内海の沿岸であり、対岸は大陸、韓半島である。歴史的に遣唐使や遣隋使が有名で、長い間の交流の拠点になってきた。
・ また、対馬暖流と日本海からの寒流が交流し、豊かな海となり、クロマグロやイカ、ブリ等が豊富である。しかし、国境の海なので様々なモメゴトも続いてきた。
・ 最近の温暖化で、日本海の水温が上昇し、魚種も変化しイカが取れなくなるなど、漁業にも変化が及んでいる。
・ 一方、九州西部沿岸は、海ゴミが深刻な問題である。 対馬暖流は対馬海峡を経て東シナ海から日本海へ流入する過程でゴミを輸送している。冬季の季節風は、ゴミの輸送、漂着、堆積、分解に深く作用している。
・ 海ゴミはヒドイ災害だが、最近、国内外の学生などが中心になり、ゴミ拾い等をテーマにしたボランティア・ツーリズムが生まれているのは貴重である。
・ 五島の海ゴミは深刻で、海岸に2mも堆積し、解決が困難である。塩分が含まれているので焼却不可で、山の中に積み上げている。一方、ウミガメの被災は、海産物を食糧品とする人間にも影響が及ぶことになる。
・ かつては五島のゴミは、流木が中心で、薪にすることができたが、現在は化学物質が中心になり、環境への問題や医療的問題など深刻化している。
・ プラスチックや発泡スチロールは分解し、細粒化し、マイクロプラスチック・ナノプラスチックになり、多様な環境問題の発生源となる等、真剣な対策が急務である。
・ 海ゴミ問題は、東アジアから流入してくる流出物が多く、日中韓の問題となり、現在は日中韓で委員会を設置し、長期的視点で解決を目指している。
・ ゴミだけやっていても解決は難しいが、昔の海の文化としての扱い、海の幸=魚介類、漁師の生業があってはじめて海の文化が成り立っていたことに改めて注目する必要がある。そんなことが評価され昨年、世界遺産となった宗像市の“沖ノ島と関連遺産群”に注目したい。

所感:国連では、世界の農業の95%が家族農業という実態を踏まえ、家族農業の重要性に注目し、来年から“家族農業の10年”を定めた。漁業もその中に位置づけられており、小規模農業・漁業の維持発展が大きな課題である。資源制約・環境制約の中で、ゴミ問題の共有関係にある日中韓・東アジアの間で、真剣な調査・検討・対策・技術開発を進める必要性が高まっている。