『世界がキューバの高学力に注目するわけ』
吉田太郎 築地書館 2008.10
プロローグ キューバへの誘い
サッチャー首相の民営化路線で教育が崩壊したと言われるイギリスがキューバに着目している。BBCは「ブレア首相と同じ部屋にカストロが いたら、二人は教育について話し始めるだろう。ブレアーは『一に教育、二に教育、三に教育!』と宣言したが、カストロは、識字力の向上や教育を通じて、人びとを啓発することにその人生を捧げているように思える」とリポートしている。
今、世界で注目を浴びる「格差なき教育大国」
キューバは幼稚園から大学まで教育費はタダ!!
第1章 高学力の謎を解く
・ 日本と違って、キューバの校舎の多くは、別用途の建物を無理やり学校に改装したものだ。
貧乏国キューバには多くの学校を建てるだけの資金がない。おまけに校舎はボロボロだ。
・ 教科書は毎年一年年下の生徒が譲り受けて使いまわし、ボロボロになるので表紙を修理する。
まるで江戸時代の寺子屋のようで、おまけに図表などが少ないとの評価もある。
・ 学校は朝6時半から夕方7時まで開かれ、授業は8時から4時まで、放課後は元気に遊ぶ。
学校は歩いて通える範囲内に満遍なく散りばめられ、人口過疎地では生徒一人の小学校すらあり、電線が通じていない学校にも太陽電池で電気を起こし、コンピューターを活用している。
・ 小学校では20人、中学で15人少数学級を実現し、クラブ活動を重視した全人教育と社会活動教育を推進している。
・ 機会は平等だが、クラスメート同士や校内の他のクラスと競争しあうことが奨励されている。しかし、ポイントは、生徒たちが助け合って勉強していること。他人を蹴落とすためではなく、自分を磨くための手段と考えられている。 「友が憂いに我は泣き、我が喜びに友は舞う。」
・ 政府の教育投資額は、GDP支出額の12.3%で、日本の4.7%に比較し圧倒的に多い。
第2章 脱貧困社会を目指して誕生した教育制度
・ 「教育されることが自由になる唯一の方法だ」と国民的英雄マルティは説いた。
・ 「キューバをスペインの支配下から解放して民主化する」というのがアメリカの理由だったが、戦後になされたのは民主主義化の名の下での植民地化だった。国は繁栄しても格差が広まった。
・ 革命後、カストロは教育改革を目指した。全校を国有化し、教育費を無料にした。
・ 革命当初は、内実はボロボロだった教育を学力向上と技術知識充実を目指し、改革を推進。
・ ソ連圏崩壊をカストロ政権打倒のチャンスと見た米国は経済封鎖を強化したため、公共交通は麻痺し、停電、資材不足で住宅や公共施設の修理も出来なかったが、学校は閉じなかった。
・ 政府は、景気回復に向けて様々な経済再編策を講じ、従来の基幹産業の砂糖キビに代わり、
観光業を奨励し、農工業型経済から、サービス産業のソフト経済へとシフトさせた。肥大化した省庁や国営産業の贅肉をそぎ落とし、工場を閉鎖してリストラや自由化を行った。
・ 「貧しきを憂えず、等しからざるを憂える」はソーシャル・キャピタルの名言であるが、自由化の影響は、格差を生むことになり、90年代の若者たちに閉塞感が広がった。
第3章 財政危機の中でも、さらに充実した教育制度
・ 国家財政が破綻、企業リストラを進めざるを得ない中、乳幼児や障害者、リストラされた失業者等の社会的弱者を切り捨てず、コミュニティを巻き込んだ総合学習社会の構築に取り組んだ。
・ 保育園に頼らない幼児教育システム「地域で子育て『子供を教育しよう』プログラム」を展開。公園での子供と母親の集会をベースに、ユニセフ支援の教育冊子で子供教育が推進された。
・ キューバの教育を支える先生たちは、子供たちへの深い愛情でモノ不足を克服した。
・ さらにニュー・ビジネスへ転職していった教師の不足は、高校生が小学校の教壇に立つことで補った。経済危機が格差を広げ、多くの教師が離職したが、95年には危機が底をうち教育への再投資が始まった。
・ 日本では教員免許を取得しても、就職先は保証されないが、キューバでは保証される。大学時代から教壇に立ち、その後もフォローされ、教師も学びあい、また能力を常にチェックされる。
・ 幼児教育と並んで、経済危機の中でも揺るがずに、充実したのは障害者教育である。全世界にいる6億人の障害者のうち、ケアされているのは3%、しかし、キューバでは全員とのこと。
・ 自閉症児も馬に乗るセラピーや園芸セラピーなど様々なセラピーでケアされている。
・ ソ連の崩壊で工場の半分が閉鎖され、砂糖キビ畑が1/3になった。砂糖産業には42万人が雇用され、間接的には150万人以上の生活がかかっていたので大変であった。
・ 砂糖省が立てたリストラ計画は、156の工場を、最も効率的な工場に集中し、5つを観光用の博物館に、5つは予備として操業停止にし、61は閉鎖・解体してしまう凄まじいものであった。
・ 従業員も25%がリストラされたが、農業協同組合や労働組合と政府が会議を積み上げ、閉鎖工場を学校、大学に改組し、新技能を学び、新しい技能者に転換していった。
・ 「社会主義は終わったという人もいるが、資本主義体制の国では夢見ることも出来ない雇用創出に取り組んでいる国家をここに見出すだろう。科学、芸術、人文学に関する知識も含め、世界で最も教養高き国家となることが我々の目標である」とカストロは熱く語る。
・ 砂糖にこだわらずに、観光業、ニッケル、エネルギー、バイオテクノロジー、製薬業、テレコミュニケーションなどのインフラに投資したことで、経済が多様化・活性化された。
・ 経済は観光業とニッケルの高価格に支えられて成長している。
第4章 脱ワーキングプア社会を求めて
・ 校舎の掃除や校庭管理など小学校から手伝いをしている。書物とともに農作業も大切な日課。
・ 21世紀は環境と生命産業と情報、そして文化の時代、キューバは先行している。
・ キューバにあるジョン・レノン公園の式典で、「レノンは革命家であり、私の夢も全く同じ」とカストロは語っている。
あとがき 有機農業に感心を抱いてキューバを始めて訪れてから9年が経つが、その間の変貌振りは目覚しい。商品がなかったデパートに商品が溢れ、休日には人びとで賑わっている。
所感: 日本や欧米の株価が暴落し、世界恐慌とも言われる今日、アメリカがつくりだした虚像ともギャンブルとも言える「グローバル経済」が破綻し始めている。
そんな時に、キューバの有機農業、医療を書かれた著者が、今度は教育問題に注目された。
ソ連の倒産で苦境に立たされたキューバが、貧しいけれども、平等で格差のない社会づくりに努力し続け、今ではユニセフや世界から注目されるまでになっているとのこと。日本もこの事例を参考に、額に汗して働く、平和な国になることを期待したい。一人でも多くの方が本書を直接読まれることをお勧めしたい。 日本再生への勇気を与えてくれた著者に感謝したい。
http://www.7andy.jp/books/detail/-/accd/R0371050/introd_id/Xmo46Wkio3619891iX1kiAX96AGi3i64/pg_from/u
明るい、こころ美しい日本再生「お江戸観光エコシティー」を夢見続けたい。(文責 中瀬)