読書感想 海賊とよばれた男 [2013年08月05日(Mon)]
読書感想 海賊とよばれた男(百田尚樹) この本は本屋大賞(2013)を受賞した話題作です。現在でもベストセラーの一角を占めています。 私は「永遠のゼロ」を読んでから、著者の百田尚樹の作品が好きになり、この本が2012年に出版されてすぐ図書館にリクエストして、借りて読んでいました。 上下2巻の長編ですが、一気に読みました。 あらすじ この物語は、日本の敗戦の日から始まる。空襲で廃墟となった東京の銀座に立つのが主人公の国岡鐵造。彼は石油卸業の国岡商店の創業者で、疎開先から帰ったばかり。満州や中国で商売をしていた国岡商店は戦争で何もかも失った。残っているのは銀座の本社ビルと生き残った従業員だけ。 その時、鉄蔵は60歳、仕事もない状態で、また膨大な借金を抱えながら、鉄蔵は戦争から帰ってきた従業員を集める。会社役員は人員整理をすすめるが、「社員を一人も馘首しない」とどん底の状態から鉄蔵は自分の資産をなげうって再建をめざす。大手石油会社から排斥され売る石油がないので、旧海軍のタンクの残油浚いなどして糊口をしのぎ、社員をひとりも解雇しないで少しずつ実績を積み上げて再建を果たしていく。 鉄蔵は「海賊」と呼ばれていた。それは、彼の若いころの商売方法による。戦争前も、石油販売の規制が厳しく決められた地域でしか販売できない。門司にあった国岡商店は下関の漁船に油を売れない。そこで、船をしたてて、海上で漁船に他より安く売った。そのため、「海賊」と言われたが、これは法律違反ではない。その後、先発会社の嫌がらせに負けないで事業を拡大し、海外(満州、台湾、中国)で事業を広げていった。しかし、これが裏目で敗戦によりすべてを失った。 戦後も、日本の石油は外国資本の大手メジャーに握られていて、日本資本の国岡商店には石油が回ってこない。そのため、タンカーを造船して、外国まで買いに行く。そして昭和28年、イランが石油を国有化し英国と争い経済封鎖で困っているとき、極秘裏にタンカー「日章丸」を差し向け日本に石油を運ぼうとする。英国海軍がホルムズ海峡を閉鎖していて荷物を没収される危険の中を。。。 実はこの本はフィクション形をとった実話であり、出光興産の創業者・出光佐三がモデルとなっています。 著者の百田尚樹は次のように語っています。「この作品は『小説』という形をとっていますが、登場人物はすべて実在しました。そしてここに描かれた出来事は本当にあったことです。この奇跡のような英雄たちの物語が、一人でも多くの日本人に届くことを心から願っています」 著者は昭和31年生まれと若いですが、歴史をよく調査し、生き生きとした会話で人物を蘇らせています。「東日本大震災で弱気になっている日本に、戦争の廃墟から日本を立ち直らせたすごい男たちがいたこと知ってもらいたい」とも語っています。 感動的な本で、皆様におすすめできます。 出光興産を見直しました。 なお、百田尚樹の本について、私の次の書評を参考にしていただければ幸いです。 「永遠のゼロ」 https://blog.canpan.info/nsk/archive/957 「風の中のマリア」 https://blog.canpan.info/nsk/archive/1058 (文責:皆川) |
Posted by
皆川眞孝
at 09:00