風の中のマリア(読書感想) [2011年04月22日(Fri)]
「風の中のマリア」(読書感想) (講談社発行、2009年3月) 「風の中のマリア」というタイトルで、どんな内容の本を想像しますか?主人公は亜麻色の髪を風になびかせた若い美しい女性でしょうか? いいえ、実は、この本の主人公は、恐ろしい顎をもつ獰猛なオオスズメバチの一匹の働き蜂(メス)です。著者が勝手にこの蜂を擬人化して、その動きの速さから「疾風のマリア」という名前を付けています。 この本の著者は、以前このブログで紹介した「永遠の0(ゼロ)」の百田(ひゃくた)尚樹氏です。 (「永遠のゼロ」のブログは次をクリック https://blog.canpan.info/nsk/archive/957) この小説は、働き蜂マリアが羽化してから死ぬ瞬間までの約1カ月間のストーリーで、マリアの立場から、その行動や考えを描いています。オオスズメバチの生態を知らず知らずに勉強できるようになっています。 働き蜂は、すべてメスというのもこの本を読んで知りました。働き蜂は、常に女王蜂と幼虫のために、食べものを得るために、他の虫を捕獲し続ける一生であり、メスでも子供を産むことはありません。その命も30日ほどです。ハチの世界で最強といわれるオオスズメバチは、一匹の女王蜂を中心に帝国を築いています。 マリアは、帝国の最盛期に生まれ、狩りに明け暮れる毎日を過ごして居ますが、日が経つにつれて獲物が少なくなっていきます。黄色スズメバチと、死闘をくりひろげますが、その熾烈な戦いは、「永遠のゼロ」の中の戦闘機同士の戦いを思い起こせます。オス(複数)の誕生と、新しい女王バチ(複数)の誕生とともに、現在の帝国が次第に崩壊し、新しく生まれた女王蜂を中心に別の帝国が築かれていきます。 帝国のために、自身の命も顧みず戦う働き蜂の姿は感動的で、日本の為に散って行った兵士の姿が重なります。 私は、虫は嫌いで、スズメバチは特に危険な虫だと警戒していましたが、ちょっと見方が変わりました。 ハチが主人公といっても、童話と違って大人が読むためのスリルのある小説で、一息に読ませます。(皆川) |
Posted by
皆川眞孝
at 20:27