「蜘蛛の糸」の原型 [2009年05月21日(木)]
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「蜘蛛の糸」の原型 先日の明平さんのブログ「ヨブ記(4)」に、ドストエフスキーがこれを読んで「カラマーゾフの兄弟」の構想を得たとありました。最近、「カラマーゾフの兄弟」を読みなおしましたが、その中に、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」にそっくりの話がでているのを発見してびっくりしました。原作ストーリーと関係なく、ある女性が、こんな昔話があると紹介するだけですが、これはたぶん「蜘蛛の糸」の原型でしょう。「蜘蛛の糸」はご存じのように、地獄に落ちた大泥棒「かんだた」を、お釈迦様が蜘蛛の糸で救おうとして失敗するお話です。大正7年(1918年)に「赤い鳥」に発表されたものですから、1880年に出版された「カラマーゾフの兄弟」を芥川龍之介はすでに読んでいたことでしょう。舞台をがらっと変えて、短い話を、味わい深い見事なストーリに仕上げているのは、さすが芥川龍之介です。 カラマーゾフの兄弟からの寓話は、次の通りです。 題して、「天使と葱」としてみます。 ![]() 昔むかし、一人の根性曲りの女がいて、死んだ。そして死んだあと、ひとつの善行も残らなかったので、悪魔たちはその女をつかまえて、火の池に放り込んだ。その女の守護天使はじっと立って、何か神さまに報告できるような善行を思い出そうと考えているうちに、やっと思いだして、神さまにこう言った。 「あの女は野菜畑で葱を一本ぬいて、乞食にやったことがあります。」 すると神様はこう答えた。 「それなら、その葱をとってきて、火の池にいる女にさしのべてやるがよい。それにつかまらせて、ひっぱるのだ。もし池から女を引き出せたら、天国に入れてやるがいいし、もし葱がちぎれたら、女は今いる場所にそのまま留まらせるのだ。」 ![]() 天使は女のところに走って、葱を差し伸べてやった。 「さ、女よ、これにつかまって、抜け出るがいい。」 そして天使はそろそろとひっぱり始めた。ところがすっかり引き上げそうになったとき、池にいたほかの罪びとたちが、女が引き上げられているのを見て、いっしょに引き出してもらおうと、みんなして女にしがみついた。ところがその女は根性曲りなんで、足で蹴落としにかかった。 「わたしが引き上げてもらってんだよ。あんたたちじゃないんだ。これはわたしの葱だ、あんたたちのじゃないよ」 女がこう言い終わったとたん、葱はぷつんとちぎれてしまった。そして女は火の池に落ちて、いまだに燃え続けている。天使は泣きだして、立ち去った。 (カラマーソフの兄弟・原卓也訳) ![]() なお、「蜘蛛の糸」は、次のサイトをクリックすれば、原文をよむことができます。 http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/92_14545.html (文責:皆川眞孝) |
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皆川眞孝
at 09:31







「天使と葱」面白く読ませて頂きました。「蜘蛛の糸」も久しぶりに読み、きれいな文章で、お釈迦様のお姿が浮かびやさしい気持ちになりました。お陰様で東西の文学に触れさせて頂きありがとうございました。
榎本