今月の俳句(平成24年10月) [2012年10月19日(Fri)]
今月の俳句(平成24年10月) 兼題:鰯雲または秋の雲 藤戸さんの句評をご参考にして、お読みください。(順不同) 「金箔を散らし没日(いりひ)の秋の雲」 木村 朋 秋の日没はことに美しいですね。きらきらとあたりの雲を輝かせながら瞬く間に落ちていく秋の日没の景。金箔を散らし、という表現が美しさと美しいがゆえの消えていく悲しさまで表現して、なかなかの佳句となりました。 「砂浜に足投げ出して鰯雲」 宮ア 和子 気持のいい句ですね。跣になって砂浜を歩いた後でしょうか。 足を投げ出して座った砂浜、空には鰯雲が広がっていたという 広々として明るい景が浮かびます。 「青空に柘榴の映えて散歩道」 大森 初代 今回初めて出句の新人の句。空の青に柘榴の艶々した紅色が映えて美しいですね。気持よさそうな散歩道を行く作者の柘榴を発見した時の感動が素直に表現されています。 これから勉強されて更なる佳句を期待しています。 「拾いたる栗の飯炊く夕べかな」 小野 洋子 栗の美味しい季節です。栗といえば栗ごはん、子供の頃、母が私になるべく多くの栗をよそってくれたのを思い出します。この句は拾った栗というのが風情がありますね。拾ったのは山栗でしょうか。小粒ですが味は抜群、美味しい句となりました。 「亡き夫(つま)の丸き眼鏡や鰯雲」 佐藤 朋子 夫の形見となってしまった丸い眼鏡。夫の愛用していた眼鏡を通して、作者は生前の夫を思い出しているのでしょう。鰯雲の季語により、夫との穏やかだった人生が感じられます。 「運動会幼なの口の一文字」 池内 薫 初めての運動会なのでしょうか。懸命に走っている場面か、玉入れをしている場面なのか、想像しているうちに、思わず笑みがこぼれてしまうほのぼのとした句です。 「故郷の小さき寺や鰯雲」 皆川 眞孝 素直で味わい深い句です。故郷は加齢とともに懐かしさも増していくもののようです。小さいお寺というのがいいですね。故郷を愛おしむ作者の心情が鰯雲という季語で表現されています。なにげないようで季語の効いた佳句となりました。 「芒生ふ屋根引き倒す鉄の爪」 藤戸紘子 (評―皆川) 茅葺の屋根にすすきが生えている古い家を見かけることがあります。そのような家がブルドーザーで無残に壊されている風景です。作者は、時代の流れとして受け入れながらも、日本の原風景が失われることに愛惜の念を抱きます。その想いが「引き倒す」という強い言葉からひしひしと伝わってきます。 |
Posted by
皆川眞孝
at 07:00
俳句につけた写真やイラストなどは、私が俳句作者の了解を得ないで勝手につけています。そのため、作者の思っていることとは違った写真がでている場合もあるでしょう。
俳句の面白さは、短い言葉のために言い足りないことが多く、いろいろな場面が想像できることです。
写真とかイラストがあると、それに影響され、場面が限定されます。
上記のような問題点がありますが、写真やイラストがあると、俳句に近づきやすいという点があります。あくまでも写真やイラストは、私の個人的な狭い解釈に基づいたものと御理解ください。
藤戸さんの評釈は、より広い視点で俳句を理解するために、役に立つと思いますので、そちらを重点的にお読みください。
皆川