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NPO法人 さとうみ振興会

NPO法人 さとうみ振興会(さとうみしんこうかい)からのお知らせや、活動報告などを書いていきます。
当会のホームページはこちらです。
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平成30年度 瀬戸内海区水産研究所 研究成果発表会に参加しました! [2018年10月22日(Mon)]
平成30年度 瀬戸内海区水産研究所 研究成果発表会〜水産業の未来を支える新技術〜に参加しました!

◆開催日時
平成30年10月20日(土)13:00〜15:55

◆開催会場
広島YMCA国際文化センター 3号館 多目的ホール

◆内容
瀬戸内海区水産研究所長 生田和正 ご挨拶(概要)
魚介類を中心とした和食がユネスコの世界無形文化遺産に登録されるほど、世界中で魚食が注目され、海外では、その消費と生産は拡大を続けています。
国内に目を向けると、魚食離れによる消費の低迷、温暖化等による生態系の変化、沿岸環境の悪化による資源量の減少、燃油や養魚飼料にかかるコスト高や少子高齢化による労働力の低下など、水産業には問題が山積しています。
平成29年の国の水産基本計画では、これらの問題を克服し、国際競争力のある成長産業へと転換するため、資源管理の高度化や養殖の推進、水産物の輸出の拡大等、新たな取り組みが示されました。このようなイノベーション(革新)を促すためには、その基盤を支える新たな技術の研究開発を強力に進めることが必要です。今回「水産業の未来を支える新技術」と題し、当研究所が推進する、低迷する現状を打破し、日本の水産業の未来を見据えた革新的な研究開発についてお話をお聴き頂けると思います。

テーマ1.マダコ稚ダコの生産技術が格段に進歩(海産無脊椎動物研究センター研究員 岡雅一)
最近、瀬戸内海だけではなく日本のタコ供給に異変が起きています。日本は、世界最大のタコ消費国ですが、国内漁獲量の減少傾向に加えて、海外需要の増大により、輸入価格が高騰し輸入が減っています。
将来の、安定供給の不安にいち早く反応したのは、たこ焼き業界で、タコ養殖が出来ないかと悲鳴にも似た研究ニーズが寄せられました。マダコ養殖に必要な孵化幼生を飼育する研究は、約50年の歴史がありますが、飼育が難しく、その原因が不明で遅遅として進みませんでしたが、昨年度、海産無脊椎動物研究センターで大きく進展しました。

技術的に進んだ点は2点あり、1点目は、飼育装置のうち、特に水流を従来と変えた点です。
もう一つの技術的な進歩は有効な餌の発見です。魚類の仔魚飼育では、一般的にアルテミアに高度不飽和脂肪酸(EPA,DHA)を与えて栄養強化を行うことで問題なく飼育が出来ます。
しかし、マダコ幼生はアルテミアに同様な栄養強化を行っても飼育成績は得られませんでした。そこで、アルテミアの代わりにEPA,DHAを栄養強化したワムシを食べさせたガザミのゾエア幼生を使うことで、良好な飼育成績を得ることが出来ました。
このようなことから、従来の着底期稚ダコまでの生残率0〜31%を、77.1%(0.5 ㎥3水槽の飼育試験平均生残率)まで高め、合計2796個体(3水槽合計)着底稚ダコの生産に成功し、従来1か月以上とされていたふ化から着底までの期間も、成長が促進することで23日にまで短縮できました。

テーマ2.燧灘カタクチイワシ(シラス・チリメン)の復活に向けて(始原生産部 資源増殖グループ主任研究員 米田道夫)
瀬戸内海においてカタクチイワシは、チリメンじゃこや煮干し(いりこ)として利用される馴染みの深い魚です。
瀬戸内海のカタクチイワシ仔魚(シラス・チリメン)の漁獲量は比較的安定しています。
しかし、瀬戸内海の中央に位置する燧灘では、近年急激に減少しています。
そこで、関係県の試験研究機関や大学の方々と共同で、野外調査や飼育実験を行ってきました成果を紹介します。

@カタクチイワシの生活サイクル
燧灘のカタクチイワシは、5〜7月を中心に産卵を行います。産み出された卵は2〜3日で孵化し、その数日後に動物プランクトンを食べ始めます。
その後、稚魚(カエリ)を経て、孵化してから半年ほどで親魚になります。
親魚は餌から得た栄養源を速やかに卵に取り組みながら、産卵を繰り返します。

A卵は多いのにシラスが獲れない!?
燧灘の野外調査から興味深いことが判ってきました。産卵期の総産卵数は1992年以降増加しているのですが、シラスの発生量は2005年以降急激に減少していることが判明しました。
さらに、親魚と仔魚の関係から「親が太っていると、子も多い」こと、最近は「親は痩せて、子も少ない」ことが明らかになりました。
親魚の肥満度と卵のサイズの関係を調べたところ「親が痩せてくると、卵が小さくなる」ことが示されました。
カタクチイワシは餌の量が増えると、肥満度が急激に増加します。又、親魚は主にカイアシ類とよばれる動物プランクトンの成体(親)を食べるのに対して、孵化した仔魚はカイアシ類の幼生(子ども)を食べることが判っています。
燧灘のカタクチイワシは「親魚や仔魚の餌条件が悪くなることによって、卵質、そして仔魚の生き残りが悪くなっているのではないか?」との仮説に導かれました。

B世界初の技術で仮説を検証!
カツオ一本釣りの餌となるカタクチイワシを安定的に供給することを目的として、その養殖技術を世界で初めて確立することに成功しました。
先ず親魚を餌条件の良い高給餌区と低給餌区の水槽で1か月飼育した結果、やせた親から生まれた仔魚は、環境の悪い条件下で生きていかなくてはなりません。このため、たとえ卵の数が多くても、発育初期に数多くの個体が死亡するためシラスが不漁になっているのではないかと考えらます。2018年生まれのカタクチイワシの漁獲量は最近の5年間で最も高くなりました。その原因を調査してみると、4〜6月のカイアシ類成体の密度が例年以上に高く、また、親魚の肥満度も高かったことが判明しました。
今後は「動物プランクトンの増えるメカニズム」の解明に努めながら、カタクチイワシを含む海洋生態系の調査研究を推し進めて行きたいと考えています。

テーマ3.植物プランクトンに感染するウイルス〜ウイルスがいても水産の土台は揺るがず!?〜(環境保全研究センター 有害・有害藻類グループ主任研究員 外丸裕司)
海水の中にも様々なウイルスがいます。今回は、「珪藻」のいう植物プランクトンに感染するウイルスについてその一部を紹介します。
珪藻とは、細胞の周りに直方体、三角柱、円柱など多様な形をしたガラス成分主体の殻を持つ植物プランクトンの一種で、池、川、湖、海など水がある場所には必ずと言って良いほど存在しています。珪藻は、増殖がとても速く、栄養も豊富なため、二枚貝を人工的な環境で飼育する時にはとても良い餌となります。
また、海洋環境中でも大増殖を繰り返し、動物プランクトンや二枚貝の重要な餌になっています。植物プランクトンに感染するウイルスの研究が盛んになり始めたのは1990年代のことです。当時、世界中の研究者が様々な植物プランクトンに感染するウイルスを分離し、その形態や遺伝的性質などを調べていました。ところが海に沢山いるはずの「珪藻」に感染するウイルスについては、いつまで経っても発見に成功したという研究者は現れませんでした。2002年に珪藻に感染するウイルスを世界に先駆けて筆者などの研究グループが発見することに成功しました。

自然環境から分離した珪藻ウイルスをフラスコの元気な培養珪藻に入れると、わずか数日で珪藻は全滅してしまいました。珪藻はウイルス感染で死ぬのです。しかも、ウイルス感染した珪藻の細胞から、1細胞当たり1万個以上のウイルス粒子が生産され、再び海水中に放出されます。このウイルスは感染する相手が決まっていて、特定の珪藻以外を死滅させないことも判りました。
それでは、フラスコ内と同じように、自然環境でも珪藻がウイルス感染したら、珪藻は海から消えてしまうのでは?という疑問が湧きます。そこで、定期的に広島湾の海水を汲んでその中にいる珪藻とそれに感染するウイルスの量的関係を調べてみました。
その結果、珪藻が大増殖を始めるタイミングで、ウイルスも一気に増加することが判りました。ところがしばらくすると、珪藻の量には大きな変化は、見られないのですが、ウイルスの量は徐々に減少していく傾向にあることが判りました。この調査の結果から、自然環境で増殖している珪藻は、ウイルスに攻撃を受けたとしても、全体としては大幅減少しない程度に自分たちの集団をウイルスか守ることができるものと考えられます。

まだ、謎の多い「珪藻とウイルス」の関係ですが、自然環境では珪藻がウイルス感染から逃げられる能力があるからこそ、私たち珪藻大増殖による水産物の恩恵をうけているものと考えています。食卓のお刺身を前にしたとき、それを陰ながら支えている珪藻のことを思い出してください。なお、珪藻ウイルスは人に感染しないのでご安心を!

テーマ4.海のにぎわいは藻場によってつくられる〜気候変動による藻場の変遷を予測し、どう守っていくか〜(生物環境部 藻場生産グループ 主任研究員 島袋寛盛)
木々が茂る森に様々な動物が暮らしているように、海の森である「藻場」も魚介類をはじめ多くの動物の営みを支え、我々の重要な食料生産の場になっています。さらに、藻場があることで波浪が抑制され浅場の流動が穏やかになり、魚が蝟集することで、遊漁や海水浴などのレジャー目的にも利用されています。このように、藻場は生物多様性や人々の活動など様々な”にぎわい”を創出しています。
特に、瀬戸内海に見られる温帯性藻場は、多年生のカジメ類やホンダワラ類の海藻や、小型の褐藻、紅藻類が多様な藻場景観を形成し、海産生物の多様性を支えています。
また、藻場には栄養塩を吸収し環境を浄化するだけではなく、二酸化炭素を吸収し酸素を放流するなど、我々の生活には欠かせない様々な役割を有しています。
しかし、最近では、温暖化による水温上昇により各地で藻場の減少や構成種の変化が確認されています。また、藻場の減少はいつどのような環境変動で生じるのかなど、その変化の仕組みは良く判っていません。

そこで、
@段階的に水温勾配の生じた沿岸域での藻場植生調査
A培養実験による藻場構成種の生理特性の把握
Bモデルによる過去の水温変化の再現と将来の水温予測
を行い、いつどこで、藻場の変化が生じたかの検証と、今後の藻場変化を予測するための技術開発を行いました。

わずかな水温差で変遷する藻場植生
愛媛県西岸の豊後水道は南からの黒潮の影響で、北は、佐多岬の南岸伊方町三崎から南は高知県の県境である愛南町まで、明瞭な表層水温の勾配があることが判っています。つまりこの北から南までの藻場植生を調査すれば、この場所の温度勾配によって生じる藻場の変遷は、今後瀬戸内海の水温上昇によって引き起こされる藻場変遷の過程を、今現在 現していることになります。
そこで、愛媛県西岸において温度勾配に応じた13カ所の藻場調査を行った結果、北部では瀬戸内海と同様にカジメ類の海藻とホンダワラ属が混生する良好な藻場が形成されていましたが、南下するに従いカジメ類が消滅し、ホンダワラ属藻場の種多様性が減少していきました。また、さらに南下すると大型褐藻類は消失して小型の紅藻類が優先するようになり、ついには藻場が消滅し磯焼けとなるか、亜熱帯のホンダワラ属やサンゴ類が見られ津ようになりました。そして、これらの変化は、わずか0.5〜1℃ほどの年平均水温の違いで生じていることが判りました。それでは、具体的にはどのような温度が藻場に影響を与えるのでしょうか。培養実験や、現状の藻場分布と水温の関係から、夏に29℃以上が6日未満であり、且つ15℃以下が70日以上続く場所にクロメなどのカジメ類の藻場が形成されることがわかりました。

モデルによる過去・将来水温の再現と藻場植生の予測
”モデル”と言って、海水温に影響を与える海面を通した熱の移動や風、外洋の水温や塩分、河川水の流入など様々な環境要因を元に、ある特定の範囲の過去水温の再現や将来水温を計算し予測を行うことが出来ます。
共同研究 愛媛大学沿岸環境科学研究センターが瀬戸内海及び近隣における過去およそ20年間の夏期と冬期の水温を再現したところ、クロメなど温帯性コンブ目類が消滅した場所は、夏期に28〜29℃の高温が単発的に生じ、冬期は水温が下がっていないことが判りました。
また、将来の予測では、IPPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)が発表している今後100年間で生じる気温上昇のシナリオのうち、最も、気温が上昇すると想定される条件を元に将来水温を計算すると、50年後には、瀬戸内海中西部の一部の海域にしかカジメ類が残らず、100年後には消滅することが予測されました。
しかし、出来るだけ温室効果ガスを削減し気温の上昇を抑えたシナリオでは、黒潮の影響の強い水道部では消滅しますが、瀬戸内海では、多くのカジメ類が維持されることがわかりました。

変化する藻場への適応と対策
藻場の分布については、黒潮の影響のある海域での水温上昇による減少や消滅が大きな問題となっています。これらの要因の多くは水温上昇だけではなく、水温の上昇によって食害を引き起こす藻食動物の活動が冬期も制限されないためです。
よって、九州のある海域では、地域と協力して食害動物を駆除することにより藻場を再生させている事例があります。
また、藻場が減少することによりアワビやサザエ、イセエビなどの磯根資源が減少すると言われています。逆に、幼生の着底や幼体期に藻場を利用するイセエビなどの動物類を一時的に保護することで、海藻類の天敵となるウニ類を抑制し藻場の回復を目指す試みを行われています。

これまでには、藻場が減少すれば母藻や基質を投入し、有用な魚類について種苗を生産し放流するということが単発的に行われることもあり、効果が見られないこともありました。

今後は、基礎生産を担う藻場や、それを利用する動物類の生態、夫々が関わりあるその生態系ネットワークを十分に理解することが重要になります。
地球規模での水温上昇に対抗することは困難ですが、何も出来ないわけではありません。
水温上昇を背景とした自然環境に生じる現象は、水温に加え、様々な要因が関わり合って引き起こされています。その要因を細かく解明し、変えることの出来ないことは「適応」を、改善できることは「対策」を行うための、知見の解明と技術の開発をこれからも続けていきます。
Posted by さとうみ振興会 at 14:20 | 30年度活動報告 | この記事のURL