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NPO法人 地域の未来・志援センター
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奥三河蚕玉の森プロジェクト

〜養蚕の伝統を継承し伝える〜




蚕.jpg


 産業革命で大量生産の時代になり、欲しいものは安くすぐに手に入るようになりました。そのような時代の変化により、人と蚕の何千年もの歴史が絶たれようとしています。伝統をつなぎ、手づくりの良さに改めて気づかされるような「奥三河蚕玉(こだま)の森プロジェクト」に当団体のインターンシップ生がその想いを詳しく伺ってきました。




  • どんな団体任意団体

  • 活動エリア愛知県・岐阜県

  • 活動拠点愛知県新城市


[2017年02月17日(Fri)]

国産のシルクを作り続けたい



枠.jpg

 今回お話をお伺いした矢澤さんは以前から趣味で機織りをやっており、絹織物をしていたそうです。そのためにシルクの糸を購入していたが、市場には外国産の安価なシルクが出回っており、日本人は和の心を持ち着物は伝統として大切にしているにもかかわらず、それは輸入したシルクで作られていることに疑問を感じたと言います。


 矢澤さんの養蚕との出会いは、草木染めや田舎暮らしに興味を持った7年程前の事だそうです。ちょうどその頃、外国産の安価なシルクが出回ったことにより日本の養蚕農家は大幅に減少し、国産のシルクは非常に貴重なものとなっていました。養蚕に興味を持った矢澤さんは、知人のつながりで養蚕農家の見学に行き、自ら蚕(かいこ)を飼い、糸を紡ぐことを考えます。そして、縁があって養蚕の師匠となる通称「じっちゃん」と出会い、新城へ移住。「じっちゃん」に弟子入りすることを決めます。「じっちゃん」の養蚕によりできた繭は、伊勢神宮などにも奉納されている伝統的なものであり、これまでやってきた「じっちゃん」のお手伝いをしていこうと矢澤さんは決めたそうです。




蚕と人のつながり



繭.jpg

 明治維新を経て日本が経済大国になる過程で生糸はとても重量な役割を果たしましたが、今は忘れ去られてしまっています。昔、日本の養蚕技術は高く、蚕は人の生活に密接に結びついていました。古事記の日本神話にも蚕についての記述があり、7世紀にはすでに養蚕が大きな産業となっていたことからも蚕と人のつながりの深さが分かります。


 「蚕は人間のためだけに生きる動物で、自然に返せない独特の生き物」と矢澤さんは話してくれました。蚕は見た目が真っ白なため自然界の中では目立ち生息できません。そもそも人が生まれることを望まないと命がない生き物であり、何千年ものくらしの中で蚕と人のつながりが途絶えてきているのは、ここ最近の100年程度だけです。そのような背景を知るにつけ、蚕の命をなんとか続けさせたいと矢澤さんは思っているそうです。しかし、化学繊維が普及し養蚕も減少してしまったため、昔のような蚕とのつながりを取り戻すことは容易ではありません。今はできるだけ伝統をつなぎ伝えていく必要があると矢澤さんは言います。また、「蚕の良さは、自分の手で触れることで感じられる」と伺い、蚕に少し抵抗があった私も実際に触れてみることにしました。すると、不思議と可愛らしく思え、私の中では蚕は虫という枠には入らない神秘的な生き物のように感じ、人と蚕の深いつながりを体感できたように思います。


 シルク製品というと、繊細で扱いにくい印象があるかもしれません。しかし実際はそうではなく、本来のピュアなシルクは丈夫で染めることもでき、通気性・抗菌性に優れた機能性の高い糸であるといいます。また、シルクは自然が生み出す中で最も人に近いたんぱく質で形成されており、髪の毛のようなものであるため人の肌に優しいそうです。


 今ではシルク製品も機械が主体の大量生産になっています。昔のものは機械できつく織るのではなく、一つ一つ人の手で紡ぎ、織られることによる着心地の良さがありました。また、完成するまでには長い時間と労力がかかる事に加えて、シルク独特の身体になじむ着心地の良さや高い機能性があり、赤ちゃんの時から大人になっても長くずっと使い続けるという気持ちがありました。しかし、衣類については特に産業化が進み、現代では何十年も同じものを使い続けるという気持ちが薄れていると矢澤さんは言います。私はこのお話を聞き、産業化によって得られた便利さの代わりに失いかけている「丁寧に手間暇かけて作られたものに愛着を持って長く使うという気持ち」の大切さに気付きました。この気持ちは時代が変化しても人々の心にあり続けるべきものであると思います。多くの人がそれに気づき、長く使うことに価値を見出せるようになることがこれからの時代で重要なことではないかと感じました。





今後の展望



2万匹.jpg

 蚕は完全な家畜であり、人が手を加えないと生きられない自然動物です。何千年ものくらしの中での人と蚕の精神的なつながりを絶やさないためには、シルクは良いものであり消費者に欲しいと思わせる必要があります。そのためには、シルクの価値を再認識してもらい、新たな価値を創造する必要があると言います。


 しかし実際には、養蚕は非常に大変で、矢澤さんが「奥三河蚕玉の森プロジェクト」を2016年6月に立ち上げるまで5年の歳月がかかっています。その1つの要因が繁忙期がある時期に集中してしまうことです。そのため、定職につけないことで経済的に安定せず、シルクに向かう気持ちも思うようにならなかったそうです。しかし、プロジェクトを立ち上げるまでに養蚕に関わった人たちも増え、今では一緒に養蚕を手伝ってくれる人が5・6人いるそうです。また、活動には参加できなくても、写真を撮ってポストカードを製作するなどのサポートをしてくれる人もいるそうです。


 現在、矢澤さんは「じっちゃん」と3万頭の蚕を育てています。半分はじっちゃんが神宮に奉納する繭になり、半分は矢澤さんが商品開発する繭になるそうです。そして、そのシルク製品を“活動を応援しているから商品を購入する”のではなく“それ自体に純粋に価値を感じたから購入する”という商品を作ることが目標だと言います。また、「ささやかでもいいから、シルク製品づくりをすることでこの仕事に従事してくれた人たちの糧になったらいいな」と最後に語ってくださいました。





「奥三河蚕玉の森プロジェクト」の主な活動



  1. 1. 養蚕

  2. 2. 繭から糸を精製する

  3. 3. 蚕に関連する商品の販売

  4. 4. 養蚕見学の開催

  5.                          など

  6. →奥三河蚕玉の森プロジェクトFBへ





矢澤さんより一言!


矢澤さん.jpg

 繊維の仕事で食べていくことは現在の日本では不可能と言われています。やればやるほどその思いは強くなる一方、だからこそ、全く新しい発想でこの仕事を残す道を模索しています。産業化は人と人を分断してきました。絶たれてしまった絆を再び結ぶことができるのは、糸の仕事なのではないかと感じます。私にとってお蚕を育ててその繭から絹製品を作ることは、ビジネスのためでも地域おこしのためでもありません。たぶんなにかもっと、本質的で精神的な営みなのだと、思います。古くて新しい養蚕を応援してくださいね!