『インビクタス 負けざる者たち』(アメリカ映画、監督:クリント・イーストウッド、2009年)今年、サッカーのワールドカップでこれからどんどん話題になっていくと思われる南アフリカで、1995年にラグビーのワールドカップが行われたときの奇跡のような実話を、かなり忠実に再現した秀作。
主人公の一人であるネルソン・マンデラさんは1962年にアパルトヘイト(人種隔離)政策をとる南ア国家の転覆を企てた罪で終身刑に処せられ、27年の長きにわたって監獄にとらえられ(しかも最初の18年の収監場所は、現在世界遺産に指定されている監獄島ロベン島)、しかし、民衆からの絶大な支持を受けて1990年に釈放。
釈放後、1994年に大統領に選出され、そこから物語が始まります。南アフリカは、同じように西欧の人たちが征服したアメリカとは違って、もとから住んでいる黒人たちが多数派なので、大統領官邸では、前白人政権時代に勤めていた白人たちが当然クビだと思って引越し準備をしています。そこへ現れたマンデラさん。みんなを集めて緊急演説。そこで語るのは、「去りたければ去ってもいいが‘過去は過去’。みんなの力が必要だ。みんなで努力すれば、私たちの国は世界を導く光となる」。27年間、白人たちにとらえて獄中にあった人が、こんなことを言えるなんて(ちなみに、マンデラさんは、大統領就任の祝賀会に、マンデラさんが捕らえられていた監獄の看守を招いたそうです)。
白人の象徴的なスポーツであったラグビーは当時、白人政権がアパルトヘイト政策で国際的に非難を浴びており、国際試合から遠ざけられていたために“国の恥”とまで言われるほどの惨憺たるチーム状態。それでも、1年後に南アフリカでワールドカップが開催されるので、開催国枠として出場ができる。当然、前評判は芳しくない。
いまや黒人が占める国家スポーツ評議会では、白人社会の象徴としてのラグビーチームのユニフォームとチーム名を変えようと、全会一致で決議。そこで、マンデラさんが現れて、「全会一致で決めたこともわかっているが、今はそれでなくても、白人たちは黒人を恐れているのに、卑屈な復讐を果たすときではない」と議決を覆す。
そして、ラグビーチームのキャプテンを大統領官邸に呼び、お茶を飲みながら、談笑し、獄中で、支えとなった詩「インビクタス」を紹介する。
結果がわかっていても、感動できるのは、事実の重さでしょうか。
途中、ラグビーチームの一行は、ケープタウンの沖11キロに浮かぶ、マンデラさんが18年間捉えられていたロベン島を訪れます。ケープタウンが見えるほど近いのですが海流が早くてサメも多いため、脱獄することは不可能なのだそうです。マンデラさんが収監されていた独房は、マンデラさんがいた時の状態が再現されていて、その本当の場所でロケは行われています(全体的に南アフリカでロケをしているのです)。
憎しみや武力ではなく、世界を変えた人がいる。
サッカーのワールドカップを迎えるに当たって、見ておきたい名画です。
近くでは、ムービックス周南で上映中(広島でももちろん)。
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