『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』(暗闇の中での対話)
まっくらなスペースの中を、何人かのグループで、視覚障がい者のガイドに従って、いくつかのイベントを楽しみながら進んでいくワークショップ。
今となっては、何で知ったか忘れてしまったのですが、何年か前に知ったこの『ダイアログ・イン・ザ・ダーク』に、先日江戸行きの用事があって、たまたま日程があったので参加してみました。
ドイツ生まれで、日本では1999年からイベント的に始められ、2009年からは江戸にあるビルの地階を借りて常設されるようになったようです。
ちなみに、その会場にこんな本も売っていましたので、事前に知ってみたい人は、読んでみるのもいいかもしれません。
『まっくらな中での対話』(茂木健一郎withダイアログ・イン・ザ・ダーク著、講談社文庫、2011年)
脳科学者の茂木健一郎さんとダイアログ・イン・ザ・ダークの理事の志村季世恵さんらによる対談で、読みやすそうです(現在読んでいるところ)。
さてさて、感想です(事前に予備知識が欲しくない人は、ここからは読まないほうがいいかも。あまり詳しくは書きませんが)。
私が参加したのは5人のグループ(予約状況によって最大8人らしい)で、私以外の4人は、同じ職場の知り合い同士でした。
少し暗い部屋で、軽く自己紹介や注意事項などのオリエンテーション。そして、そこをさらに暗くして、いよいよまっくらな部屋へ。
季節によって体験内容を変えているようで、今回のものを一つだけ紹介すると、書初め。もちろん、全く何も見えない中で、硯に入った墨を使って、筆で色紙に書くのです。
暗闇の中で頼れるのは、自分の視覚以外の感覚。そして、ガイドと白い杖とグループのメンバー。
私はというと、暗闇に結構すぐ慣れることができて、何と表現したらいいのか、自分とそれ以外の環境の境がなくなった感じで、自由になれたような面白い感覚を味わうことができました(もともと暗闇が怖いというメンバーの1人は、最初怖かったそうです)。専用の場が設定してあるので、私はその場を信頼することができ、身を委ねることができたということはあるのだと思います(いきなり、ひとりで知らないところで視覚を奪われたらそうはいかないでしょう)。
手を伸ばすと、すぐ近くに隣の人がいたりするのに、黙っているとその気配はわからないものです。だから自然と声をかけあい、手助けしあいます。
床面の感覚や、皮膚の感覚、聞こえる音、味覚に対して敏感になります。
声をかけあって乾杯することもできます。
イベントをこなしているうちに過ぎたあっという間の1時間半で、個人的には、もう少し暗闇をじっくり味わいたかったなあという少し物足りない感がありました。
そのあたりが、バランスが難しいんだろうなあ。暗闇が怖い人にとっては、あまり時間的に余裕がありすぎてもいやかもしれないし。
知り合いにこのことを話したら、「田舎だったらどこにでも暗闇はあるんじゃない?」と言われてしまい、確かに、どんどん物理的には明るくなってきた都会にあってこそ、すごいコントラストを成すイベントなんだとは思います。しかし、最近では、田舎でも、本当の意味での暗闇は少なくなってきているし(田舎では月夜がとても明るいことは実感できますよ)、安心して暗闇を体験できていろいろ発見できる可能性があるというのは大きいのかな、と。
5000円というチケット料金は、高いという気もします。しかし、一度に体験できる人数が限られていて、しかも、ガイドをしている視覚障がいがある人の得意分野を生かした就業の場となっているということなどを考えると、大きなスポンサーなどが付かない限りは仕方ないかもしれません。
興味のある人は、ダイアログ・イン・ザ・ダークで検索すれば公式ホームページがでてきます。日程がわかったり、予約もできます(私も、インターネット予約をして近所のコンビニでチケット購入しました)。