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2016年10月24日(Mon)
「不確実性、不安定な世界が今の中国」
中国の台頭テーマに日中米の学者が議論
第4回日英グローバルセミナー開く


「不確実性、不安定な世界が今の中国」。海洋大国として世界的な普遍的価値、ユニバーサルな価値を共有すべきだ、と指摘する日米両国の学者に対し中国人学者は、こんな言葉で中国政府の外交の難しさを語りました。10月12日に開催された第4回日英グローバルセミナーのひとコマ。一方で、日中両国の80%もの国民が「相手を信用できない」とする冷え切った状況を打開するためにも、双方がもっと現在の雰囲気を変える努力をする必要がある、とする点では意見が一致しました。

アジアの域内秩序に関するセッション、4人の学者が意見を交換しました

アジアの域内秩序に関するセッション、4人の学者が意見を交換しました


グローバルセミナーは日本財団と英国王立国際問題研究所(チャタム・ハウス)、グレートブリテン・ササカワ財団の共催。12、13の両日、5つのセッションが行われ、このうちの「アジアの域内秩序への課題」と題するセッションで、中国の台頭が東アジア地域の国際秩序に与える影響について議論が交わされました。出席者は座長役のルパート・ウィングフィールド-ヘイズBBC東京特派員、川島真・東大大学院教授、ダニエル・イノウエアジア太平洋安全保障研究センターのケリー・ナンキヴェル氏、北京大国際戦略研究院の于鉄軍副院長の4人。
開会式であいさつする笹川陽平日本財団会長

開会式であいさつする笹川陽平・日本財団会長



 セミナーではまず、中国の政権について川島教授が「発展途上国を代表する立場で国際的な法律や規範の修正を目指しており、世界秩序や国際法は尊重しない姿勢をとっている」と指摘。ナンキヴェル氏も「米国による覇権主義の秩序から離れようとしており、価値を共有することは難しくなっている」と語りました。これに対し于副院長は「中国はチャレンジャーではない。既存の秩序を覆そうとしているわけではなく、ビルダーの立場で(国際秩序を)維持していくのが基本的な姿勢だ」と反論。北朝鮮との関係についても習近平総書記が金正恩総書記と一度も会っていない事実を取り上げ「このようなことは今まで有り得なかったことだ」と付け加えました。

あいさつするロビン・ニブレット英国王立国際問題研究所所長

あいさつするロビン・ニブレット英国王立国際問題研究所所長

 南シナ海での一連の動きに関しては于副院長が「中国では国際法にのっとっている、と理解されている」としたのに対し、川島教授は「中国政府が国内でどう説明しているのか、それによって対外政策も影響される」と指摘、ナンキヴェル氏は「中国によるパラセル諸島(西沙諸島)の軍事基地化など危険な段階にきている。外交的に何ができるか考えるべき時代にきている」と述べました。

 その上で川島教授は冷え込む日中関係について「双方の現状認識が大きくずれているのが一番の問題。この点のすり合わせをしない限り前に進まない」、「2008年の日本のODA(政府開発援助)終了を転換点に日中両国政府の人的関係が希薄になった」とするとともに、「中国政府内部でも対日政策に関し2面的な論争が行われているのではないか」との見方を披露しました。

これに対し于副院長は、10年ごとに何かが変わり30年前と現在では全く違う中国の現状を「不確実性、不安定な世界」と表現し「外交政策を立てるのが難しくなっている」と述べる一方、日中関係に関しては「2012年に底をうった」と表現、笹川平和財団が東シナ海空域の信頼醸成に向け日中両国の専門家を集めて行った提言づくりのような危機管理の取り組みの必要性を強調しました。

このほか川島教授は、民主化を求める動きが活発化している香港情勢を取り上げ「現状に対し何らかの苦言を呈してもいいのではないか」と英国側にも注文を付けました。

会場には多数の外国関係者の姿も

会場には多数の外国関係者の姿も

日英グローバルセミナーは変わり行く世界、特に経済や安全保障、社会問題について日本と英国が解決策を探るのを目的に2013年からロンドンと東京で交互に開催されており、12日の開会式で日本財団の笹川陽平会長は「世界はこれまでにないスピードで不確実性を増しています。見方を変えれば、この不確実性は新しい協力関係を構築するよい機会ともなります」とセミナーでの活発な議論に期待を述べました。







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