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2016年09月14日(Wed)
誰もが自分らしく暮らし続けるために
鹿児島で権利擁護支援従事者研修を開催
地域の専門職が集まり実践学ぶ


一般社団法人「全国権利擁護支援ネットワーク」(千葉県船橋市)は9月7日、鹿児島県鹿屋市の鹿屋市市民交流センターで、権利擁護支援従事者研修を開催しました。認知症や障害などで生活に困難が生じたとき、それでも自分らしく暮らしていきたいという思いは、少子高齢化が進む現在、多くの人が持つ可能性があると言われています。誰もが地域で自分らしく暮らし続けることを支援するために、今回の研修には地域の専門職が集まり、支援の実践について学びました。

基調講演をする佐藤教授

基調講演をする佐藤教授


同ネットワークは2009年に任意団体として設立され、14年に一般社団法人化されました。日本財団はこれまで権利擁護の実践活動の基本的な考え方や支援の内容などをDVD化する事業、ニーズ調査、活動マニュアル作成などの助成を行ってきました。本年はこうした活動を基に現場での人材教育を目的とした従事者研修を支援しています。

グループで議論する参加者

グループで議論する参加者

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事例の事実確認、支援のニーズについて発表する参加者

話し合った支援計画について発表

話し合った支援計画について発表

今回の研修には九州一円から30人の権利擁護にかかわる専門職が参加、午前中は同ネットワーク代表で弁護士の佐藤彰一國學院大學教授による「権利擁護支援の基本」と「意思決定支援とエンパワメント」の講義がありました。昼食を挟んで午後からはNPO法人「知多地域成年後見センター」(愛知県半田市)の今井友乃事務局長を講師にした事例検討のグループワーク、続いてNPO法人「PASネット」(兵庫県西宮市)の上田晴男理事長から講評がありました。

最初に佐藤教授は「権利擁護とは、何らかの事情により、自分の思いや意見を伝えにくい、伝えられない、そして社会的に不利益を受けている人に代わって、その人について判断していくということで、子ども、LGBT(性的マイノリティー)、患者、ホームレス、外国人、生活困窮者、高齢者、障害者などが対象者になっています。当事者の希望を酌み取って、その希望に沿った生活を組み立てること、中心はその本人であるということが大切です」と述べ、「本人のことが分かっている、意向を理解している、情報提供ができる、といった支援の方向性がないがしろにされると、周囲の思い込み、たとえそれが善意ではあってもその思い込みに本人が左右されてしまい、本来必要な支援につながらなくなります」と指摘しました。

佐藤教授はまた、権利擁護の実践者として相談支援(ソーシャルワーカー)、法的支援(法律職)、生活支援の三つの立場をあげ、当事者の尊厳や最善の利益、そしてその連帯性を確実にした上で、連携・実践することが必要だと訴えました。

例えとして、同教授は独居で掃除や洗濯ができなくなり、グループホームに移った高齢者が、ゴミ屋敷になっている自宅に勝手に帰ってしまうという事例を挙げました。よく理由を聞いてみるとグループホームは禁煙だから嫌だということが分かりました。

「健康上の問題も抱えており、当然禁煙の方がその人にとっての最善の利益であるという考え方があります。一方で、本人の思い、選び取ったものを尊重していく選択肢もあり、正解はないけれど、その人を孤立させないで、社会の中で生きていけるように支援していくことが大切であり、その実践のプロセスを説明できるようにしておくことが、支援者には求められます。人は自分の思いを否定されたとき、自分自身が全否定されたと感じます」と同教授は話しました。

午後は今井講師のリードで5つのグループに分かれて事例検討を行いました。ここでは、事実を確認すること、確認できた状況の中で必要な支援について考えること、を念頭に置きながら、グループで討論し、その成果を共有しました。

会場となったリナシティかのや

会場となったリナシティかのや

最後に、上田講師から支援の展開手順、支援ニーズの見立て、支援方針の立案プロセスと作成ポイントについて具体例を交えて解説がありました。「いい支援は、方法と手順が明確で、実践を担う役割の分担ができていて、スケジュールが設定されている。会議が終わったとき、決まっているのは次の会議の日程ということだけは避けなければなりません。寝た切りであってもその人の横で会議をするのが理想、本人の前で会議をするとその人の悪口が絶対出ない。なかなか難しいが、基本はここにあります」と同講師は話し、支援の基本を改めて会場全体で確認しました。


● 全国権利擁護支援ネットワーク ウェブサイト












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