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2016年03月09日(Wed)
パラリンピック競技特集(15)肢体不自由者卓球
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リオ大会でメダル2個獲得も!

日本はかつて「卓球王国」とも言われ、パラリンピックでもシドニー大会(2000年)まではメダルを獲得していましたが、それ以降はメダル獲得がありません。4年後に東京大会を控えているだけに、今秋のリオ大会でメダルを獲得、東京につなげたい、との思いが選手、コーチら大会関係者の間で盛り上がっています。大阪府舞洲障がい者スポーツセンターで先週末に開かれた第36回ジャパンオープンを取材して、その熱気を感じました。

リオ大会でメダル獲得が期待される岩淵幸洋選手
リオ大会でメダル獲得が期待される岩淵幸洋選手

ジャパンオープンは日本肢体不自由者卓球協会の主催で開かれ、全国から有力選手だけでなく、一般の愛好者も含め約200人が参加しました。開会式で畠山講史郎会長が「この大会は21年前の阪神淡路大震災、5年前の東日本大震災の年も関係者の努力と参加者の熱意に支えられ、今回まで途切れなく続いています」と挨拶し、東日本の被災地の一日も早い復興を祈念しました。

全国から集まった卓球アスリートの熱気で盛り上がるジャパンオープン
全国から集まった卓球アスリートの熱気で盛り上がるジャパンオープン

この後、車いすの吉田信一選手が選手を代表して選手宣誓を行い、フェアプレー精神で闘うことを誓いました。開会式後、会場では、車いすの選手と、立ってプレーする立位の選手に分かれて熱戦が展開されました。この大会は、障害の状態によるクラス別ではなく、車いすか、立位かの2種類だけに分かれて優劣を競うもので、初日は個人戦、2日目は団体戦が行われました。

リオ大会に派遣される選手は、国際大会での成績と世界ランキングの順位を参考に選考され、すでに3選手が内定しています。車いすは吉田信一選手、別所キミエさん、立位は岩淵幸洋選手の3人。別所選手は今回が4回目というベテランで、北京・ロンドン大会では5位に入賞しています。吉田、岩淵選手はともに初出場です。

車いすの部でメダルを狙う吉田信一選手
車いすの部でメダルを狙う吉田信一選手

卓球は19世紀後半に英国で生まれ、発展してきました。元々はテニス選手が雨で練習ができなかった時にテーブルの上でテニスのまねごとをしたのが始まりといわれています。パラリンピックでは1960年のローマ大会から公式種目として行われています。日本選手はシドニー大会で銀、銅メダル各1を獲得した後、ぱったりメダル獲得が途絶えています。

日本代表監督の富岡成一さん(71)に、リオ大会での目標などを聞きました。

日本代表監督の富岡成一さん富岡監督は「内定した3選手のビデオを見たところ、レシーブがうまくできれば、メダルに手が届くところまできている選手がいる。選手も若返ってきているので、うまくいけばメダルを2つ取れそうだ」と話していました。また、東京大会までの強化策について「若い人を積極的に発掘していきたい。障害者は練習する機会が少なく大変だが、岩淵選手は早稲田大学で卓球部の選手と一緒に練習できるので、頼もしい」と語りました。

立位の岩淵幸洋選手(21)は、東京生まれの早大3年生。両足が内側に曲がる先天性の内反足ですが、装具をつけていても日常生活には不自由はないそうです。

立位の岩淵幸洋選手小さい時からスキー、ゴルフ、体操などを試してみた結果、「頭を使うし、戦術・技術で補えるうえ、体格差を感じさせない」ことから卓球を選び、中学1年から本格的に始めたそうです。高校3年から各種大会に出場していますが、昨年は7つの国際大会に出場し、そのうち3つの大会のシングルスで優勝し、世界ランキングは12位にアップしました。国内のクラス別選手権では一昨年から2連覇しています。

なんといっても早大卓球部で健常者の強豪と一緒に練習できるのが強みです。

今後の目標を聞くと「リオ大会では、とにかく表彰台に上ること。最終目標は東京大会で金メダルを取ることです。両足の障害で大きく動けないので、スピードのある卓球を心がけています」と、語っていました。

車いすの吉田信一選手車いすの吉田信一選手(50)は、卓球を磨くために16年前、郷里の福島県から上京した「卓球大好き人間」です。高校3年の時、バイクに乗っていて車に激突、胸の骨を折るなどの大ケガをし、1年間入院しました。福島国体(1995年)の前年、車いす業者からスポーツをやるよう勧められ、卓球を選びました。だが、県内に強敵がいて勝てなかったので、一念発起して上京、都内の卓球クラブに入会して練習に励みました。そのかいあって、国際大会で銅メダルを取るなど、活躍しています。世界ランキングは15位です。

吉田選手はリオ大会の目標について「まずリオ大会で自分の体調を見ながらメダルを取りにいく。その勢いで東京大会にも出たい」と意気込んでいます。

車いすの別所キミエ選手同じく車いすの別所キミエ選手(68)は、兵庫県明石市在住のベテランです。骨のがんを患い、40代から卓球を始めたといいます。「卓球は気軽にできて、楽しいスポーツです」と、その魅力を語っていました。

リオ大会の目標を聞くと「北京・ロンドン大会の5位を上回りたいが、これまでのように“メダル、メダル”ではなく、リラックスして1戦1戦闘っていきたい」と、静かに闘志を燃やしていました。世界ランキングは7位。

パラリンピック卓球には、肢体不自由者の部と知的障害者の部があります。双方の競技団体で話し合い、来年から合同で大会を開催することが決まりました。お互いに切磋琢磨すれば、技術や戦術の飛躍的な向上が期待されます。



競技紹介卓球
卓球は一般の競技規則に準じて行われるが、障害の種類や程度によって規則の一部が変更されている。一例をあげると、車いすの選手のサービスでは、エンドラインを正規に通過したボール以外はノーカウントになる。また、障害により、正規なトスができない場合は一度自分のコートにボールを落としてからサービスすることが認められている。

● 肢体不自由者卓球協会 ウェブサイト
● 日本財団パラリンピックサポートセンター ウェブサイト 






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