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2016年02月24日(Wed)
パラリンピック競技特集(14)知的障害者陸上競技
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認知度アップを目指し、全力投球!

「ポンポンポンと大きく、早く腕を振る!」
河合正治強化委員長(46)の良く通る声がグランドに響く。
愛知県豊川市の陸上競技場で先週末、パラリンピックに向けた「日本知的障がい者陸上競技連盟」の重点強化合宿が行われました。雨や強風にたたられましたが、今秋開催されるリオ大会から1種目加わり、計4種目の競技が行われることもあって、選手たちは張り切ってトレーニングに励んでいました。

50メートル走のタイムトライアルを行う選手たち
50メートル走のタイムトライアルを行う選手たち

強化合宿に参加した21人(男子11人、女子10人)は、400メートル、1,500メートル、走り幅跳び、砲丸投げの強化指定選手です。いずれも全国から集まってきた知的障害者陸上競技のトップ・アスリートたちです。合宿参加者の数が身体障害者の陸上競技などに比べて少ないのは、出場できる競技種目が少ないためです。なぜなら、2000年のシドニー・パラリンピックで、極めて不幸な事件が起きたからなのです。

事件というのは、知的障害者バスケットボールでスペインチームが複数の健常者を知的障害者と偽って出場させ、金メダルを取ったのです。その後、不正が発覚し、金メダルが剥奪されただけでなく、知的障害者が参加している全競技から追放されました。このため、ロンドン大会まで計3回、12年にわたって知的障害者はパラリンピックから排除されたのです。

強化選手たちに走り方のコツを教える河合強化委員長
強化選手たちに走り方のコツを教える河合強化委員長=右

ロンドン大会から知的障害者の陸上競技、水泳、卓球の3競技が再開されました。ただ、陸上競技で参加が認められたのは1,500メートル、走り幅跳び、砲丸投げの3種目だけでした。リオ大会からの追加種目も400メートルの1種目のみです。日本知的障がい者陸上競技連盟では、東京大会からさらなる追加種目を期待していますが、今のところ何の連絡もないそうです。スペインチームの選手替え玉事件は、今もって知的障害者の選手たちに大きな傷跡を残しているのです。

走り幅跳びの練習をする女子選手
走り幅跳びの練習をする女子選手

強化委員長を務めている河合正治さん同連盟で8年以上、強化委員長を務めている河合正治さん(46)は「リオ大会に日本選手が何人出場できるかどうかは、今春実施される3つの大会での成績次第です。その結果を受けて、5月末にも日本の出場割当数が国際連盟から示される予定です」と語りました。

また、リオ大会の見通しについては「男子は走り幅跳び、女子は1,500メートルが有望ですが、いずれもメダルは厳しい状況です」と話していました。このため、開催国である東京大会に期待をつなぎ、今後(1)若い選手の発掘(2)若い選手の育成(3)今の選手の力を引き出すことを課題に、強化を進めていく考えを示しました。

さらに、河合強化委員長は20年以上、教員として障害者教育に携わってきた経験を踏まえ、「知的障害者への対応が世の中で遅れているのは否めません。知的障害者スポーツの認知度も低いので、フェイスブックやツイッターでPRしていきたい」と話していました。

山口光男選手走り幅跳びの男子で有望な選手は、昨年秋の世界知的障害者選手権で惜しくも4位となった山口光男選手(26)。静岡県富士市在住で、地元の住宅設備機器メーカー、パーパス(株)で働いています。富士特別支援学校時代に走り幅跳びを始め、全国大会へ出場して注目されました。同じ学校で陸上競技をしていた1年後輩の恵美さんと結婚、現在、女の子2人の父親です。

高校時代から指導している強化スタッフの神田いづみさんは「山口君が働いている会社が全面的に支援し、海外遠征の際には旅費を援助しています。また、山口君の後も、障害者を毎年採用してくれています」と話す。7人兄弟の長男の山口選手にとって、障害者に理解のある会社が“強い味方”であることは間違いない。

山口選手は国際大会でメダルに手が届きそうな結果を残していますが、世界ランキングは現在14位です。「リオ大会に出るには世界ランクが5位以内に入らないと難しい。東京大会の時には32歳になりますが、けがをしないよう競技を続けて、大会に出られるようがんばりたい」と、静かに闘志を燃やしていました。

酒井園実選手走り幅跳び女子のホープは、本格的に練習を始めてまだ1年の酒井園実選手(19)。埼玉県久喜市在住で、小さい時からのスポーツ好き。兄や姉と水泳や空手を習い、中学時代から部活動で陸上競技を始めました。高校卒業と同時にスポーツクラブ「彩たま陸上クラブ」に入り、走り幅跳びを本格的に始めたそうです。

昨年は2度の国際大会に出場し、4m69cmを跳び、日本記録を更新しました。しかし、世界ランキングはまだ14位で、5位以内に入らないと出場は厳しい状況です。酒井選手は「もっと記録を伸ばし、東京パラリンピックを目指したい。仕事と練習の両立は大変だけど、楽しくやっています」と、明るく話していました。

石田正大選手400メートル男子のホープは、愛知県刈谷市在住の石田正大選手(19)。中学1年生の部活動で100メートルを始めましたが、その後、400メートルに転向しました。社会人1年生で、トラック運送会社の事務員をしながら練習に励んでいます。記録は1年ごとに伸びていて昨年夏、51秒48の日本新を記録しました。だが、世界ランキングはまだ19位で、やはり5位以内に入らないとパラリンピック出場は厳しいといいます。

石田選手は「50秒台から49秒台に持っていき、なんとかして東京パラリンピックに出たい」と意気込んでいます。

池崎恵選手400メートル女子の有望株は、東京都世田谷区在住の池崎 恵選手(24)。高校卒業と同時に知的障害者の陸上クラブに入り、練習を重ねています。昨年夏、日本知的障害者陸上競技選手権で優勝を飾りました。しかし、世界ランキングの壁は厚く、現在15位。5位以内を目標に、スピードを上げていく練習を積んでいるといいます。

池崎選手は「だんだん良いフォームに仕上がっていくのがうれしい。スピードの質を上げていき、東京パラリンピックでなんとかメダルを取りたい」と、抱負を語っていました。

知的障害者のスポーツは身体障害者などに比べ、歴史が浅く、認知度も低い。社会の目もまだまだ厳しいが、選手たちは心からスポーツを楽しんでいるように感じました。



競技紹介知的障害者陸上競技
陸上競技には、さまざまな障害のある選手が参加する。そのため、障害の種類や程度によってクラス分けされるが、基本的には一般の陸上競技と同じルールが適用される。知的障害者の場合も同様である。

● 日本知的障がい者陸上競技連盟 ウェブサイト
● 日本財団パラリンピックサポートセンター ウェブサイト 






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