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2016年02月15日(Mon)
新拠点「Good Job!センター」開設へ
障害のある人と共に仕事の創出目指す
奈良市の「たんぽぽの家」


2016年夏オープン予定のGood Job!センターの完成模型
2016年夏オープン予定のGood Job!センターの完成模型(たんぽぽの家提供)

アートやデザインを通して障害のある人たちの社会参加を進め、仕事づくりに取り組んでいる社会福祉法人わたぼうしの会社会就労センター「たんぽぽの家」(奈良市六条西3‐25‐4)がこの夏、障害のある人と共に社会に新しい仕事をつくりだすことを目指す「Good Job!センター」を、日本財団の支援を受けて奈良県香芝市に開設します。この意欲的な取り組みについて、同センター開設準備室スタッフの小林大祐さんにこのほどインタビューをしました。小林さんは、センターの運営団体である「たんぽぽ家」の軌跡をたどりながら、センター開設に向けてのいきさつや、そこに託す思いを話してくれました。「たんぽぽの家」の資料から「40年のあゆみ」(枠内)を引用させていただきながら、小林さんの説明(かぎかっこ内)を紹介します。

地鎮祭の様子
Good Job!センター地鎮祭の様子(2015年12月2日、奈良県香芝市で)(たんぽぽの家提供)

1973年 奈良たんぽぽの会発足。「たんぽぽの家づくり運動」を始める。芸術文化活動を通じ、生きがいを持って生活できる、障害のある人の拠点づくりを行う。


「1973年に重度の身体障害のある子どもを持つ親たちが、地域との関わりあいの持てる居場所をつくろうと、市民運動として展開したのが始まりです」


1976年 財団法人たんぽぽの家設立認可。障がいのある人の詩にメロディをのせて歌う「第1回わたぼうし音楽祭」を開催。

1987年 社会福祉法人わたぼうしの会設立認可。

1991年 「アジアわたぼうし音楽祭」開催。以降、2012年まで2年に1回、アジア太平洋地域の各都市で開催。


「市民運動の一環としてスタートし、1976年に法人を設立しました。当時は障害に対する世の中の価値観も違い、家から出ることもできなかったり、学校に通えなかったりすることもありました。そういう時代の中で、障害のある人が持っている表現を社会に発信するため、最初に始めたのが『詩(うた)』でした。全国にいるミュージシャンが実際に舞台に立って、障害のある人の詩にメロディをのせて歌うコンサートを開催しました。これが『わたぼうし音楽祭』です。表現活動を通じて社会に貢献する、社会に参加するというスタートでした。この音楽祭が全国各地、さらにはアジア・太平洋地域にも広がり、2015年8月には40周年を迎え、市民運動として定着しています」

「障害のある人の表現を社会に生かす市民運動と同時に、地域のケアを支えるための仕組みづくりとして、社会福祉法人「わたぼうしの会」が1987年に発足しました。アートとケアの視点から『詩』を原点に、語り、演劇、絵画、書道、陶芸など、障害のある人の表現の可能性を探ってきました。アートが目的なのではなくて、アートを通じて社会にどう参加していくか、アートを通じて社会にどう貢献できるか、そういうことを考えていくことのきっかけとなったのが『わたぼうし音楽祭』でした」


開設準備室スタッフの小林大祐さん
「たんぽぽ家」の軌跡をたどりながら「Good Job!センター」開設に向けてのいきさつなどを話す開設準備室スタッフの小林大祐さん

1994年 日本障害者芸術文化協会(現NPO法人エイブル・アート・ジャパン)発足。ネットワークの拠点として東京で活動開始。

1995年 「エイブル・アート・ムーブメント」始動。障がいのある人のアートを新しい視座でとらえなおす市民芸術運動を始める。

1996年 「トヨタ・エイブルアート・フォーラム」スタート。

1997年 障がいのある人の表現を公立美術館で紹介する日本初の企画展「エイブル・ア−ト’97 魂の対話」を東京都美術館で開催。

2000年 近畿労働金庫と協働で近畿2府4県を毎年巡回するコミュニティー・アートプロジェクト「ひと・アート・まち」開始。

2003年 「福祉をかえる『アート化』セミナー」開始。

2004年 障がいのある人の舞台表現活動支援し、舞台表現の可能性を探る、明治安田生命社会貢献プログラム「エイブルアート・オンステージ」が始動。「たんぽぽの家アートセンターHANA」オープン。日本初の障がいのある人のアートセンターが奈良市に完成。


「1990年代に入ってから、われわれは『エイブル・アート』(可能性の芸術)という言葉を提唱して、障害のある人の存在と表現をもっと社会に出していこうと、アートの社会化、社会のアート化をテーマに『エイブル・アート・ムーブメント』を起こしています。全国各地でアートプロジェクト、地域プロジェクトを積み重ね、2004年には日本初の障害のある人のアートセンターとして『たんぽぽの家アートセンターHANA』をオープンさせました。もともと平屋だったものを日本財団の支援をいただいて改築をして、障害のある人たちが絵画や立体造形、テキスタイル、陶芸、演劇、ダンスなどのアート活動に打ち込める環境をつくりました。『HANA』という名称も障害のあるメンバーから名前を募りました」


「たんぽぽの家アートセンターHANA」

「たんぽぽの家アートセンターHANA」

HANAの壁に掲げられたネームプレート(左)と日本財団のロゴ

HANAの壁に掲げられたネームプレート(左)
と日本財団のロゴ


HANAのアトリエ

HANAのアトリエ

HANAの手織り部屋

HANAの手織り部屋




2007年 障害のある人のアートを、デザインを通じて社会に発信するエイブルアート・カンパニー発足。


「アートプロジェクトを進めていくなかで、障害のある人の作品を使いたいという企業からの問い合わせや、作品の管理や活用方法が分からないといった施設の声もあり、表現を求めている人と出したい人をつなぐ役割の必要性を感じ、2007年に著作権管理をする中間支援組織エイブルアート・カンパニーを発足させました」


2012年 「Good Job!プロジェクト」始動。

2013年 東京・宮城・福岡で「Good Job!展」を開催。3会場で約12000 人の来場を記録した。動向を紹介するフリーペーパー「Good Job! Document」を創刊。


「それまでは表現を通じて、どう社会に参加するか、どう社会に貢献するか、ということを行ってきました。そこからさらに『所得』や『尊厳のある労働』というところに焦点を当て、障害のある人の仕事や働き方に目を向けた『Good Job!プロジェクト』が2012年に始動しました。障害のある人たちの新たな仕事や、これからの働き方を全国各地から発見し、発信するため、2013年度から2015年度まで日本財団から支援を受け、展開しているのがGood Job!展です」


2016年  Good Job!センター着工。8月オープン予定


「Good Job!センターは1月6日に着工し、オープンは8月の予定です。設計したのは建築家の大西麻貴さんと百田有希さん(o + h)です。南北2棟の建物で、ここで障害のある人たちが働くことになります。できるだけ多様な人が、多様なままで働くことができ、受け入れる側も多様なセンターを目指します。アトリエやモノづくり工房といった創造的な空間をはじめ、商品を流通させるためのセンターとしての役割も担います。デザイナー、クリエーター、企業、エンジニアといった、あらゆる人が関わり、障害のある人の仕事づくりや地域の産業を発展させるモノづくりに挑戦します。センターの建設予定地は、たんぽぽの家づくりの時からお世話になっている、奈良たんぽぽの会会員の吉本昭さん(大阪市在住)から『この土地を、今後の障害者福祉のモデルとなるような事業のために使ってほしい』とご寄付をいただきました。このご縁を大切にし、障害のある人たちの新しい仕事づくりの活動拠点にしていきます」







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