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2015年11月26日(Thu)
「ソーシャル・インパクト・ボンド」セミナー
わが国初のパイロット3事業の進捗状況報告

日本財団は、民間の力を活用した社会課題の解決法のひとつであるソーシャル・インパクト・ボンド(略称・SIB)によるパイロット事業3件を全国で実施していますが、その経過報告を兼ねたセミナーを11月19日に東京で、同20日に大阪で開きました。このうち、大阪会場の電通関西支社(大阪市北区堂島)で開かれたセミナーについて報告します。

パイロット事業の進捗状況を討議する
パイロット事業の進捗状況を討議する=左から=鴨崎貴泰、工藤啓、能島祐介、粉川一郎の各氏

SIBは2010年に英国で開発された、新しい官民連携の社会的投資モデルです。投資家の出資により民間企業が社会課題解決に向けた事業を実施し、行政経費が削減される成果が上がれば、自治体などが投資家に報酬を払う仕組みです。対象事業には、元受刑者の社会復帰、児童の養護施設から家庭養護への移行、若年犯罪の再犯防止など、予防的な施策で社会的コストが削減される非営利事業が挙げられています。

現在、日本財団がパイロット事業として実施しているのは、

1. 神奈川県横須賀市で社会的養護が必要な子どもに家庭的環境を整備し、施設養護から家庭養護への移行を加速させることを目的とする事業
2. 公文教育研究会と連携し、認知症予防のための学習療法に協力団体として参加。福岡市、熊本市など7自治体で高齢者の生活の質向上を図る一方、公的コスト削減を目的とした事業
3. 兵庫県尼崎市で若者就労者支援を行い、長期的に若者の自立を支援する事業

の3事業です。

世界の動向を紹介する伊藤代表理事

世界の動向を紹介する伊藤代表理事


セミナーではまず、伊藤健SROIネットワークジャパン代表理事が「SIBの概要と世界の動向」と題し、SIBの仕組みと世界の主な動きを紹介しました。世界中で行われている事業件数は40数件あり、このうち30件は英国で、9件は米国で実施されています。投資総額は約157億円で、大半は大手金融機関からの投資とされています。

続いて鴨崎貴泰・日本ファンドレイジング協会事務局長は「自治体での導入プロセスと課題」と題して、横須賀市で行われている児童の施設養護から家庭養護への移行と、福岡市などで実施されている認知症予防プログラムについて紹介しました。
自治体での実施状況を説明する鴨崎事務局長

自治体での実施状況を説明する鴨崎事務局長



横須賀市のケースは、新生児を対象とした「特別養子縁組」を推進することにより、児童養護施設でかかる公的コストの削減を目指しています。初年度は特別養子縁組4件成立を目標としています。この縁組は家庭裁判所の審判を経て、戸籍に「長男」などと記載されます。子どもが18歳まで施設で育つと市の経費は3500万円となるが、目標が達成できれば事業費1900万円がかかっても差し引き1600万円の経費削減となります。11月現在で養子縁組の成立は1件ですが、検討中が数件あるということです。

また、認知症予防については、公文教育研究会が全国300以上の施設で約1万6千人を対象に「学習療法」のプログラムを実施して認知症の予防を図り、介護コストを減らすというものです。すでに福岡市、熊本市など7自治体で実証実験を行い、介護コストや医療費にどのように影響するかを調査中です。公文教育研究会は来年度もこの事業を継続する意向を示しています。

さらに、尼崎市で実施している若者の就労支援事業については、鴨崎氏がモデレーター、能島祐介・尼崎市参与、粉川一郎・武蔵大学社会学部教授、工藤啓・育て上げネット代表理事がパネリストとなり、パネルディスカッションを行いました。尼崎市では生活保護世帯が増加しており、高齢者や傷病者以外の世帯のうち、とくに若い受給者を対象に就労支援のプログラムを実施、社会保障費の低減、税収の増加を目指しています。
尼崎市の実情を説明する能島参与

尼崎市の実情を説明する能島参与

これまでに就労可能な若者17人に対し、訪問支援(アウトリーチ)に成功し、うち1人は高校入学を希望しているとのことです。

能島・尼崎市参与は「尼崎市は提案型事業委託制度を設け、民間の提案がよければ民間に委託しており、庁内でもSIBへの理解が進んでいる。行政のサービスに色々制限はあるが、市の将来的な負担が改善されるなら喜ばしい」と期待を述べていました。

また、この事業の評価を担当している粉川教授は「1年後の時点でインパクトの評価を行うが、生活保護が必要なくなったかどうかだけでなく、若者に就労に向けた変化が生じたかどうかも考慮する必要があると思う」と話していました。

鴨崎事務局長はSIBの今後の課題について「各省庁がバラバラに進めているが、これからは省庁間の連絡会議が必要だ。今は自治体だけでパイロット事業を実施しているが、国主導のモデル事業も考える必要がある。さらに、英国は政府主導で事業費を出しており、日本でも政府が社会的成果基金のような制度を設置すべきだ」と提言しました。






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