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2015年09月18日(Fri)
“フリー”のパソコン読み上げソフトで「世界を変える」
開発者と利用者が交流する
NVDAワールド開催


パソコン用無料音声読み上げソフトNVDA(NonVisual Desktop Access)の利用者拡充を目指したイベント「NVDAワールド2015東京」が9月12日、東京都・赤坂の日本財団ビルで開催された。日本版の開発に取り組むNVDA日本語チームの主催で、会場には視覚障害者など利用者約60人が集まり、最新の日本語版機能や活用方法について学んだ。同イベントはインターネットを介して音声配信もされ50人以上が参加した。

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NVDAが就労の場面でどう役立つかを説明する村松謙さん

NVDAは、オーストラリアの非営利組織「NVAccess」の創設者で視覚障害当事者でもあるマイケル・カランさんとジェームス・テーさんが、2006年に開発した。パソコン読み上げソフトはNVDA以外にも流通しているが、1ダウンロードあたり15万円と高価。そこで、二人は経済状態や言語、住んでいる地域に関わらず視覚障害者がコンピューター技術を利用できるようにすることを理念に掲げ、オープンソース・ソフトウエアとして無料で提供し始めた。これにより、世界に3900万人いると言われている視覚障害者が、コンピューター上にある情報にアクセスすることを可能にし、教育や雇用の機会を平等に得られる世界を目指している。これまでに40以上の言語に翻訳され、利用者は150カ国で計7万5000人を超えた。

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NVDAの活用法について熱心に耳を傾ける参加者ら


日本財団は、コンピューター、インターネット等の技術を利用することで、視覚障害者が教育や就労の場面で負うハンデを最小限にすることを目指し、13年からNVAccessの開発・普及活動を支援している。同年から14年にかけNVDAダウンロード数は20%以上増加した。NVAccessでは今年度、インターネットが整備されていない地域での利用者の拡充や、既存の利用者向けにオンライン上で技術支援などを展開していく予定だ。

この日のイベントでは冒頭、NVDA日本語チームの代表を務める西本卓也さんが、8月25日にリリースされた最新の日本語版の改良点やウェブアプリの使い方を説明した。「最新版ではWindows10への対応が可能になった」などと紹介したうえで、西本さんは、「NVDA日本語チームとしては今後も、最新版のリリース前に利用者の意見も積極的に取り入れていきたい」と語った。

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西本卓也さん


続いて視覚障害者のICT(情報通信技術)活用を支援するブラインドパソコンサポートの村松謙さんが登壇し、就労場面でのNVDAの活用方法を紹介した。村松さんは「NVDAの最大のメリットはオープンソースであること」と強調。企業がソフトウエアのバージョンアップ導入を決める際、有償であれば費用に見合ったものであるかがカギになる。NVDAはバージョンアップも無料で行えるため、視覚障害者にとって勤務先のIT企業で健常者の上司から了承を得やすい。また、ソフトウエアは開発のサイクルが早いのが現状だが、NVDAは最新版を迅速に入手することができる。ただ、村松さんは、NVDAに備わっていない機能で他の読み上げソフトのほうが優れている場合もあると指摘し、「補完しながら精度の高い成果物を作成していくことが大切」と締めくくった。

NVDA日本語チームのメンバーである野々垣美名子さんは、NVDAのダウンロード方法や使い方に関するサポートサービスを提供する「NVDAヘルプデスク」について紹介した。このヘルプデスクは登録制で、サポートは電話やメールで行っている。視覚障害者を主な対象としているパソコン読み上げソフト市場では、口コミの影響が大きく、NVAccessとしても利用者拡大にあたり利用者へのサポート体制を強化していく考えだ。

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野々垣美名子さん


私は財団の事業担当者として初めて「NVDAワールド」に参加したが、日本語版の開発者や利用者の声を直接聞くことができる貴重な機会になった。一番の発見は、NVDAの開発には、世界中の開発者が携わり、ボランティアが運営を支えている点だ。現に、NVDA日本語版は開発もヘルプデスクの運営もボランティアで行われている。協力しているのは、経済状態や言語、住んでいる地域に関わらず視覚障害者がコンピューター技術を利用できるようになり、視覚障害者が教育や雇用の機会を平等に得られる世界を目指す、というマイケルさんとジェームスさんの理念に共感する人たちだ。全ての無料ソフトウエアが開発情報を公開している訳ではないなか、NVDAは開発情報を公開すれば“フリー”に改良を加えられるようにしている。NVDAと開発参加者・ボランティアは“目指す世界”を共有しているのだ。こうした共感と賛同が世界を変える力になるのではないか。NVAccessは来年10周年を迎える。18年までに利用者数を20万人にするという彼らの目標にむけて、世界中でより多くの賛同が得られるように協力していきたい。

(粟野弘子)









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