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2015年08月11日(Tue)
自分の価値観も大切にした、社会とのつながり方とは?
ママ向けトークイベント開催

個人と社会の「つながる」を再認識し、自分を見つめ直すことをテーマにしたトークイベントが7月23日、東京都・表参道のスパイラルビルで開かれた。課題解決には、協力者を増やすためにも周囲への配慮が必要。けれど、自分の価値観をもって周囲に流されないことも大切――。そうした問題意識を出発点に、3人のゲストが「私流の生き方」を語り合った。

参加者からの質問に答えるゲストら。議論が白熱してマイクを奪い合う場面も(左端は、西田陽光さん)
参加者からの質問に答えるゲストら。議論が白熱してマイクを奪い合う場面も(左端は、西田陽光さん)

日本財団が「本当に必要で今すぐ役立つ子育ての知恵」を届けようと実施している「女性のためのリベラルアーツ講座」の第6回。ワークライフバランスの啓蒙や子育て支援に取り組んできた次世代社会研究機構の代表理事、西田陽光さんがコーディネーターを務めるシリーズの前期最終回で、リピーターも多く含む約30人が、ゲストのトークに聴き入った。

狩野さやかさん
狩野さやかさん(中央)


フリーのウェブデザイナーで、育児当事者の学び合いの場「patomato」の代表でもある狩野さやかさんは、子育て中の女性は「産んでみなければわからなかったこと」をたくさん抱えていると指摘。特に、社会とのつながりが限りなくゼロになる感覚を味わった母親が多いことを紹介し、自分もその一人だと話した。また、子供を育てるうえで妊娠・出産、授乳以外のことは男性でもできるのに結局は女性が背負うことが多く、これが不公平感につながっていること、子供に何か特別な事情があれば、通常より余分に時間をさかなければいけない状況が出てくることにも言及した。

狩野さんは、「子供に予想以上に手をかけなければならない状況に、私はたまたま出産直後から直面したが、そういう可能性は、いつでも誰にでも同じだけある」とし、「そうなれば『出産何か月後には、バリバリ働こう』などというイメージを修正しなければならない。私も予定通りには行かない状況になり、実際になんとか修正してやってきた。柔軟さが必要だった」と話した。

これを受けて、コーディネーターの西田さんは「人生で起こる予定通りにいかないことを、どう乗り越えていくか」がこの講座の通しのテーマだったと総括。「想定外の課題が出てくることは多い。それらを創意工夫で乗り越え第一線で活躍されている方々を、前期講座のゲストとしてお招きした。会場への参加や媒体を通じて、各ゲストの柔軟な生き様を参考にしていただきたい。想定外の出来事に遭遇した時、なぜと立ち止まるのでなく、解決に向けて前向きに考え、あなたらしいやり方で取り組むことが大切」と呼びかけた。

川島高之さん
川島高之さん(中央)


会社社長で、子ども教育NPO「コジカラ・ニッポン」代表を務める川島高之さんも「想定外のことが人生には多い」と実感を込めて話した。例えば、サラリーマン時代に海外への単身赴任を命じられた川島さんは、それを受けた直後に妻の妊娠が分かり、子供の誕生前後は家族と一緒にいられなかったという。

川島さんは日本に戻してほしいと訴え続けるだけでなく、与えられた任務を早く終わらせようと決意。実際に4年間と計画されていたものを1年半ほどで完了させた。そうした経験から、想定外の事態にも対応するため、3つのことを意識するようになったと紹介した。

1.「これだけは絶対に捨てられない」という幹をしっかりと持つこと。「例えば僕だったら、子供と妻と一緒に住むということ。単身赴任の後に、これからは絶対に家族と離れないと決めた。あとのことは柳の木のようにフラフラしていていい」

2.長期の目線を持つこと。「例えば海外赴任を断れば、目先の出世はなくなるかもしれない。しかし、それで評価を下げるような人は相手にしなければいい。しっかりやれば、だれかが見ていてくれる」

3.ギブ・アンド・テイクのギブを、周囲にどんどんやっておくこと。「想定外のことが起こると、会社を休んだり早く帰ったりと周りに迷惑を掛けることも多い。だから、周りをうまく巻き込んで理解を得るようにする。『じゃあ俺がやっとくから』と言ってもらえるように、先にどんどんギブしてあげるのが大切」

三田真美さん
三田真美さん(中央)

起業やイノベーションといった話題から、教育、女性問題まで、幅広いジャンルの書籍を企画・編集する草思社編集部の三田真美さんは、川島さんが紹介したギブ・アンド・テイクの話題に触れて、かつて出版に携わった書籍『幸福優位の七つの法則』(ショーン・エイカー著)を紹介し、「利他」という言葉を挙げた。この著者は「成功する人は成功したから幸せになるのではなく、幸せな気分だから結果的に成功や幸福感がついてくる」と訴えていて、三田さんはこれを引用しながら、利他の実践が結果的に幸福感につながるのではないかと指摘した。

「ビジネス書などを読んでも、合理的利他主義というのが今、ひとつのキーワードとされている。利他という精神で世の中が回っていると考えると、単にネットワークを築くだけでなく、『情けは人のためならず』ではないが、何かをやってあげるという姿勢も大切だ」と強調。自らもベビーシッターより、近所のママ友に子供の世話をお願いすることが多いと紹介し、「向こうからも頼まれる。お互い無償でやってきた。相手のためを思って行動することは、結果的に救いになるかもしれない」と実感を込めて話した。

男性の参加も目立つ会場。リピーターも多くなり、終了後の交流時間には参加者同士の会話が弾んでいた
男性の参加も目立つ会場。リピーターも多くなり、終了後の交流時間には参加者同士の会話が弾んでいた


日本財団ママの笑顔を増やすプロジェクト(ママプロ)を2012年10月に開始。このプロジェクトでは「女性のためのリベラルアーツ講座」を企画するなど、「みんながみんなを支える社会」、「自らを律するママが、配慮ある環境で、活躍できる社会」を目指して活動している。
(益田美樹)





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