• もっと見る

前の記事 «  トップページ  » 次の記事
2015年07月14日(Tue)
高知でも「TURN」展始まる
アール・ブリュット美術4館合同企画 「藁工ミュージアム」で9月まで


藁工ミュージアムの独自展示作品「クマムシ」を説明する学芸員の松本志帆子さん
藁工ミュージアムの独自展示作品「クマムシ」を説明する学芸員の松本志帆子さん


美術の専門教育を受けていない人や障害のある人による作品アール・ブリュット(生の芸術)を主に展示している全国の美術館4館が、昨年11月から順次開催中の初の合同企画展「TURN/陸から海へ(ひとがはじめからもっている力)」が7月12日(日)、高知市の美術館「藁工(わらこう)ミュージアム」でも始まった。会期は9月23日(水)まで。既に京都府亀岡市の「みずのき美術館」(14年11月8日〜15年1月12日)、広島県福山市の「鞆の津ミュージアム」(15年2月1日〜3月29日)、福島県猪苗代町の「はじまりの美術館」(4月18日〜6月28日)で会期を終え、藁工ミュージアムは最終開催館。
藁工ミュージアムは2011年12月、アール・ブリュットに特化した美術館として全国2番目に開館した。戦後間もないころ高知市中心部を流れる江ノ口川ほとりに建てられ、かつてはワラを保管していた「藁工倉庫」を改修。隣接する同様の建物を含め「アートゾーン藁工倉庫」の目玉の一つで、NPO法人「ワークスみらい高知」が運営している。今回の合同展は、4館でつくる実行委員会と日本財団(東京都港区)が、障がいと芸術表現に対する画一的な語られ方や受け止められ方を、あらためて見詰め直そうと主催した。

藁工ミュージアム建物全景
藁工ミュージアム建物全景

入り口付近の掲示には「助成 日本財団」の文字も
入り口付近の掲示には「助成 日本財団」の文字も 


「TURN」は監修者の日比野克彦さん(東京芸術大学教授)と実行委員会が、固定した見方や価値観にとらわれず、自分たちが忘れかけている「はじめから持っている力」を感じ、考えて、想像する視点を大切にしよう、と掲げた言葉だ。

作品の一つ、輪ゴムくぐりを実演する日比野克彦さん(右)
作品の一つ、輪ゴムくぐりを実演する日比野克彦さん(右)


正規の芸術教育を受けていない人が自発的に生み出した、既存の技巧や流行にとわられない絵画や造形の芸術性を、フランスの画家ジャン・デュビュッフェが1940年代に「アール・ブリュット」と呼び、評価されてきた。

合同展の展示は、各館共通作品のほか、それぞれの美術館が、地域の特色を生かした独自企画を織り込んできたのが特色。極小動物「クマムシ」の作品は藁工ミュージアムの独自展示の一つ。動いているクマムシや眠っているクマムシを顕微鏡で見ることができるほか、高知大教授提供のクマムシの映像をパソコン画面で楽しむこともできる。作品説明には、「クマムシは身近に存在し、指でつぶすと簡単に死ぬが、零下200度以下の極低温や宇宙空間などの極限状態でも生き延びる地球最強の生物とも言われる。このもろくも強い動物の存在は、私たち人間を含めたすべての地球の生命体誕生について考えさせ、『生きる』という意味を問いかけてくる」、と書かれていた。

顕微鏡の隣に置かれたニセクマムシの生態模型
顕微鏡の隣に置かれたニセクマムシの生態模型

高知大教授提供のクマムシの映像をパソコン画面で楽しむこともできる
高知大教授提供のクマムシの映像をパソコン画面で楽しむこともできる


開会式では、日比野さんが来館者と一緒に展示室を歩きながら、展示作品の見どころや作家を紹介。「障害という言葉を使わずに、それぞれの『らしさ』『個性』『特色』というものを価値観として出していく。それぞれの『らしさ』が『個性』として認められるのが、アートの一番の魅力だと思う。技術的に優れているとか、伝統を引き継いでいるとか、というものではなく、一個人の『個性』が出ている作品がここに並んでいる。クマムシが出ているが、動物も作品になっている」と説明した。

床にモチーフを描く浅井裕介さん(中)と見守る日比野さん(左)
床にモチーフを描く浅井裕介さん(中)と見守る日比野さん(左)


続く座談会では、藁工ミュージアムの松本志帆子さん、みずのき美術館の奥山理子さん、鞆の津ミュージアムの櫛野展正さん、はじまりの美術館(館長)の岡部兼芳さんの4人とTURN事務局の長津結一郎さんが、藁工ミュージアムの大内郁さんの司会進行で「福祉とアートの大海原を潜水中!TURNとは何か」のテーマで対談。これまでの展示会を振り返り、4館の新しい可能性や課題について話し合った。

座談会の様子
座談会の様子。(奥左から)大内郁さん、松本志帆子さん、奥山理子さん、櫛野展正さん、
岡部兼芳さん、長津結一郎さん


藁工ミュージアムの開館時間は10時〜18時。火曜日休館(ただし9月22日は開館)。入館料一般200円。小学生以下と障がいのある人は無料。(竹内博道)

ページのトップへ戻る







コメントする
コメント


 【正論】世界が結束して海の総合管理を  « トップページ  »  東シナ海空域の信頼醸成