• もっと見る

前の記事 «  トップページ  » 次の記事
2015年02月12日(Thu)
アール・ブリュット合同企画展「TURN」が鞆の津ミュージアムでスタート 美術館にいながら福祉施設を感じる
会場には多くの来場者が集まった
会場には多くの来場者が集まった


 広島県福山市の鞆の浦にある「鞆の津ミュージアム」で「TURN / 陸から海へ(ひとがはじめからもっている力)」が、2月1日スタート。オープン初日には70人が集まり、私たちが持っている常識を覆すような多様な作品に触れた。
作品を解説する日比野さん(左)と櫛野さん
作品を解説する日比野さん(左)と櫛野さん


 オープニングイベントでは、TURN展を監修するアーティストで東京藝術大学教授の日比野克彦さんと鞆の津ミュージアムのキュレーター櫛野展正さんによるギャラリートークが行われ、展示作品を詳しく解説。展示作品はどれも個性豊かで、中には一見難解な作品も。しかし、二人の絶妙な掛け合いで、作品の興味深いポイントや作家が創作に至った経緯が説明されると来場者は皆深くうなずいていた。

自らの作品を解説するサエボーグさん(中央)
自らの作品を解説するサエボーグさん(中央)


 トークの途中、作家自身による作品解説も行われた。ポップな色使いのラバー製の着ぐるみで一見のどかな牧場に見えるが、実は「屠殺場」を表現したサエボーグさんは「管理された生命をテーマとしている。家畜は有刺鉄線に囲まれて、管理されて、生かされ、殺される」と解説。会期の最終日には自ら作品の着ぐるみを着てパフォーマンスを実演すると発表した。

玄関では山本さんが待っている
玄関では山本さんが待っている


 「美術館にいながら、福祉施設を感じられるよう工夫した。玄関には、障がい者支援施設のあゆみ苑の玄関でいつも訪問客を待っている山本さんの写真を貼った。館内中央には木工の工作室を再現し、施設利用者の上之さんが毎週土曜に公開制作を行う。上之さんは電化製品や木工製品を分解しては部品を次の創作に利用する。曲がった釘も曲がったまま使う」と櫛野さん。

完成した作品を手ににっこり微笑む上之さん(右)と日比野さん
完成した作品を手ににっこり微笑む上之さん(右)と日比野さん


 ギャラリートークの最後には、日比野さんが2014年8月、障がい者支援施設に1週間障がい者と共に寝泊りした際、日比野さんに木工を教えた「師匠」上之さんが登場。二人は即興で、のこぎりで木材を切断し、釘を打ちつけ作品を創りあげた。

ラウンドトークの様子
ラウンドトークの様子


 その後、隣接する「鞆こども園」に場所を変えて、「アートと福祉の交差点 大炎上中!!!」と題されたラウンドトークが行われた。櫛野さんに加えて、今回のターン展は、日本財団が建物の整備を支援したアール・ブリュット美術館4館による合同企画展のため、はじまりの美術館(福島県)の館長岡部兼芳さん、藁工ミュージアム (高知県)の学芸員松本志帆子さん、すでに1月で会期を終えたみずのき美術館(京都府)のキュレーター奥山理子さん、その他にアール・ブリュット研究の渡邉あい子さんが登壇。「ターンとは何か。今までアール・ブリュットに関わった人だけがターンできるのか」といった渡邉さんによる問題提起から始まり、登壇者がそれぞれアール・ブリュットへの考え方を述べて、終了した。

 鞆の津ミュージアムでのTURN展は3月29日までの会期。最終日にはサエボーグさんの着ぐるみによるパフォーマンスも。(山口領)




コメントする
コメント


 東シナ海空域に関しても安全対話 2回目の会合開く、6月にも提言  « トップページ  »  ハンセン病の差別の歴史を人権教育に 「ともに生きる」シンポ開催