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2014年09月24日(Wed)
施設より家庭的な環境で育てる 「チャウシェスクの子どもたち」で研究報告 子ども虐待防止世界大会2014
 日本財団は「乳幼児期の施設養育がもたらす子どもの発達への影響について―ブカレスト早期介入計画からの教訓―」のスポンサード・セッションを9月14日、名古屋市で開催された子ども虐待防止世界大会2014の一環として実施した。「子ども虐待防止世界会議」は、2年に1回、世界各国で開かれており、日本での開催は今回が初めて。約70カ国の専門家など2000人以上が参加した。

会場の様子
会場の様子
 日本財団のセッションでは、アメリカのメリーランド大学のネイサン・フォックス教授より、「チャウシェスクの子どもたち」と呼ばれるルーマニアの孤児院の子どもたちについての研究報告があり、子どもは家庭的な環境で育てるべきであると指摘した。300人の会場はほぼ満員で、関心の高さがうかがわれた。

研究報告するネイサン・フォックス教授
研究報告するネイサン・フォックス教授

 この研究は、子どもにとって施設での養育より家庭での養育が望ましいのではないかという仮説を検証するために2001年より開始されたもので、ブカレスト早期介入プロジェクトと呼ばれる。チャウシェスク政権時代の人工中絶禁止と人口増加政策により、政権が崩壊した時には10万人以上の孤児が大型の施設にあふれていた。

ルーマニアの当時の孤児院の様子
ルーマニアの当時の孤児院の様子

 これらの子どもたちを里親に預けるグループと施設に残るグループにランダムにわけ、さらにブカレストで生活する施設養育の経験のない子どもたちが3つ目のグループとして選ばれた。子どもたちについては42カ月、54ヶ月、8歳、12歳の時点で脳や言語の発達やIQ、心理状態などを調査・比較した。ネイサン教授によると、脳の発達は乳幼児期に集中していて、保護者との密接な関係の中で刺激を受けることが重要だという。

脳の神経回路は1歳までに大きな発達をとげる
脳の神経回路は1歳までに大きな発達をとげる

 施設で生活していた子どもたちは、地域の家庭で暮らしていた子どもたちに比べてIQや言語、脳の発達に大幅な遅れが見られた。この後に24カ月より前に施設から出た子どもたちにはIQや言語の表出、内在化障害(うつ、ひきこもり、強迫症状など)、アタッチメント(愛着)の安定に大幅な改善が見られた。24カ月以降に施設を出た子どもたちにも精神面や社会的機能力の改善は見られたが、愛着や脳活動(EEG)については、24カ月以前に施設を出た子どもほど改善しなかった。一方で、脳の一部分や多動性障害(ADHD)など、何歳で施設を出ても改善の効果が見られない分野もあった。

24カ月より早く里親養育を開始したグループは、その後に施設を出た子どもたちよりIQの改善幅が大きい
24カ月より早く里親養育を開始したグループは、その後に施設を出た子どもたちよりIQの改善幅が大きい

施設で育った子どもと、地域の家庭で育った子どもの脳波の違い
施設で育った子どもと、地域の家庭で育った子どもの脳波の違い

 結論として、ネイサン教授は「施設養育はネグレクトの一種であり、この状態から脱却させるのは早ければ早いほど脳と行動の発達に良い」と説明した上で、「子どもはなるべく幼いうちにより家庭的な環境で育てるべきである」と話した。

24カ月以前に里親養育を始めたグループは、8歳時点で施設生活を経験したことがない子どもたちとほぼ同じ脳活動を示した
24カ月以前に里親養育を始めたグループは、8歳時点で施設生活を経験したことがない子どもたちとほぼ同じ脳活動を示した

 指定討論者の藤林武史・福岡市子ども総合相談センター所長が、「日本の施設はルーマニアより養育の質は高いが、それでも子どもには負の影響があるのか」と質問したのに対し、ネイサン教授は「イギリスやギリシャなど質の高い施設でもIQに影響がなくても、愛着は損なわれるとされている。我々のデータは子どもが家庭に行くのはできる限り早いことが望ましいことを示唆している」と述べた。「里親養育にも問題は指摘されているが、どのような里親が望ましいのか」との質問には「里親のコミットメントと愛着、そしてソーシャルワーカーなどによる支援が大切だ」と答えた。

質問する藤林所長
質問する藤林所長

 この研究は、子どもにとって家庭で暮らすことが成長の上でいかに大切かを実証していると言える。国連子どもの権利条約では、全ての子どもは家庭環境の下で成長すべきであると宣言しており、2009年に国連総会で採択された子どもの代替養育に関するガイドラインには、「乳幼児、特に3歳未満の子どもの代替養育は、家庭を基盤とした環境で提供されなければならない」と明記されている。

 しかし現在の日本は、産みの親が何らかの事情で育てることのできない子どもの85%が施設で育ち、0歳から2歳までの約3000人の乳幼児が乳児院という施設で暮らしているのが現状。厚生労働省は今後、里親委託率を3割に増やすことを目標としているが、多くの乳幼児が施設で暮らしている点については現時点では改善の展望は示されていない。

 2011年度に日本で特定不妊治療の助成金を受けた人は、実数で6万8000人に上る。児童相談所や民間の養子縁組団体に養子縁組や里親の希望を登録し、長期間にわたって待ち望んでいる夫婦も多い。少子化が叫ばれる今、産まれてきた子どもたちが健やかに育つため、最善の環境を提供するのは社会の重要な責務である。今後は、日本でも養子縁組や里親の推進に積極的に取り組み、赤ちゃんや小さな子ども達が家庭で暮らすことのできる社会づくりが急務となっている。(高橋恵里子)




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コメント
赤沼様

コメントありがとうございます。ご指摘いただいたとおり「子育てには、子どもに衣食住を保証するという子育て以外に、子どもの心を育てるという子育て」があると思います。

上野の浮浪児といった個別の事案については情報は持ち合せておりませんが、日本財団としてはハッピーゆりかごプロジェクト(http://happy-yurikago.net/)、ママの笑顔を増やすプロジェクト(http://mamapro.jp/)を中心に、間接的にではありますが「子育て」に関する事業を進めていく所存です。
Posted by: 日本財団  at 2015年07月27日(Mon) 15:27
子育てには、子どもに衣食住を保証するという子育て以外に、子どもの心を育てるという子育てがあります。子どもの家庭によっては数は少ないですが、子どもの心を育てよいとしない、心が放棄されて子どもが育っている家庭があります(心の虐待)。そのような子ども達の脳の発達には問題ないですが、心は「チャウセスクの子ども達」に近いと私は推測します。

このような家庭の子ども達はその本能から、基本的に母親から信頼され守られることを求めていて、母親へのメッセージとして無意識に問題行動に走り続けます。学校の中でも問題行動を取りますが、家庭では母親の前でよい子を演じるこどもから母親に向かって荒れる子どもまでいろいろあると推測されます。人間関係が育っていないと感じられる子ども達だと感じられます。

親から学校に行くことを強要され、仕方なく学校に来ていても、子ども達はその本能から、その辛さを問題行動という形で表現し、自分の心の居場所を探し続けています。自分たちの心を受け入れてくれる母親を求めています。

母親は子どもの体の成長だけを求めているという意味ではないかと思います。心まで思いやれない(母性が働いていない)状態だと思います。もちろん母親に責任がありますが、母親自身が母性が働いていない、働けない過酷な状態にいるという意味だと思います。
以前このような母親が相談に来てくれたことがあります。相談に来るくらいだから、何か問題があると感じ取ってきてくれたのです。2時間以上話をしたと思います。終わりの方で母親はワンワンと泣き出し、子どもがかわいそうだった、辛かっただろうと仕切りというようになりました。その後この母親は相談に来ていませんからどうなったか分かりませんが、このように母性が働くとまた違った子育てをしてくれていると信じています。

そのような子ども達は大人に、自分たちの心を守って欲しい、守ってくれたら信頼関係が築けると言う意味だと私は理解します。これらの子ども達はその本能から自分たちの心の居場所を求めています。それを大人が与えないから、与えてくれとサインを出し続けています。そのサインを大人が子ども達が問題だと理解して、このような子ども達は信頼できないと、ますます子ども達を追い込むという悪循環になっている姿だと思います。この悪循環を断ち切るためには子ども達の心の居場所、全てを受け入れてくれるように母親が変わる必要があります。それを子ども達が求めています。

このような子ども達は当たり前の母親を求めています。どんな母親も素直に母性が発揮できたら、子ども達が苦しむことがなくなります。私が幼い頃は食べるもの、着る物、すむところで子どもは苦しみました。上野の山に住み着いていた浮浪児達の今はどうなっているのでしょうか?とても知りたいです。そして心を育てることを放棄された子ども達は心の浮浪児になっているのだと思います。
Posted by: 赤沼侃史  at 2015年07月24日(Fri) 20:03


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