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2014年04月03日(Thu)
途上国援助には熱意とともに節度が必要
(リベラルタイム 2014年5月号掲載)
日本財団理事長
尾形 武寿


Liberal.png 二月、民主化が進むミャンマーの東西二カ所、カレン州の州都バアンとラカイン州の古都ミャウーを訪問した。バアンでは薬草栽培農場視察、ミャウーでは地元州政府への小学校校舎引き渡し式への出席が目的だった。

 日本財団では富山の置き薬制度を活用した伝統医薬品の普及事業をアジア各国で進めており、ミャンマーでは原料となる薬草栽培を普及させることで、国境地帯に住む少数民族の生活安定を目指している。
 カレン州の北方、シャン州にはタイ、ラオス両国と国境を接し、世界の三大麻薬製造地帯として知られた“黄金の三角地帯”(ゴールデントライアングル)があり、アヘンの原料となるケシの栽培根絶が長い間、国際的な課題となってきた。

 日本財団も国連薬物乱用統制基金(UNFDAC)の要請を受け、一九七八年から三年間に計一億三千万円余を拠出、代替作物の導入やオーク材を平地に運ぶインフラの整備等に使われたと記憶する。

 しかしUNFDACは九一年、国連薬物統制計画(UNDCP)に統合され、資金がどこで使われ、どのような成果があったのか、いまひとつ判然としない。

 当時はJICA(国際協力機構)も、ケシに代わる商品作物としてソバ栽培の指導を行っていた。昨春出版された『ミャンマー いま、いちばん知りたい国』(中村羊一郎著、東京新聞)には、十年ほど前、日本の新聞に「『ソバ栽培で麻薬撲滅』苦境に」との記事が掲載されたと記されており、こちらも期待するような成果は得られなかったのではないか。

 背景にはビルマ政府(当時)だけでなく、かつて国共内戦で敗れた中国国民党の残存勢力、ビルマ共産党、独立を目指す少数民族等が複雑に絡み合った、この地域特有の難しい政治情勢があった。

 視察では州政府の首相が自ら先頭に立って事業に取り組む姿を見ながら、薬草栽培が一日も早く貧しい人々の生活の糧となるよう祈った。

 一方の学校建設事業。ひと足早く一段落したシャン州での二百校建設に続き、ラカイン州でも、この地域で井戸堀り等、幅広い事業に取り組む「ブリッジ エーシア ジャパン](BAJ)と組んで二年前から百校建設を進め、今回は完成した十校の引き渡しを行った。

 シャン州の木造に対し、ベンガル湾に面しサイクロンや洪水が多発するラカイン州は、シェルター機能を備えた鉄筋コンクリートづくり。式では省関係者や生徒、父兄、村人が総出で歓迎してくれた。

 軍政時代にスタートしたこの事業、政権の評価も高く、この国の明日を担う子どもの笑顔を見るにつけ、教員の育成や教材開発等、一層の支援の必要性を感じている。

 ミャンマーは国土が日本の一・八倍、人口約六千万人。七〇%を占めるビルマ人のほか百三十を超す少数民族が住む。民主化以降、「アジア最後のフロンティア」として外国資本が殺到し、最大都市ヤンゴンの変貌は取り分け激しい。

 オフィス需要の急膨張で市内の不動産価格はわずか二、三年で五〜十倍にも跳ね上がり、平均的な民家の家賃は月五十万円、東京都心より高い。いたるところで建築工事が続き、道路には車があふれ、犯罪も急増。十二年前に初めて訪れた時の、穏やかで物静かな街並みの印象は急速に失われつつある。

 われわれは世界各地でさまざまな事業に取り組む中で、途上国に急激な社会変革を引き起こす過度な投資や援助は好ましくない、と考えてきた。その国の古きよき文化や生活習慣を破壊しかねないからだ。

 援助には熱意とともに節度がなければならない。そんな思いを強くしながら、喧騒のヤンゴンを後にした。
タグ:ミャンマー





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