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2014年01月30日(Thu)
子どもたちにストラディヴァリウスを 北九州市でレクチャーコンサート
 子どもたちを音楽ホールに招待し、名器ストラディヴァリウスを世界的なヴァイオリニストの渡辺玲子さんが演奏する「子どもたちのレクチャーコンサート」が1月19日、北九州市立響ホールで開催された。渡辺さんが国際的に活躍しているピアニストの江口玲さんと名曲を演奏し、合間に曲が作られた時代背景やヴァイオリンの特徴を解説。親子連れで参加した600人の観客は、楽器の音の美しさと2人のトークの楽しさに音楽を満喫した。

ジュニアオーケストラを指導する渡辺玲子さん
ジュニアオーケストラを指導する渡辺玲子さん
 このコンサートは公益財団法人北九州市芸術文化振興財団が主催し、日本財団の支援で日本音楽財団が協力した。レクチャーコンサートは同音楽財団が青少年に一流のクラシック音楽を提供して音楽文化の定着、発展を目的に2012年から始め、今回が3回目。同音楽財団は日本財団の支援を受けてストラディヴァリウス製のヴァイオリン14挺を含め世界最高クラスの弦楽器20挺を保有しており、各国の一流の演奏家や若手有望演奏家に無償で貸与している。渡辺さんが今回使用しているのは、そのうちの1挺でストラディヴァリウス1725年製の「ウィルヘルミ」だ。

 コンサートは2部構成。幕開けは地元の北九州市ジュニアオーケストラとの合奏で、ヴィヴァルディ作曲「四季」の「春」。渡辺さんは演奏しながら音楽を作るとはどういうことかを説明する。協奏曲の特徴は「基調となる拠り所の旋律」を捉えることだと指摘。鳥や風、小川の流れなど春の喜びをヴィオリンの強弱をつけながら描写、雷鳴を伴う春の嵐では全員が同じ音を演奏し劇的な効果を出す。「拠り所となるテーマに気持ちを込め、自分が歌うように演奏する」ことを強調した。渡辺さんは前日もリハーサルするほどの力の入れ方で、指導を受けた生徒らは「何を表現するのか、考えながら演奏したい」。音楽の奥の深さを少し感じ取ったようだ。

「春」を合奏する渡辺さんとジュニアオーケストラ
「春」を合奏する渡辺さんとジュニアオーケストラ

 2部は4つの題目で行われた。音楽史上でも最も有名なシューマン夫妻とブラームスとの友情関係を取り上げたのが「歴史的な3角関係」。ソナタは3〜4つの楽章で構成されるが、「F・A・E」はシューマンとブラームス、ディートリヒの3人が別々に作曲した珍しいソナタとなっている。渡辺さんはその中で、ベートーベンが「運命」に取り入れた「スケルツォ」という速い3拍子のリズムをブラームスも使っていることを、江口さんのピアノとともに演奏して、リズムの共通性を示した。

 観客を圧倒したのは、ヴァイオリンを弾く悪魔と言われたパガニーニと、ピアノの巨人リストの紹介だった。パガニーニはヴァイオリンの技巧を極限まで高めた作曲家で、複数の音を同時に引く重音演奏や左手(通常は弓を持つ右手)で弦をはじくほか、弓を跳ねるような演奏など超絶技巧を開発した。渡辺さんは演奏方法を解説しながら「ウィルヘルミ」を駆使して見事に弾き、「超絶的なテクニック」という賞賛に違わない演奏を披露して盛大な拍手を浴びた。パガニーニの演奏にショックを受けたのがリスト。江口さんはピアノに超絶技巧を取り入れ、ピアノ曲を難しく編曲したリストの「献呈」(シューマン作曲)を力強く演奏し、観客を巻き込んだ。

渡辺さんが名曲をエピソードを交え解説する
渡辺さんが名曲をエピソードを交え解説する

 クラシックにジャズのリズム(「ブルーノート」という半音下げた音)を取り入れた「ラヴェルとガーシュイン」では2人のエピソードを紹介。最後に演奏したのは最も有名なヴァイオリンの名曲「ツィゴイネルワイゼン」だった。渡辺さんはスペインの民謡や舞曲の要素を盛り込み、ヨーロッパを放浪したロマ(ジプシー)の激しい踊りを生かしていると解説。ミュート(弱音器)を「ウィルヘルミ」に付け、劇的で鋭い音色、くぐもったような低奏音など多彩な旋律が会場いっぱいに響き渡り終えると、観客から感動がわき起こった。

超絶的なテクニックで演奏する渡辺さんと江口さん
超絶的なテクニックで演奏する渡辺さんと江口さん

 コンサート前に観客から寄せられたのは「あのストラディヴァリウスを聞きたい」という声が多かった。演奏後は「楽器だけでなく、全身を使い喜びや悲しみを表現する渡辺さんに感激した」(地元の40代の女性)と、生で音楽に触れる魅力が沁みとおったようだ。音楽財団の塩見和子理事長は「子供だからこそ最高のレベルの音楽を提供することが大事。そのことにより音楽の良さを肌で感じてくれる」と、レクチャーコンサートの意義を強調した。(花田攻)

ロビーで余韻に浸る観客
ロビーで余韻に浸る観客

カテゴリ:アート・スポーツ・文化




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