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2019年04月04日(Thu)
「日中関係改善」に「民間交流」の拡大を
(リベラルタイム 2019年5月号掲載)
日本財団理事長 尾形武寿

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日中関係改善の兆しが見えてきた。民主党・野田佳彦政権による尖閣諸島国有化(二〇一二年九月)に対し中国で吹き荒れた激しい反日デモを思い出すと隔世の感がある。我国との協力関係を構築する必要が中国側に生じてきたということであろう。

国境を接する二国間には常にデリケートな問題が存在する。為政者が仮想敵国を作って国民の不満を外に反らそうとするのも世の常である。その意味で日本は中国の標的となりやすい立場にある。形は違うが韓国にも、日本叩きをしていれば国民の支持を得られるといった安易な思い込みがあるような気がする。

従って、隣国の反日行動に一喜一憂する必要はない。しかし、独りよがりのチキンゲームが過ぎれば、不測の事態も起きかねない。そうした危険を防ぐためにも人々の交流を密にし、相互理解、信頼関係を深める必要がある。

日本財団の姉妹財団である日本科学協会では二十年前から日本語を学ぶ中国の大学生に日本語書籍を贈る事業を進めている。これまでに北京大学や吉林大学など七十五大学に計三百七十七万冊を寄贈した。我国の人口減少で地方の小学校や公立図書館の廃館が増え、価値ある書籍が大量に廃棄処分される事態が各地で起きたのが事業の発端。中国では五百を超える大学に日本語学科が設置され六十二万五千人の学生が日本語を学んでいる。各大学に日本語図書を寄贈し、彼らの学習の一助とするのが狙いだ。

当初は大学や企業、大量の書籍の処分に困る個人に協力を求め、資料価値の高い古書を集め寄贈した。近年は新刊本に対する中国側の要望が高まり、科学協会では大手の出版社に新刊本の無償提供をお願いするなど事業推進に奔走している。寄贈を希望する中国の大学は多く、寄贈先を百大学まで広げるのが目標だ。

二〇〇四年から黒龍江省など東北三省の図書寄贈大学を中心にクイズ形式の大学対抗日本知識大会を開始、一八年は全土から百八大学が参加し、中国教育界でも注目される催しに成長した。知識大会や関連の作文コンクールなどで優秀な成績を収めた学生を日本に八日間招待し、ありのままの日本を見てもらう事業も進めている。

滞在期間中に日本の学生との討論会も行われ、五回目となる今年は二月、東京・赤坂の日本財団ビルに中国の訪日メンバー三十五人と日本の学生五十五人が出席、日中両国で進む少子化をテーマに中国語、日本語を織り交ぜ、それぞれの国情を踏まえ活発な議論を行った。少子化に歯止めを掛けるには職場環境の改善や働き方改革が必要といった意見が多く、中には「両国の女性とも働きたいが子育てもしたいというジレンマを抱えている」といった指摘もあった。

討論会を傍聴して、多彩な意見や提案もさることながら、両国の学生が膝を交えて議論し、自分たちの世代が問題解決に何を為すべきか、国を越えて議論する点に何よりも意義があると感じた。こうした場が増えれば、互いに相手国を知り、反日教育で導かれた中国の若者の誤った日本観や日本の若者の“嫌中感情”が是正され、やがては両国の関係改善につながる可能性も膨らむのではないか。

三月、中国の中国人民代表大会(全人代)に合わせて記者会見した王毅外相は日中関係について「共に努力すれば安定した発展期に入ることができる」と今後に期待を示した。国と国の関係は時々の政治状況、国際情勢の変化に左右される。等身大の相手国の姿を知る国民が増えれば、その分、極端な政策変更を抑制する効果も期待できる。そのためにも民間交流の拡大が欠かせない。ささやかでも、その促進に一層の努力を重ねたいと思う。

カテゴリ:世界







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