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2019年04月03日(Wed)
国書による初元号に大きな意義
(産経新聞【新春正論】2019年4月2日掲載)
日本財団会長 笹川 陽平


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国書による初元号に大きな意義


5月に改元される新元号が「令和」に決まった。出典は万葉集。645年の「大化」から現在の「平成」まで計247の元号すべてが中国の古典(漢籍)を典拠としてきた元号の歴史に、初めて日本の古書(国書)由来の元号が登場することになった意義は大きく、心から歓迎したい。

投稿の反響に関心の高さ実感

奈良時代に編纂されたわが国最古の歌集である万葉集には、天皇や皇族、貴族のほか、防人や農民まで幅広い階層の人々が詠んだ歌が納められている。
安倍晋三首相は談話で、万葉集を「わが国の豊かな国民文化と長い伝統を象徴する国書」とした上で、「明日への希望とともに、それぞれが大きな花を咲かせることができる。そうした日本でありたい」と新元号にかける思いを述べた。「令和」の新時代が、夢多き時代となるよう祈りたい。
憲政史上初の退位に伴う今回の元号選定は、新しい元号名とともに、典拠を何に求めるか注目された。こうした中で筆者は1月3日付の本欄に「中国古典にとらわれず新元号を」を投稿した。時代とともに価値観も元号の使われ方も変わってきており、新時代にふさわしい元号論議を求めるのが目的だった。
投稿掲載後、漢籍を典拠としてきた伝統を厳格に守るべきだとする意見から、古事記や日本書紀など国書を典拠とする新しい「和風元号」を求める声まで、多くの意見をいただいた。多数のメディアの取材も受け、正直、反響の大きさに驚くとともに、新元号に対する関心の高さを実感した。
昭和54年(1979年)成立した元号法は「元号は政令で定める」とするとともに、「元号選定手続について」で候補名を検討・整理する際の留意事項として、「国民の理想としてふさわしい良い意味を持つ」、「漢字2文字」など6項目を明示。候補名には「その意味、典拠等の説明を付す」としている。

国民の親近感がいっそう増す

わが国には1500年近い漢字の歴史があり、世界に誇る古書も多数ある。世界で唯一、日本に残る文化を守って行くためにも、過去、247の元号に用いられた72の漢字や、過去に採用を見送られてきた元号案の中の元号にふさわしい漢字などを活用すれば、この国の将来にふさわしい元号を制定することは十分、可能との思いもあった。
現実には政府が3月14日、国文学、漢文学、日本史学、東洋史学に見識を持つ学識者に、それぞれ2〜5案の作成を委嘱。最終的に候補を絞り、学識者による「元号に関する懇談会」、衆参両院の正副議長からの意見聴取、全閣僚会議の協議を経て、閣議で改元の政令が決定された。
全体に平成改元時の手続きを踏襲するとしながらも、9人の懇談会メンバーに、ノーベル賞受賞者の山中伸弥京大教授を登用するなど、新しい息吹も感じられた。長い間、特に万葉集に典拠を求めたことで元号に対する国民の親近感も増すと思われる。

新たな漢字文化の気配も

今回は天皇陛下の生前退位決定から時間があったこともあって、国民の間にも、かつてない広範な議論が生まれた。インターネット社会を反映してスマホや新聞、雑誌などに関連記事があふれ、ゲーム感覚で新元号を楽しむ動きも目立った。
これまでの元号論議は「元号不要論」も含め、硬さが目立った。手前みそながら、筆者の提案を機会に元号論議の幅が広がったと自負するとともに、この点に何よりの意味があったと自負している。
日本社会の数字表記は戦後、グラムやメートルなどが定着し大きく様変わりした。そうした中、年号に関しては西暦とともに元号が広く使われてきた。時代の空気やイメージを伝えるには、やはり西暦より元号が勝ると思う。
各種世論調査結果を見ると世代により差はあるものの、多くの人が元号を使っている現実がある。西暦から元号、あるいはその逆に換算する煩わしさはあるが、元号は日本の文化として社会に確実に根付いている。新聞各紙の題字周りや欄外に西暦と元号が併記されているのも、その表れだ。
今回ほど多くの人が新元号をめぐる議論に参加したことは過去になかった。元号に対する親しみが増し、日本文化の奥深さが再確認されたばかりか、活発な元号予想を通じて、新たな漢字文化が生まれてくる気配さえ感じる。
あくまで個人が判断する事項だが、筆者としては元号と西暦が共存し併用される姿こそ望ましいと考える。懇談会メンバーの山中教授は「令和」の新元号について「新しいものにチャレンジしていく、日本のこれからの姿にぴったり」との感想を漏らした。
率直に言って、元号論議がこれほど盛り上がるとは思っていなかった。テレビ中継で「令和」の発表に歓声を上げる人々を見ながら、元号が日本の貴重な文化であるとの思いを改めて強くしている。







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