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2019年02月06日(Wed)
古都の名刹で味わう 日本文化の真髄
(リベラルタイム2019年3月号掲載)
日本財団理事長 尾形 武寿


Liberal.png日本財団では2016年から古都・京都で、外国人観光客向けに原則非公開とされている寺院等の歴史的建造物に滞在しながら日本文化を体験するプロジェクトに取り組んでいる。文化外交と併せ、参加する寺院の宿泊施設の新設・改修費を日本財団が負担、利用料の一部を寄付してもらい文化財の修復・修繕に活用する文化財の保護も狙いとしている。

日本を訪れる外国人は昨年初めて3,000万人を超えた。プロジェクトには、内外の幅広い人々に国宝級の彫刻や襖絵、天井画に囲まれた空間で日本文化の真髄に触れ、その価値を再発見してもらう思いを込め「いろはにほん」と名付けた。

16年9月にスタートした第一弾は「禅」がテーマ。「黄檗宗・海宝寺」、「臨済宗大本山南禅寺塔頭・光雲寺」、「臨済宗大本山相国寺山外塔頭・真如寺」、「臨済宗大本山大徳寺塔頭・大慈院」、「臨済宗大本山天竜寺塔頭・永明院」の5山5寺が参加し、座禅や読経、茶礼の他、住職との直接対話、文化財に関する解説、閉門後の境内の自由散策も体験もできる。利用料は一組(5人以内)1泊10万円。内外からの利用客は既に145組468人に上っている。

第2弾は昨年4月に始まった「真言宗御室派総本山・仁和寺」のプロジェクト。明治期まで皇族や皇子が住職(門跡)を務め、徒然草に登場する「仁和寺にある法師」でも知られる名刹、世界遺産にも登録されている。希望すれば通常は拝観できない文化財の鑑賞や寺に伝わる活花や雅楽など宮廷文化にも触れることができる。

境内にあった二階建て数寄屋造りの「松林庵」を宿泊用に改築、門や庭も整備した。利用料は5人以内1組で1泊100万円。高いと思われるかもしれないが、一流ホテルのスウィートルームが1泊150万円を超える時代。得難い文化体験が海外富裕層に好評で、事業開始以来既に4組が宿泊、2組が日帰り体験をしたほか予約も10組入っている。

文化財は国宝や重要文化財などに指定されると公的補助が出るが、対象外の建造物を保護するには自助努力が必要となる。1100年を超す歴史を誇る仁和寺には国宝の金堂や重要文化財のほか多くの建造物が立ち並ぶが、財政の柱となる檀家はなく、近年、拝観者数も低迷傾向にある。全体を百年、200年後に健全に引き継ぐにも新たな財源確保が急務という。 

国宝や重要文化財に指定されていないものの少し手を入れれば国宝にも匹敵する重要な建造物は全国にあり、プロジェクトを少しでも保存や修繕に貢献できるモデルに発展させたいと思う。そのためには参加寺院の拡大が何よりも必要となる。

しかし、どの寺院も高い格式と権威を持ち、本山や末寺などとの意見調整、文化財保護法との関連など難問も多く、身軽に動くのは難しい。

しきたりや格式を保持する頑なな努力によって伝統や文化が時代を超え継承されてきたのも間違いない。

その上で伝統文化を新たに発展させ、活性化させるには時代に即して門戸を開放する柔軟な姿勢も欠かせない。プロジェクト参加を決めた関係者の勇断には敬意を表する。プロジェクトでは、宿泊体験をした外国人観光客の目線を通じて、日本文化の新しい側面が発見され、日本人がそれに啓発されるような効果も期待できると思う。

プロジェクトで寄付された利用料の一部は今後、京都文化協会などと協議の上、活用方法を決める。手前みそになるが、この難しいプロジェクトをここまでまとめた財団職員の努力は並大抵でなかったと思う。担当者の一層の努力でプロジェクトの新たな発展を期したい。







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