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2018年05月07日(Mon)
「障害者」との共生が社会の多様性を育てる
(リベラルタイム2018年6月号掲載)
日本財団理事長 尾形 武寿


Liberal.png日本財団とユネスコ(国連教育科学文化機関の主催で3月23日から3日間、シンガポールで開催されたアジア太平洋障害者芸術祭「True Colors Festival」に出席した。

日本財団では2006年以降、ラオス、ベトナム、カンボジア、ミャンマーで障害者芸術祭を開催。今回、初めてユネスコと協力し、対象をアジア太平洋地域に広げた。約20カ国から聴覚や視覚、身体等に障害があるアーティストが参加、多様な個性と圧巻の演技で大きな盛り上がりを見せた。

シンガポールは今やASEAN(東南アジア諸国連合)の情報発信の中心。障害者のアート活動も盛んで、会場となった屋内競技場周辺には障害者による絵画の展示や視角・聴覚障害の体験コーナー等、多彩なブースが設けられ、3日間で1万人を超す観客が入場した。

 東京オリンピック・パラリンピックが開催される20年には、日本で「国際障害者舞台芸術祭(仮称)」を計画しており、今回はそのプレイベントの性格を持つ。予想を超える熱気は障害者芸術祭に対する近年の関心の高まりを実感させた。例えばオープニングを飾った「BOTAN×DAZZLE」。日本有数のダンスカンパニー・DAZZLEのメンバー7人と障害者から選抜されたBOTANメンバー七人の混成チームが、日本古来の「キツネの嫁入り」をモチーフに傘を持ち激しい踊りを披露。注意して見ても素人目には健常者と障害者の見分けがつかなかった。

もともと、社会は才能も性格も異なる多様な人達の集団であり、障害もそうした違いの一つに過ぎない。健常者と障害者の線引きは福祉制度を進める上で必要かもしれないが、一方で偏見と差別を生む結果にもなっている。圧巻のパフォーマンスを見ながら、そんな思いを強くした。

インド洋の島国・モーリシャスから参加した全盲の歌手ジェーン・コンスタンスさんもすごかった。現在17歳。幼少から歌やピアノに親しみ、中学生時代、フランスの新人歌手発掘番組で優勝。天使の美声とも評され、既にデビューアルバムもリリースされ、偏見を止めるよう訴える自作曲「Change ton Regard(見る目を変えて)」も持つ。

初日は赤と黒を基調としたマイケル・ジャクソン張りの衣装で野外舞台に立った。翌日は一転して純白のワンピース姿でパネルデスカッションに臨み、「目が見えないのは不便だけど、乗り越えられないほどの障害ではない」と語った。水泳やサイクリングも楽しむそうで、目の前を通り過ぎる姿を見ながら、「この少女は目ではなく研ぎ澄まされた知覚で社会や自分を見ているのか」と想像した。

日本財団では、障害者対策を事業の柱の一つに据え、前向きの評価を得ていると自負している。
しかし、芸術祭の熱気に打たれるうち「それは健常者の感覚に過ぎないのではないか」、「本当の意味で障害者の内面まで見据えた取り組みが果たしてできているのか」といった疑問に駆られた。

WHO(世界保健機関)は世界の障害者数を世界人口の15%、10億人以上と推計している。人口の高齢化に伴い障害のある人はさらに増え、多様性を受け入れる社会の実現が急務となる。芸術祭のタイトルとなったシンディ・ローバーの「True Colors」は、人それぞれが持つ本当の自分といった意味だろうか。

近年、誰もが参加できる「インクルーシブな社会」の実現が叫ばれている。そんな社会を念頭に20年の障害者芸術祭に取り組んで行きたいと思う。







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