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2018年02月02日(Fri)
子どもの格差是正のためにも「里親養育」の強化を
(リベラルタイム2018年2月号掲載)
日本財団理事長 尾形 武寿


Liberal.png 正月休みを兼ねて訪れた伊豆の温泉の朝風呂で、たまたま小学校5、6年の少年と一緒になった。聞けば数日後に誕生日を迎える祖母のお供で来たのだという。屈託のない少年の笑顔を見ながら幸せな家庭生活を想像した。

一方で、約45,000人もの子どもが養育拒否や虐待など様々な理由で実の親や家族と暮らせず、約6,500人は里親家庭やファミリーホームで生活するが、残る80%以上が乳児院や児童養護施設などで暮らす。

 子どもの健全な発育には安全で安定した家庭環境が欠かせない。特に乳幼児期は自分を守ってくれる特定の大人がいることで安心感が育ち、他人に対する信頼感も生まれる。社会常識を身に付ける上でも施設と家庭では大きな差がある。

日本財団が行った調査では、子どもの貧困を放置すると教育格差が拡大し、働きたくても働けない人や非正規雇用が増加。これに伴う経済的損失は一学年当たり2.9兆円に上り、生活保護など政府の財政負担も1.1兆円増加すると推計されている。

 現に東京都が行った調査では、児童養護施設で育った子どもの10%が18歳で退所した後、10年以内に生活保護を受け、20歳代の生活保護率の全国平均0.4%の25倍にも達していた。 

こうした傾向は各国も同様で、国連も2008年に採択した児童の代替的養護に関する指針で「3歳未満の乳幼児は原則として家庭で養育すべき」との考えを打ち出した。

我国も16年に成立した改正児童福祉法で家庭養育を原則とする一方、昨年には、3歳未満は5年以内、3歳以上の未就学児は7年以内に里親委託率を75%とする、などを内容としたロードマップを打ち出している。

我々は40年近く里親支援を続け、13年には「ハッピーゆりかごプロジェクト」を立ち上げ、民間団体とも連携して生みの親と暮らせない子どもたちの健全育成に取り組んできた。ロードマップにもその成果が反映されたと自負している。

 里親のリクルートなど課題は多いが、静岡市のように過去十年間で里親委託率を18.5%から45.5%に押し上げた自治体もあり、十分、達成可能な数字と考える。

国の借金が1,000兆円を超える中、資金不足を懸念する向きもあるが、東京都で見ると、里親養育に要する費用は年間百82万円。これに対し乳児院は681万円、児童養護施設は476万円と施設養育が圧倒的に高く、大阪でも同じ傾向が出ている。

実の親子として暮らす特別養子縁組が理想であるのは言うまでもないが、施設より里親の方が、子どもを健全に育てる上でも社会的費用面でも優れているのは間違いない。

 関連予算は国と地方自治体で年間2,400億円近くに上り、60%以上を児童養護施設と乳児院が占める。里親やファミリーホームに費やされる資金は五%程度にとどまっており、仮に里親養育が75%に達すれば人的にも予算面でも余力が生まれ、児童福祉を一層充実させることが可能となる。

 次代を担う子どもの健全育成は、どの時代も社会の大きなテーマである。我国は明治維新後、国民の高い教育によって短期間に世界の一等国の仲間入りをした。憲法も国民の三大義務のひとつに教育を掲げている。

少子高齢化時代を迎え、子どもの教育はこれまで以上に社会全体で取り組むべきテーマとなっている。国や親は当然として、あらためて地域社会の協力、参加も必要となる。国民一人ひとりが、いま一度、真剣に考える時期に来ている。
タグ:里親
カテゴリ:こども・教育







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