2017年10月31日(Tue)
「障害者の方も一緒に舞台を楽しみましょう!」
聴覚障害のある廣川麻子理事長は、社会福祉法人トット基金附属の「日本ろう者劇団」で演じる傍ら、制作なども担当している。2009年9月から1年間、英国ロンドンで演劇の研修を受け、帰国後の13年にTA-netを設立した。「英国で実施している障害者への観劇サポートを日本でもやる必要があると思った」と設立の理由を語る。「障害のある人が一緒に舞台を楽しめるようにするには、サポートできるコーディネーターを増やしていかないといけない」と抱負を述べた。
この日の養成講座には、当日飛び込みの4人を含め、29人が参加した。まず、公益社団法人・全国公立文化施設協会の間瀬勝一アドバイザーが「アクセスについての理念」と題して講演。日本財団パラリンピック・サポートセンターが昨年実施した「障害者の舞台芸術表現・鑑賞に関する実態調査」の結果を基に、「劇場・文化施設の約9割は障害者が鑑賞に来ていると回答しているが、障害別に聞くと事実上、車いすの人しか認識していないことが分かった」と述べ、劇場側の認識にズレがあることを指摘した。また、劇場側に表現活動を継続するための専門的人材が不足していると強調した。 この後、廣川理事長が「聴覚障害のあるお客様へのサポート」とのタイトルで、まずどんな壁があるかを列挙し、続いてその解決法を説明した。(1)劇場にチケットを予約する方法(2)劇場の受付での対応(3)劇場の中での対応(4)上演中の対応(5)終演後の対応、などに分けて行ったが、「受付に筆談ボードを置くなどの配慮がない」「手話通訳がいないため、係員が何のアナウンスをしているか不明」「上演中の字幕がわかりにくい」などの問題点が指摘された。 続いて、演劇結社「ばっかりばっかり」の女優、美月めぐみさんが「視覚障害のあるお客様へのサポート」について自らの体験を踏まえ、様々な壁と解決法を講演した。「単独で劇場まで行く場合、ガイドヘルパーが必要だが、チケットを2枚買うのは負担だ。また、トイレを探したり、自分の座席を探したりするのが大変。自分の座席と思って座ったら、見知らぬ女性のひざの上に座ってしまい、平手打ちを食った男性がいる」と語り、劇場側にガイドヘルパーの料金割引や、館内の誘導スタッフ配置を要望した。その後、美月さんの夫で「ばっかりばっかり」主宰の鈴木大輔さんが、ツエを突いた美月さんの誘導の仕方を伝授する一幕もあった。 一連の講演後、参加者は5つのグループに分かれ、舞台の企画や予算の立て方などについてグループワークを行い、それを発表しあって討論した。廣川理事長は今後もこうした講座を開き、アクセス・コーディネーターを増やしていく方針だ。 ● 東京芸術劇場 ウェブサイト TA-netアクセス・コーディネーター養成講座 ● TA-net ウェブサイト |