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2017年10月02日(Mon)
障害者と共に楽しむ 日本財団DIVERSITY IN THE ARTS企画展(1)
「ミュージアム・オブ・トゥギャザー」
キュレーターたちの熱い想い


障害者のアート活動を中心に、多様性の意義と価値を広く伝えたい。そんな思いから日本財団DIVERSITY IN THE ARTS企画展の第1弾として10月13日〜31日の19日間、東京・南青山のスパイラルガーデンで「ミュージアム・オブ・トゥギャザー」を開催する。障害者と健常者が一緒に楽しみながらアートを鑑賞しようという本格的な展覧会で、半年以上前からキュレーター、建築家、デザイナー、美術館職員、それに障害者、福祉関係者ら約40人が議論を重ねながら準備を重ねてきた。展覧会を前に、このチームのメンバーに苦労話や展覧会への思いを聞いた。

ミュージアム・オブ・トゥギャザーに出展される作品

ミュージアム・オブ・トゥギャザーに出展される作品


この展覧会には、22人の作家による作品約500点と、資料や模型などのアーカイブが展示される。これらの作家と作品を選ぶのはキュレーターの最大の仕事である。日本語訳は学芸員だが、事実上展覧会の組織者といえる。

今回、キュレーターを務めているのは、ロジャー・マクドナルドさんと塩見有子さん。ともにNPO法人アーツ・イニシアティブ・トウキョウ(AIT)のディレクターである。ロジャーさんは英国人の父と日本人の母との間に東京で生まれた。国籍は日本人で日本語も流暢に話すが、教育は幼少時から英国で受けた。大学では国際政治学を学んだものの、博士号は美術理論で取った。塩見さんも大学では法学を学び、卒業後、英国へ留学して現代美術を学んだ。2人は2001年、AITを立ち上げ、国内の展覧会でキュレーターを務める傍ら、大学で非常勤講師として教えている。

事務所近くの喫茶店で談笑するロジャーさん(左)と塩見さん

事務所近くの喫茶店で談笑するロジャーさん(左)と塩見さん


塩見さんは「日本財団とは2012年ごろから一緒に仕事をしていて、その頃から今回の展覧会の構想を聞いていた。実際に計画が動き出したのは2016年夏ごろ。それから1年間、全国の主な障害者アートの施設を回り、作品をリサーチした」と語る。

ロジャーさんは「我々は福祉の専門家ではなく、美術畑の人間。アール・ブリュットやアウトサイダー・アートには関心があったが、日本の状況は知らなかった。そこで施設を回って作品を製作している人たちの生活や環境を観察してきた」と話す。

ロジャーさんと塩見さんはこの1年間に施設を4,5カ所、個人宅を5カ所ほど回ったが、一番困ったのは作家本人に作品について聞いても、ほとんど答えてくれなかったことだという。ロジャーさんは「実際に作っている人たちが自分の言葉で作品について語らないので、スタッフの人たちなどに作家の気持ちを代弁してもらうことになる。そこで作家の作業を観察しながら気持ちを読み取ったり、想像したりしてきた。現代アートでは経験できない能力を求められた」と言う。

出展する作家22人中、障害者が健常者の約2倍になったことについてロジャーさんは「偶然です。作品を見ながら2人で選んでいったら、お互いに居心地の良い結果になったという感じです。今回は現代アートとか、障害者アートとか、特別意識しないで選んだ。むしろ、境界がはっきりしないものを選んだので、これまでと違った雰囲気になったと思う」と言い切る。

また、ロンドン在住者が4人いることについては「私が長いことロンドンに住んでいたこともあり、ロンドン在住で日本に何らかの関係がある人を選んだ。4人のうち、1人は私の弟で、私が美術界に進むきっかけになったから」と説明する。

展覧会チームの全体会議で解説するロジャーさん

展覧会チームの全体会議で解説するロジャーさん


続けてロジャーさんは、今回の展覧会の特徴について次のように語る。

「作品全体を見ていくと、何らかのテーマがある。パターンが好きで何度も繰り返して作る人、あるいは原始的なムードの人などだ。今までの日本のアール・ブリュット展とは違う、フレッシュな感覚の作品を見せられればいいなと思う。また、会場の展示の仕方を工夫しているので、作品の1点1点が隔離されているのではなく、作品同士が会話しているような関係性を感じてもらうのも大事なポイントだと思う」

最後に、2人に展覧会を見に来る人たちへの期待を聞いた。

ロジャーさんは「まず作品を真剣に見て感じて欲しい。作品からも会場の構成からも強い体験ができると思う。肉体的、精神的な旅に出て行くような、普段と違う欲望、感情を体験して欲しい」と語った。

塩見さんは「おもしろいと思う作品を見つけたら、自分の中に色々問いかけていけば作品との対話ができると思う。自分が作品から、どう感じるかだ。作品を見ていると、何かが湧き上がってくるかもしれない」と話した。

ことば解説【アール・ブリュット】フランスの美術家、ジャン・デュビュッフェが1945年に創り出した言葉で、「生(き)の芸術」というフランス語。正規の芸術教育を受けていない人による、技巧や流行にとらわれない自由で無垢な表現を指すとされる。日本では、2010年にパリで行われた「アール・ブリュット・ジャポネ展」の成功をきっかけにアール・ブリュットが定着した。だが、アール・ブリュット=障害者アートと誤解される傾向が強まったため、日本財団は「本来の意味に立ち返って考えるべき」と、リセットを提案している。

(この企画は計6回のシリーズで、週末を除いて連日掲載します)

第2回はこちら
● 障害者と共に楽しむ 日本財団DIVERSITY IN THE ARTS企画展(2)



● 日本財団DIVERSITY IN THE ARTS ウェブサイト
● ミュージアム・オブ・トゥギャザー ウェブサイト







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